小説雨ニモ負ケズ 宮沢賢治~わが心のイーハトーブ~

長尾景虎

第1話 小説雨ニモ負ケズ 宮沢賢治~わが心のイーハトーブ~

小説雨にも負けず

宮沢賢治~我が心のイーハトーヴ~



        みやざわけんじ

        ~雨ニモマケズ


           わが心のイーハトーブ~  


                童話詩人宮沢賢治の生涯

                「イーハトーブ」はいかにしてなったか。~

                ノンフィクション小説 

                 total-produced&PRESENTED&written by

                   NAGAO Kagetora

                   長尾 景虎


         this novel is a dramatic interpretation

         of events and characters based on public

         sources and an in complete historical record.

         some scenes and events are presented as

         composites or have been hypothesized or condensed.


        ”過去に無知なものは未来からも見放される運命にある”

                  米国哲学者ジョージ・サンタヤナ


          あらすじ


  詩人、童話作家・宮沢賢治は明治二十九年八月二十七日に長男として生まれた。

 学生時代から詩を書き、岩手県盛岡農林学校の頃は山登りばかりしていたという。しかし、父の質屋の後を継ぐのが嫌で家出し、東京にいく。しかし、仕事がない。新聞配達の仕事をしながら、しだいに賢治は詩や童話の執筆にのめりこんでいく。

 やがて岩手に帰り、農業大学の教師に、そして、生徒たちに”土いじり”を教える。

 しかし、天才には神は常に厳しい。

 賢治は結核にかかり、東北採石工業の技師としてはしりまわる中、遂に倒れる。

 賢治は病に倒れ、死後、弟の清六氏(故人)や藤原嘉藤治氏(故人)に原稿が多数発見され、かれの原稿は本となりいまも愛読されるまでになった。        おわり

         1 岩手山






「賢さんに会いたい?」

昭和五年のある日、宮沢清六の店に朴訥そうな男のひとがやってきて「宮沢賢治さんにあいたい」という。その頃、賢治は三年ほど病のため床にふしていた。

「賢さんにどげな用です?」

 男は「失礼! 私は東北採石工業の経営者で、鈴木東蔵というものです。是非、賢治さんにわが社に技師になってもらいたい」という。

「……賢さんは病で…」

 そんな会話が聞こえたのか、「清六……おらは大丈夫だ。あがってげろ」と賢治が起きてきていう。そのひとはとてもいいひとで、朴訥に話す。

 なんでも石灰岩を機械で砕いて、肥料をつくる会社の経営者で、是非、技師としてきてほしいという。賢治は学校教師を四年四ケ月勤めたあとだったから、そのひとのことが好きになってOKした。

