洗剤

 暇。

 日常が退屈だった。

 今日もいつものように暇な授業を受けて、「だるい」が口癖の友達三人と放課後電車に乗った。その内の一人が洗剤の半分入ったペットボトルをリュックから取り出して、少し笑いながら俺達に見せた。そいつは頭が良くて、でもちょっといかれたやつだった。

「これ、全部飲んでも死ねないから、四人で飲も。」

 全員が緊張した。誰もNOとは言わなかった。

「それ、俺が全部飲むよ。」

 俺はまるで何でもないかのようにペットボトルを一番先に受け取って一人で飲もうとした。だが、キャップを開けて口に近づけた瞬間、固まってしまった。三人全員が俺を見つめていた。冷たい手汗をかきながら、勇気が出るまでしばらくうつむき加減に宙をじっと睨んでいた。

 電車が駅に着いてドアが開いた。眩しい午後の日光の中へ、いくつかの黒い影が出て行った。


あいつはなんで「死なない」じゃなくて「死ねない」って言ったんだろう。

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