箱の中


 俺は誰かの養子になった。養子は20人以上いた。何かの危険が迫ってて、シェルターみたいなところに隠れるようにと養子達の母が言った。里親達は銃を持ってどこかへ行ってしまった。俺は兄と弟と一緒にアパートの外にある錆びかけた薄い金属の扉の小さな物置に自分達の幼稚園児くらいの小さな身体を押し込んだ。入った時はとても窮屈で暗くて物も殆ど無かったのに、いつの間にかシェルター内は豪華になっていた。食べ物や衣類、空間も充分にあったし、娯楽もあった。それから何年も経って、外に出ることもせず、俺達はシェルターの中で青年になり、成人し、中年になり、高齢になり、兄は死んだ。俺もヨボヨボのおじいさんになった。俺も兄みたいにこのシェルターの中で死んでいくのかな。

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