とある中年勇者の魔王討伐後~ポロリな勇者はコロリでガラリ~

ナッパー

第1話

「これで…終わりだぁ!!」


『ハ、ハウギャアーー!!!』


魔王城、謁見の間。

そこで勇者である俺と魔王の一騎討ち。

お互いの装備や服が消し飛ぶほどの死闘の末、ついに魔王である汚ねぇジジイの首をチョンパする事に成功する。


「殺った!?」


ビキニアーマーを着た顔以外が雌ゴリラの剣聖が声を上げる。

やめろや、余計なフラグが立つだろ。


「魔王から生命の波動は……もう感じませんね。これは完全に殺ったのではないかと」


純白の衣を身に纏った、美しい爆乳聖女の死亡診断が下された。

余計なフラグをすぐに折ってくれて助かる。


「やった…!! わたし達…ついに魔王をブッ殺したんだねっ!!」


さも自分達も魔王との死闘に参加していたかの様な発言をする、糞生意気な女魔法使い。

俺以外のパーティーメンバーは、ずっと死闘を見てただけのくせに…。


「お疲れ様です、勇者様…。どうぞ、このとっておきの回復薬をお飲みください。傷ついたお体がすぐ楽になりますよ」


荷物持ちでもいいからと無理矢理勇者パーティーに入った、魔法使いのイケメン幼馴染が小瓶を差し出す。


ふーん…とっておきの回復薬、ねぇ…。

そんなのがあるなら、魔王との死闘時に前もって渡してくれてたっていいんじゃないかなぁ…?


「…それはいいから、先に替えの服を…」


「そう言わずに、まずはこの回復薬をグイッとどうぞ」


「そうですよ勇者様、服は後回しにするべきです。まずは傷ついた御自分の身体を癒すべきかと…。その回復薬は私の回復魔法なんかより、ずっとずっと効くと思いますので…」


…なるほど。

どうやら効果に自信ありみたいですねぇ…。


「そうそうっ♪ さっさと飲んじゃってよっ♪ ま、その汚い雑魚チンと中年太りした体を早く隠したいって気持ちはわかるけどねぇ? キャハッ♪ 」


…ハイハイ、どうせ俺はハゲで雑魚チンで中年太りしたおっさん勇者ですよ。


「魔法使い!! 勇者様を馬鹿にするのはやめてって言ったはずでしょ!! …ゴメン勇者様、魔法使いは後であたしがちゃんと懲らしめておくからっ!!」


…別に剣聖が懲らしめる必要はないけどね。


「ハァ…わかった。薬を寄越せや」


「ハイどうぞ!! 見た目はちょっとアレですけど、気にせずグイッとイってくださいね!!」


イケメンから、ドス黒い液が詰まった小瓶を手渡される。

これをグイッと、ねぇ…。


「ハイ!! 勇者様のっ!! ちょっと良いとこ見てみたいっ!! ハイ飲ーんで飲んで、飲んでっ!!」


『飲ーんで飲んで、飲んでっ!!』


「え、飲んで、え…え?」


イケメンを筆頭に、聖女と魔法使いからもコールがかかる。

剣聖はこのノリに完全に置いてけぼりで困惑中。


「…仕方ねぇか」


小瓶の蓋を開け、覚悟を決める。


「飲ーんで飲ん…デェ!? ンゥ、ンンンゥゥッ!!!!」


イケメンの頭をガッチリとホールド。

鼻を摘まみ、口に無理矢理ドス黒い液体を流し込み中。


『キャァァァァッッ!!!!』


聖女と魔法使いの甲高い悲鳴が聞こえる。

キャァじゃねーんだよ。

このマンカス共が。


「ゆ、勇者様? なんで薬をそいつに…」


「…ゴリ聖は知らないもんな。まぁ見てりゃわかる」


「ゴリ聖? え、ゴリ聖って何…? あたしの事…?」


そういやゴリラは異世界にはいないんだった。

似た感じのオーガで、オー聖とか言い換えるか?

いやいいや、面倒だし。


「オ、オゴフッ!? オ゛オ゛エェェェ!!」


『ヒイイッ!!』


「うわぁ…汚ったねぇ」


身体中の穴という穴から、色んな汁を勢い良く噴射するイケメン。

口からはドス黒な血がマーライオン状態。

股間部門担当の茶色い汁はめっちゃ臭ってくるし…こりゃ酷いもんだわ。


「お゛、お゛…だ、たすゲェェ…デェエェェェ…」


ナメクジの様に地面を這い、聖女と魔法使いに助けを求めるイケメン。

いと無様。


「こ、来ないでくださいっ…!!」


「ち、近寄るなぁぁ!! もし毒が移ったらどうすんのよぉぉ!!」


え、この毒移る可能性があんの?

近くにいたらヤバいじゃん。

作製者もかなり焦ってるし、急いで離れさせてもらいますね。


「ど、毒!? どういう事なの魔法使い!? 説明し…」


「風よ、吹き飛ばせぇ!!」


「ギャッ…!?」


魔法使いの放った風魔法により離れた壁に叩きつけれ、うつ伏せに倒れてしまったイケメン。

幼馴染+恋人な相手に容赦ねぇなぁ…。


「な、仲間を相手に何て事をっ…!! 聖女!! 今すぐ荷物持ちに回復を…!!」


「…無理です。普通の人間があの毒を受けては…」


「それでもっ!!」


「…あ、残念ですが生命の波動が消えましたね。もう確実にどうやっても無理です。諦めてください」


「くっ…!!」


あらら、聖女も恋人が死んだってのにドライなもんだ。

壁際で自慢のツラと体が溶け始めた元イケメンも、これじゃ浮かばれないわー。


「しかしこりゃ凄い毒だな、魔法使い。えーと、勇者ポロリだっけ? 」


「…勇者コロリよっ!! ポロリしてる勇者はあんたでしょうがっ!! つーか糞勇者、何であんたが知って…」


「勇者イヤーは地獄耳なんで。貴様等の勇者毒殺計画なんぞ、全部まるっとお見通しよ」


どれだけ壁が厚かろうと、隣の部屋のピロートークだって聞けちゃうんだから。

聞こうとすればだけどな。

ハゲ雑魚チン中年童貞勇者を甘く見んなよ?

めっちゃお世話になったわ。


「勇者様を毒殺!? 魔法使いっ!! あんたいったい何を考え…」


「…縛れ」


「ムグゥ!?」


魔法使いの放った拘束魔法に、あっけなく縛られるゴリ聖。

黒いガムテープみたいなので、足先から口までぐるぐる巻き。

コイツ物理特化だから、魔法耐性が低すぎんだよなぁ…。

ま、ゴチャゴチャ横でうるさくされるより、拘束されていた方がやりやすくていいけど。


「縛れぇっ!!」


あ、俺相手にもそれ使っちゃう?

ゴリ聖と同じ様に、黒いガムテープが体に巻き付いてきたけど…。


「そぉい!!」


ちょっと体に力を入れれば即解放。

黒いガムテープは、パーンと飛び散りましたとさ。


「…チッ!! やっぱ効かないか…」


そりゃな。

魔王とタイマンはれるくらいまで鍛えた勇者にとっちゃ、トップクラスの魔法使いが放った魔法だろうと子供遊びにしかすぎないので。

今現在俺が死闘でめっちゃ疲弊していたとしても、無駄無駄無駄無駄ァ。


「さて、マンカス共…覚悟はできてるか?」


俺はできてる。

つーか、もうすでに仲間(笑)を1人殺っちゃってるし。

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