第22話 社会見学

 座学が続き、僕達が疲れたのを見て、シーシャさんは「明日は王都に出掛け、社会見学にします」って言いました。


 シーシャさんが、いつも「分からない所が有れば、直ぐ聞いて下さい」って言ってたので、聞きました。

「社会見学って何をするんですか?」

「王都のお店を見て回り、何がどう流通してるかの勉強です」


 アソウギ君も質問しました。

「流通って何ですか?」

「売られてる品物が、何処でどのように作られて金額はいくらで、誰が運んで来たのか、運ぶのにいくらお金がかかったか、お店ではいくらの金額で売られて居るか勉強します」



 何か凄く面倒な勉強みたいですが、王都を見て回れるのは楽しみです。



 シーシャさんの引率で最初に行ったのは黒砂糖の工場でした。

 倉庫に積み上げられた糖黍とうきびを見ながら。

「糖黍1㎏辺り小銅貨1枚で農家から買い取って居ます」

(これって覚えた方が良いの)

 一応帳面に記入して置きました。


 次に糖黍を絞って汁を取り出してる所に案内されました。

「20㎏の糖黍から5㍑の糖液が取れます」

 糖黍1㎏が小銅貨1枚

 20㎏だと大銅貨2枚の糖黍から5㍑の糖液…記入して置こう。


 次に糖液を煮詰めている所に案内されました。

「50㍑の糖液を煮詰めて、1㎏の黒糖が取れます」

 ん?50㍑の糖液は…小銀貨2枚ここから1㎏の黒糖が取れた、って事は黒糖1㎏は小銀貨2枚の原価と言う事になる。

 記入したぞ。

「2000銭貨?これに工賃と儲けを上乗せすると!黒糖が高価で庶民が食べられ無いの分かった」

 僕の呟きをシーシャさん聞いていたようで。

「ナユタ君非常に良く出来ました!社会見学の趣旨を良く理解出来て居て、引率の甲斐があります!」


「ナユタさん凄い!私何の事かチンプンカンプン分から無いよ!」

「アソウギ君後から座学で説明しようと思った事をナユタ君は既に理解していただけ!分からなくて当然です」

 僕のお母さんがやってた事だから、小麦粉がいくらでパンをいくらで売るかって。


「次は安価な甘み、水飴工場に行きます」

シーシャさんが馬車で連れて行ってくれたのは、広い芋畑の真ん中に建つ細長い工場でした。


高価な黒糖と違い、工場を見学して水飴が安価な理由が分かりました。

水飴工場を取り巻く広大な芋畑で収穫した芋から、芋デンプンを作りドロドロに煮て温度が下がったら麦芽って物を入れてかき混ぜる。

一晩経った物はビチャビチャサラサラに変化してました。

これをじっくり煮詰めて水飴にするそうです。

ここまで殆ど原価は無料と考えて良いそう、作業者の賃金だけ考えれば良いとかで、人件費って言うそうです。

水飴の値段は煮詰めた燃料費と人件費を足して、水飴1㎏が大銅貨1枚の100銭貨になるそうです。


「工場長さんありがとう!」

応接室で水飴を棒に付けた物を渡してくれて、アソウギ君とペロペロなめながらお礼を言いました。

丸い顔の工場長さんがニコニコ笑顔で、後ろの壁にはスローガン【高い黒糖より安い水飴を食べよう!】が掲げて居ました。

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