3話 スタート

 あの少年の言葉で、彼女と距離をおくことに決めた。だが、それは杞憂であったようだ


 それは、


(僕は、Fか)


 クラス表が貼られていた。Fの下に、番号がずらりと並ぶ。そこには、僕の番号があった。―そして、Aの下には、彼女の番号が刻まれていた


 こうして、僕らは分かれる



 ◯


 僕らは、担当教師を前にして教室に進む。廊下を踏むごとに、埃が舞う。


 そういえば、入学式をやらなかった。この世界では、式がないのか。

 そんな疑問は、すぐに解消される

 

「先生、歓迎祭はやらないのですか」


「やらん、あんなの時間の無駄だ」


「ひど」


 この人、冷たすぎないか?

 

 学式を楽しみに生徒だっていた筈だし、その親だって晴れ姿をみたいだろう。それを分かっていて言ってるのだとしたら、少し人の気持ちを考えたほうがいいではないだろうか?


 場が静まる。そんな僕たちを見て、先生は目を細める


 僕は、この視線を前世でみたことがある。測りをいれてる感じだ。


 これは、何を意味するのか。僕には、分からない。けど、


「やらないんじゃなくて、できないのでは」


 少女がメガネをくいっと上げる。どういうことか。


「ほう、なぜだ」


 先生が試すような視線を向ける。


「今の時期は、襲撃事件が多発している聞き及んでおります。そんな中、入学式を行えば、生徒達は無事ですまない。だから、密を避ける」


「正解だ」


 先生は、拍手をする。そして、豪快に笑う。僕は、そんな意図があったのかと感心してしまう。少女は、そしてこんなことを言う


「いい対応だと思います。生徒想いのいい学園ですね」


 場が賑やかになる。先生は、僕たちを守った。さっきの発言は、本心ではなかった。だが、


「ですが、その反面に、失望している生徒もいる筈です。やらないということは、守れないという意思表示でもあるのですから」


 場が冷える。


(この子、ヤバない)


 先生に、挑発している。ちょっとおかしい子である。だが、その発言に先生は、


「ああ、そうだとも」


 肯定する。少女は、驚いた顔を晒す


「危険なんだよ、襲撃犯どもは」


「情けないものですね。生徒を不安にするとは。教師としてどうなんでしょう」


「失格だな。代わりに、お前が教師やるか?」


「ご冗談を」


 そんなこんやで、教室についた



 ◯


 先生が自己紹介を終えると、僕たちも軽く自己アピールをした。そして、先生は口を重々しく口を開いた


「お前らに、言っとくことがある。さっき、そいつが言ったように、俺は命の保証はできねぇ」


 なんだか、急にシリアスな展開になってしまった。震えている者までいる。これって知らない方が良かったのでは?

 

 だが、と先生は間を置いた


「お前らに、何かあったら全力で守るつもりだ。それだけは、覚えておいてくれ」


 震えている生徒の体が止まる。こうゆうことは、はっきり言ってくれたほうが心に染みることがある。―僕も、その1人だ


 

 ◯ 


 授業について説明が終わる。驚いたのは、薬草収集などの授業があることだ。また、使える塵、食べられる食材などの分別方法の授業まである。


「なんか、実践的だな」


「そりゃそうよ」


 僕の疑問に、隣の席の男が答える


「ここは、勉強する所じゃねぇもん。いや、このクラスは、か」


「どいうこと」

 

「分けられてるんだよ。Aクラスは、戦士を育成する場所。此処は、生き延びる術を学ぶ所、ってな」


 そういうことか。確かに、歴史とか算術などの授業が一切ない。それに、対人戦闘などの授業も少ししかない。


「まじ、いらいらするわ。なんで、俺がこんな学園に」


「君が選んだんじゃないの?」


「ちげぇよ、滑り止めだったんだよ。はぁ、なんですこん―」


―バンッ


 刹那、机の音が鳴る。そして視線を先にいる少女は、言う


「決闘をお願いしますわ」




「はぁ、なんだよお前。俺は―」


 その言葉を言う前に、その男は足の異変に気づいた。視線を向けると、足音に土塊が絡まっていた



「へぇ、いるもんだな」

 

 少年は、なぜ彼女が怒ったのか分からない。だが、一つだけ言えることがある


 ―この女は強い


 ◯


 意味が分からない









 

 

 

 







 






 



 










 

 


 

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