『当選100回』

やましん(テンパー)

『当選100回』

 これは、まったくの、フィクションです。


 現実社会とは、一切、無関係です。


 他意はありません。



         

       🚗💨


 ある、首都圏近郊の、保守的な、小さな町である。




 A太


 『おあ! あれ。みろよ。タルレジャ自動車工業の、超高級車『ガンヴァ』だろう。』



 B助


 『ああ。始めてみたずら。地球と月の間を自由に飛べる、ただひとつのA級クラス空中自動車とかずら。一台、250億ドリムとかち。都では、時々みかけるらしいなもな。こんな田舎に来るなんち、何かあったっぽか。』



 C枝


 『たしかあ、村長さんとこの、おまごさんが、都の議員さんのひ孫さんと、婚約したとか、昨日、とうちゃんが言ってた。』



 D朗


 『おまえのとうちゃん、役場だもんな。』



 C枝


 『なんでも、その議員さんは、前はレジスタンスで、今は、与党で当選100回の、重鎮らしい。史上最多の当選回数だけんど、なぜか、大臣とかは、やったことがない。』



 F美


 『重鎮てのは、なんぞなもし。』



 G 子


 『居るだけで、あたりが、おごそかになる偉い存在さね。』



 H亮


 『なんでまた、大臣とかはならないべか?』



 C枝


 『世渡りが、下手くそなんだとか。街のひとからは、好かれるばってん、議員さんのなかでは、孤独らしいったい。』



 J太郎


 『そりゃ。その議員さんは、たしか、人間の出身ばい。』




 全員


 『なんとお。そりゃ、近寄るまいぞ。近寄るまいぞ。』



        🌏



 全地球が、宇宙生命体Zに侵食され、支配される地球にあって、人類の復権活動は、まだまだ、始まったばかりなのである。


 あのとき、平均気温が、ほんの少しだけ低ければ、高温多湿が好きな、宇宙生命体Zは、地球には、手出ししなかったのだ。


 大部分の地球人は、宇宙生命体Zに肉体を奪われ、同化した。


 狭い地域に集住することで、ごく、少数生き残った人類は、100年近い、激しく厳しい闘いの後、ようやく、平等な生存権を認められ、共存体制の確立に至ったのだ。



 かの議員さんは、その、最大の功労者である。



 『あの、ふにゃふにゃ宇宙人め。何にでも化ける、気味の悪いやつらだな、見ただけで、寒気がする。まったく。まあ、しかし、反同化型長生き薬の製造法を、もらったしなあ。でも、人類復権に向けて、まだまだ、同じ進歩派政党内とはいえども、くたばるわけには行かないからな。ははははははは。』


 人類票に支えられ、宇宙生命体Zからも、広範な支持がある、当選100回の重鎮議員さんは、広大な車の中で、愉快そうに、そう言った。


 『先生、それ、差別ですよ。』


 秘書が、優しく、注意した。


 彼女は、その、ふにゃふにゃ宇宙人出身である。



 世の中は、ほんとに、難しいのだ。




    ・・・・・・・・・・・

 




 






 

 

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『当選100回』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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