死後の世界はあるんDEATH
ニラ畑
死後の世界、到着
高校二年生、由井。痴情のもつれにより死亡
カーテンを閉め切った部屋で、一息つく。息が整うのを待ってから、隣で寝ている後輩、
田原くんはにこっと笑って、裸の体を摺り寄せてきた。
「気持ちよかったですか、
こういうところ、本当にかわいいなあと思うんだけど……やっぱり私から止めないといけない思う。こういう関係を続けているのは、彼のためにならない。
させてくださいと熱意を込めてお願いされ続けたからといって、させてくれないなら死ぬと言われたからといって、ほだされるべきではなかったかも……いえ、そうしなかったら彼の命の危険があったから、一度くらいはほだされてよかったかもしれないけど、そこで終わりとするべきだった。少なくともこんなふうに、ずるずる一ヶ月も二ヶ月も三ヶ月も関係を続けるべきではなかった。
「ねえ田原くん、もう今日で終わりにしましょう」
私がそう言うと田原くんは、涙をぼろぼろ零し始めた。
「どうしてですか、僕のこと嫌いになったんですか」
「いえ、そういうわけではないのよ。だけど、セックスは良くないんじゃないかと思うの。ほら、私達高校生だし、未成年だし……こういうことは成人してからすることなんじゃないかと」
「……先輩、僕とする前すでに経験済だったじゃないですか。中学生のときに初めてしたんだって、教えてくれたじゃないですか」
「ええ、まあ、それはそうなんだけど、それは間違った経験だったと思うのよね、今考えてみれば……あなた真面目な子だし、何も私みたいにしなくていい経験を積むことはないんじゃないかと思うのよ。だから止めましょう、今日限りで……」
田原くんは喉から、くぅ、という声が漏らした。
うな垂れ方を落とし、ベッドから出て行く。部屋の隅のほうへ歩いていく。
なんだか可哀想になってきてしまったので、私は彼に、重ねて次のことを言う。
「あなたが嫌いになったわけじゃないのよ。友達に戻りたいだけなのよ。元の通り……」
田原くんが急に振り向き戻ってきた。顔が変に強張っているなと思った次の瞬間、わけの分からない熱さが胸を焼いた。
ぼろぼろ泣いている田原くんの顔が見えた。
しきりに何か言っているのだけれど、声が聞こえない。
田原くんはナイフを握っている。そのナイフは柄のところまで、私の胸に潜り込んでいる。
頭の後ろが冷えていく感じ。目の前が徐々に暗くなる。
田原くんはまだ泣いている。
地面の下へ引きずりこまれていくような感覚。
これまでにないような眠気が襲ってきた。
田原くんのことが気になって目を開けようとしたけど、無理だった。
目を開けると私は、一人で部屋にいた。
うんと長いこと眠った後なのだろう、体全体がだるい。
田原くんはというと、いなかった。
しばらくぼんやりしてから、はっとして胸もとを見る。
ナイフは刺さっていなかった。そして何の傷も、ない。
「……夢だったのかしら……」
とにかくここに長居するわけにはいかない。ここは田原くんの家であり、田原くんの部屋なのだ。
田原くんがどこへ行っているのか気にはなるが、とにかく脱いだ服を着込む。そして部屋を出る。
その際何時だろうと思って何気なくスマホを見たら、画面が真っ白。
真っ暗は分かるが真っ白というのは……どういう不具合だろう。
首を傾げつつ玄関の扉を開く。そして、立ち尽くす。
目の前に広がっているのは、砂漠だった。
夜空に、びっくりするくらい大きな土星らしきものが浮いている。
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