灰斗がれゑじ

江戸文 灰斗

二枚舌

僕は身長が二メートルもある。僕の舌は一枚抜かれた。


僕にはとびきり可愛い彼女がいる。僕の舌は一枚抜かれた。


僕の家はとても裕福だ。僕の舌は一枚抜かれた。


僕は人に好かれる。僕の舌は一枚抜かれた。


僕はスポーツ万能である。僕の舌は一枚抜かれた。


僕は友達が数え切れないほどいる。僕の舌は一枚抜かれた。


僕の見た目は人を虜にする。僕の舌は一枚抜かれた。


僕は人と仲良くなりたくなんかない。僕の舌は一枚抜かれた。


僕の舌は二枚ある。僕の舌は抜かれなかった。


抜いても抜いても生えてくるんだ。僕の舌は抜かれなかった。


生えてこなくなって一本になれ、と僕は血だらけで叫んだ。


僕の舌は抜かれなかった。

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