毒ガス

湧き出す。いや、吹き出す。

身体中の穴という穴から吹き出す。赤紫色の霧が辺りを包む。これはなんだ。怒りか。

明確なこいつへの怒りだ。

この怒りは毒ガスだ。毒ガスは、奴を世界最悪のクソ野郎だと言って、かつてない大喧嘩へと俺を誘う。

ああ、叶うならばこの毒ガスが奴にも届けばいいのに。毒ガスでこいつを呪い殺すことが出来れば、すぐさま毒ガスは消え去るというのに。

でも奴には毒ガスの姿すら見えちゃいない。俺が怒っているのを見て鼻の穴を醜く膨らませているだけだ。

しょうもない。わかっているのだ。わかってはいるのだ。でも退けない、退いたらそこに待ち受けているのは惨めな俺だ。

子供の自分たちにとって一年は大きな差だ。その大きな壁から逃げてはいけないという義務を未来の俺から背負わされてしまった。

さあ、この壁をブチ破ろう、毒ガスで頭を狂わして。

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