 肥料は、土地改良に必要だ……賢治はそう考えていた。農村に安くてだいじな肥料を配給することもできるし、工場でも注文が少なくて困っているという。

「なら、おらが手伝うだ」

 賢治はふたつ返事で、技師になった。

 技師といっても、印刷物をつくって配送したり、農業会をまわったり、金の工面をしたり、肥料屋や米屋を訪問して肥料を売ったりする。

 病弱な賢治はそれでも一生懸命、汽車にのって東北や東京あたりまで飛び回った。

 賢治はトランクにたまった原稿を取り出してしまい、そこに肥料袋を入れた。

 にこにこと楽しそうだった。

「どうも! おらは東北採石工業のものです」”飛び込み”もおこなった。

 ある日の東北の肥料屋だった。名刺を差し出す。

「……宮沢賢治?」

「はい! おらは東北採石工業の宮沢賢治です。東北の土地は出来が悪い訳じゃないんです。肥料、この肥料をまけば土地は蘇り、この東北でも様々な農作物が育つのす」

「……土地が?」

 店のものが興味を示してきた。

「はい! 要は土地を肥料で改良すれば、この東北だって……なんでもつくれるのっす」 賢治はにこりと笑った。



「宮沢賢治というひとはどんなひとでしたか?」

 ある日、生前の宮沢清六さんにひとりの読者がやってきていった。

 弟で、もうすっかりおじいさんになっていた宮沢清六さんはにこにこ笑いながら、

「はあ、そのへんを歩いているひとといっこうに変わりませんでした」と答える。

「そのへんを歩いているひとが”銀河鉄道の夜”や”春と修羅”を書きますかね?」

 清六さんはにこにこ笑いながら、「普通のひととかわりありませんでしたよ」という。 考えてもみれば、詩人・童話作家とはいえ、物知り顔で演説をぶったり、伏し目がちに天空を見上げたりする訳もない。

 宮沢賢治というひとは本当に、東北を愛し、農業を愛したひとだったのだろう。


 詩人、童話作家・宮沢賢治は明治二十九年八月二十七日に母いちの実家、花巻町鍛治町で長男として生まれた。

 戸籍には八月一日となっているが、正確には二十七日が正しいという。

 この明治二十九年というのは岩手では天災が多いときだった。

 雨や風や天候を心配しながら、みんなの幸せを願った賢治の一生を暗示しているかのようだ……と、生前の宮沢清六さんは本に書いている。

 ちょうど賢治が生まれてから五日後に大地震があって、そのために家が五千六百つぶれ、死者は二百六十人にものぼったのだという。

 賢治の生まれる少し前の年も大津波があって、生まれた年の七月と九月には暴風雨があり、これまた大勢死んだという。夏になっても寒い日が続いて、稲が実らず赤痢になるひともおおくでた。

 長男の賢治は大切に育てられたが、チフスにかかり、父にも感染し、賢治は病気がちになったという。親は仏教を教え、その思想が賢治の文学にいかされている。

 賢治は小学校の頃から動物や植物、昆虫、鉱石が好きで、石ばかり集めてくるから家族のものたちに「石コ賢さん」とあだ名をつけられるほどだったという。

 また童話も好きでよく読み、活動写真(映画)もよく観ていたという。

 宮沢清六さんが五歳のとき、兄・賢治は盛岡中学校(当時は中学校の義務教育はなかった)の試験に合格して通うが、やがて成績が落ちてきて父親・政次郎にこっぴどく怒られてかわいそうだったと弟はいう。

 あまり成績がよくないまま卒業し、そして賢治は発疹チフスで入院し、父とはよく口喧嘩したという。その頃の詩がこれ。

     紺いろの

     地平線さえ

     浮かび来る

     やまいの熱の

     かなしからずや


     ねんまく 

     粘膜の

     赤きぼろきれ

     のどぶらさがり

     かなしきいさかい

     父とまたする


  病気がなおってからは、賢治は猛勉強し、岩手県盛岡農林学校(現・岩手大学)に合格する。かれは学生時代から詩を書き、岩手県盛岡農林学校の頃は山登りばかりしていたという。

