第10話 学校といえばテロである?
朝、それは、1日の始まりであり、誰にでも訪れるもの。
幻葬士、
とは言え、今日は普段の起床と比べ遅かった。今日が修行を休む日と決めているのもある。ただ実際はただ本人が学校に行きたくないから限界まで遅く行こうとしているだけであった。
(実技テストとかはなあ。最悪、ほんと最悪。絡まれるし)真の内心は面倒!の一言で表せる。テストをどうやり繰りして自分が現役の幻葬士とバレないように誤魔化すかに意識が向いていた。
そして、クラスメイトから何故か疎まれているのにこれ以上、学校で困るのは考えものだった。
しかし、時間は待ってはくれない。
時計が出発の時間を刻んでいるを見て、ため息混じりに真はノロノロと出発する。
目指すは、龍刻学園行きの電車だ。
ーー
「よし、予定通り」
学校にたどり着いて時間を確認する。まだ、8時半過ぎ。今日の授業が始まるまでにはまだ少し時間があった。クラスに入ると、何人がこちらに顔を向け、興味なさげに自分のやりたいことを再開する。
(それにしても、早速厄介なことになりそうだな)朝から自分の席の近くでイライラしている様子の奴を見つけて、思わず心の中で顔をしかめてしまう。
「おいおい、鏡じゃねぇか」怒ったの顔で寄ってくるのは、何故か俺に突っかかってくる……えーと確か、葛野だったか。
正直言って、修行に夢中でクラスメイトの名前だって覚えてはいない。
「なぁ、鏡?お前今日は一体どういうつもりだあ?」何故かキレた様子で突っかかってくる葛野(仮)でも俺、何もしていない筈なんだがなぁ。
「何の話だよ?」
「忘れたのかぁ?昨日お前が」
と、ここで担任の先生がクラスに入ってきた。ナイスタイミングと心で拍手喝采する。
まぁ、名前は知らん。
「ホームルーム始めるからな、自分の席に座れ」
「ちっ、昼は覚悟しとけや」先生が来たことで話を中断させられたことに悪態を吐きながら葛野(仮)は離れていった。
そして、事件が起きたのは3時間目が終わって昼休憩に入る直前だった。
「今日はここまで」
「起立、気をつけ、礼」
『ありがとうございました』
なんてことはない普通の終わり方だった授業。
バンッと机に拳を叩きつけられて、そちらに顔を向ける。葛野(仮)だ。
「おい、鏡お前どうやったら」
何か(仮)が質問しようとした次の瞬間
ビシ
(今のは⁉︎)
このヒビ割れる音を、聴き覚えがあった。
「なんだなんだ?」「何の音?」
「おいっ!無視するなっ!」
ビシビシ (不味い、なんでここで)
2度目の音を立てた次の瞬間、突如、教室に閃光が迸る。
(幻影領域が出現してんだよ⁉︎)想定外も想定外の事態に悪態を吐きながら目を片方だけ閉じて、目を閃光から守る。片方の理由は、閃光で目を潰される直前まで周囲を確認、警戒するためだ。
「うわー、何だ目がぁ‼︎」「キャー、いきなり何よ⁉︎」
突然の閃光にクラスメイトはパニックに陥っている。先生はさっき外に出て行っているからここにいるのは生徒だけ。
そして、幻影領域が現れたことで暗い影が、下級幻影が生まれた。
(俺がいるだけこのクラスはマシか?)いずれにせよ、どこまでか分からないが学校は災厄に見舞われた。
現れた幻影に気付いたクラスメイトはまだいない、がそれは当然だ。何せ目が潰されているのだから。そして、それを見逃す程、幻影は甘くない。パニックに陥っていて、なおかつ気付いてない攻撃に女子生徒が一人、打ちのめされようとする。
(目の前で怪我はさせない!)
「"主の縛り"《インビジブルチェイン》」
ゆらりとした攻撃が触れる瞬間、不可視の鎖が女子生徒の周囲に浮かび上がり、代わりに攻撃を受け止めた。
ギャリィという引っ掻き音に、ようやく何かが起きているとクラスメイトが気づいた。
「えっ⁉︎何々⁉︎何が起きてるの⁉︎」「なんだよ⁉︎どうなってんだ⁉︎」突然の事態に大小様々な悲鳴が響く。
「待って、誰かいる⁉︎」「嘘⁉︎幻影⁉︎なんでこんなとこに⁉︎」視界を取り戻した生徒が先程までいなかったフード付きのポンチョを着た存在と幻影に気が付く。
(あっぶな、着替えるのが遅かったらバレてたな)
その正体は戦闘服に着替えた真。急な事態で自身の正体を隠すのが必要になった時のために普段から持ち歩いていたのが幸いした。
「誰だよお前は⁉︎」
(えー、名乗った方が良いのか?)
「A級幻葬士、コードネーム《ミラージュ・チェイン》」仕方なく名乗りを上げる。正直、恥ずかしいが仕方がない。民間人の安全が最優先だった。
「嘘だろ、A級幻葬士⁉︎」「なんでこんなとこいるの⁉︎」当然、驚きの声があちこちから上がる。とりあえず片手間に攻撃をいなし続ける。
(駄目だ、うるせえ)いかんせん、キャーキャーワーワーうるさい。「少し、静かにしろ」声色を低く変えて黙らせる。
「アイツは幻影だ。俺は偶然ここに立ち寄って巻き込まれただけだ、安全は確保してやるが巻き込みがないとは言えない。最低限は防御用の魔導を使え。いいな?」
「はっはい!」
(まぁ、正直、弱いしな)そう思って、相手を魔導で仕留める
「《三鎖》」3本の鎖を高速で打ち出すだけの魔導。しかし、真にとってのただの下級幻影を仕留めるには充分な威力を持つ一撃だった。アッサリと食らって、消滅する幻影。
「仕留めたな、これは……⁉︎」教室に仄かな光が集まり一つの結晶を作り上げる。
(助かるな、陽現晶か)
陽現晶は、周囲十メートルを幻影が認識出来なくなる幻影領域内にしか生じない結晶だ。ゲーム内では、キャンプとか、回復ポイントととして使っていた。
(これなら、他の教室を確認に行ける)
「あの」生徒の一人が震えた声をかけてきた。
「なんだ?」よく見ると何かが……
「クラスの人数が少ないんです‼︎」
「言われてみれば、少ないな」恐らく、領域が生成される時に弾かれたのだろう。ゲーム内でもあった描写だから、安心して伝えられる。
「安心しろ、領域外に弾かれたから居ないだけだ」
「そう、ですか」安心したのか、そのままへたりこむ。
「これから俺は、この原因を探りに行く。お前たちはここで待機していろ」忙しくなってきたが、俺がやるしかない。
「ちょっと待ってよ、あんたが居なくなったら誰が私たちを守ってくれるの⁉︎」一人の生徒がそう言うと、そうだそうだ、と同調するクラスメイト
(面倒くせえな、消耗したくはないが……背に腹はかえられないな)
「《
「悪いがもう行くぞ」やっておくべきことはやるだけやった。これ以上は、救助者がいる可能性があるのだ待ってはいられない。
そう言って俺は廊下に飛び出した。
ーーー
2022 9/23 余分な部分を削除しました。展開に変更はありません。
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