  大正八年、学生服の賢治は友達とともに岩手山に登った。

 岩をひろい、

「溶岩の匂いがする」とにこりという。

「……岩手山が噴火したのは何百年もまえだべ。なして溶岩の匂いするだや?」

 親友の保坂嘉内はにこりとして「賢さんにはわかるさ! 石のことな賢さんにきけってな」

 保坂嘉内らは登山を楽しんだ。賢治はにこにこしながらどんどんとひとりで登っていく。やがて頂上についた。夜になり、星がきらきら見える。テントをはり、火を炊いた。

「みてみろ! 星がいまにも手に届きそうだ!」

 賢治は笑った。

 保坂嘉内は「これを頑固親父にみせてやりたいよ。長男は家のあとを継ぐもんだと考えている。賢さんは?」

 賢治はいった。

「うちの親父も家の仕事を継げっていってる。でも、おらは質屋なんかいやだ」

「そうとも! おやじなんかにわかるもんか!」

 保坂はいった。「じゃあ、賢さんは将来なんになる?」

「詩人か作家かなぁ……」

「そりゃあすごい!」

「そして、銀河へ!」賢治はにこにこと、星空の銀河を指差した。

「そりゃあいい! 銀河へ!」

 保坂嘉内たちも大笑いした。

 翌日、早朝、下山した。

 橋を渡っていくと、「おはよう、宮沢さんところの坊っちゃん」と髭の男が挨拶する。質屋で、富豪の宮沢家といえば地元では知らぬものはいない。

 賢治の父はその頃、質屋を営んでいた。

「その着物……二円でお願いします! おらのところは今年不作で……このまま金ながっだら、娘売るしかねぇ。お願げぇします! おら娘っこ売りたくねぇだ」

 偶然、賢治はそんな様子を見た。

 父は慇懃に「三十銭だ!」という。

「おら……娘っこ売りたくねぇ!」

「三十銭だ!」

 賢治はむしょうに腹が立った。

 どかどかと店のなかにはいると「安太郎さんが二円といえば、この呉服は二円なのっす!」と怒っていう。

 父は冷静な顔のままで、

「そうなのか? 安太郎」

「……はぁ?」

「その呉服は二円なのか?」

「いやぁ、一円五十銭かも……」

 賢治は正義感いっぱいだ。

「安太郎さんが二円といったら二円なのっす!」

 賢治の父は一円五十銭札を出し、安太郎に渡した。「ありがとうございます!」そのみすぼらしい男は逃げるように去った。

 賢治と父は対峙している。

 賢治は玄関へむかった。そこには仲のよい妹・タミとまだ小さい弟・清六がいた。

 タミは気立てのいい美人で、可愛い顔の娘である。

「お帰り、兄(えな)さん(賢治のこと)!」

 と可愛い声でいう。

「タミ! いつ学校から戻った?」

「昨日よ」

「んだが」賢治とタミは微笑みを交わした。

 面白くないのは父・政次郎である。

「……賢治、さっきのはなんだ!?」と怒り声で声をかける。

 賢治は、

「もうこんな商売やめてげれ! ひとから物とっで金かして…」

 と愚痴った。

「こんな商売とはなんだ、賢治! 誰のおかげで飯くえて、学校いけると思ってる? 商売して稼いでいるからでねが?!」

「……んだども」

 父は諭すようにいった。

「いいか、賢治……安太郎に娘などおらぬのだ。あいつの家の子はみな男の童子ばかりだ。少しはひとを疑え」

 賢治は愕然とした。

 ……安太郎さんは嘘を……おら騙された…

 学生服のまま賢治は家を飛び出した。

「まって! 兄(えな)さ~ん!」紋付き袴の妹タミも追いかけていく。

 ふたりは橋のらんかんから汽車を眺めた。

 賢治は遠くを見るような目になって、

「いいなぁ。おらも東京さいぎでなぁ」と呟く。

 そして、「タミ、おめの夢は?」

「わたしはがっこの先生……女子校の先生」

「そりゃあいい。先生か? 似合うべなぁ、タミの先生姿…」

 タミは笑った。

「兄(えな)さんは?」

「……ん?」

「兄(えな)さんは何になる気なの? 家継ぐの?」

 賢治は曖昧に笑って、

「いやぁ。おら……詩や童話書くのすきだがら…」

 タミは微笑み「じゃあ作家先生だわね?」ときいた。

「……”先生”は余計だべ」

 ふたりは笑った。

 ふたりの上にはどこまでも蒼い空が広がっていた。                 

         2 立志







  盛岡高等農林学校の校舎は春の暖かい陽射しを受けていた。

「鈴木さんが退学処分になったのっすか?」

 学生服姿の賢治は驚いて、外の掲示版をみていた。

 保坂嘉内は、

「なんでも女とどこかへいったらしい」とそっけない。

「………女のひとと?」

「ああ、心中でもしたんじゃないか?」

「そげなごど…」

 賢治は信じられない様子だった。

 桜が満開で、きらきらと美しい。天気もよく、春は誰にでも優しい。

「賢さん、これ知ってるかい?」

 保坂はサンドイッチを鞄からとりだした。

「……パンだべ?」

 保坂嘉内は笑って「そうだが、サンドイッチさ。こんな風に肉とレタスをパンで挟むんだ。西洋では昼飯だそうだ」といい食べた。

「どんな味だ?」

「……うまい」

 ふたりは笑った。

「ところで賢さん、俺らももう卒業だ。本当に詩人や作家になる気なのかい?」

「いやあ…保坂さんは?」

 賢治は頭をかいた。

「俺? 俺は百姓になる。花巻では百姓が一番だ」

「そうかあ…百姓もいいなぁ」

 賢治はまたいがぐり頭をかいた。シャイ(内気)なのである。

「賢さん、これからの農業はかわらぬばならない。いつまでも土地がだめだ、補助金がどうのといってる場合じゃねぇべさ。俺は農業革命ば起こすんだ」

 賢治は感心した。

「保坂さん……”農業革命”だべか? おらもそれをやりたいだ」

「じゃあ、いつかまた会って、そのときこそ革命をおこそう!」

「んだな!」

 ふたりは握手をかわし、別れた。

 卒業式ののちの事で、あった。


  大正九年になった。

 宮沢賢治の妹・タミは女学校の先生となっていた。

「宮沢先生、さようなら!」

「さよなら」

 タミは袴姿で、自転車で帰宅するため学校を出た。

「兄(えな)さん、大丈夫だべか?」

 妹は、病気がちの兄を心配していた。賢治は医者の前で上半身裸になり、聴診器をあてられていた。学校を卒業してから、職にもつけない。

 ……すべて病気のせいだ。

 父の別の仕事が忙しくなると、賢治は質屋の店番をやらされた。

 ……ごほごほ。

 賢治は労咳の気があった。

 喀血はまだしてなかったが、体調は悪い。

 誰もこないので、賢治は茫然と質入れされた服を見ていた。

 何ともいえなかった。

 この呉服で自分は食べて、学校にいけたのである。

「………早く認められてぇ…」

 いつしか、賢治は詩や童話で食える日を夢みるようになった。

 誰かが自分の才能を認めてくれて、世にだしてくれれば……食べていけるんだが。

 ふと、思いついた詩を書いてみた。

 次々と創作意欲がわく。

 賢治はにこにこ笑いながら、詩を書くのであった。


「……賢治ではダメだ」

 父・政次郎は街を歩きながらいった。

「でも、賢さんは長男でしょ?」

 母・いちはいう。

「長男は長男でも、あげな病弱で、しかも騙されやすいもんでは質屋はつとまらん」

「そんでも……長男が稼業を継ぐって昔から決まってますでしょう?」

「そんなこと知るもんか!」

「そんでも……賢さんはいいひとですよ」

 父は顔をしかめて、

「だから駄目だといっとる。あいつは”いいひと”過ぎるんだ」

「………いいひと過ぎるって?」

「まぁ、わがりやすぐいえば『おひとよし』というごっだ。おひとよしではいい仕事はでぎね」

「…そんでも……おとうさん」

「とにかく! 賢治では駄目だ!」

 父は足をはやめた。妻・いちは着物だから大股で歩けるはずもなく、追いつけない。

 ……賢さんがかわいそうだ。

 母性愛が、賢治をかわいそうと思わせた。

 賢治は内気で、朴訥で、確かに『おひとよし』だ。しかし……


  冬がきた。

 東北の冬は長い。

 もう辺り一面白い銀世界で、雪が何メートルも積もる。この時代、『除雪車』などというもんがないから、みな雪かきで汗だくになる。

 交通も遮断される。

 そんなな中、賢治は騒ぎを起こした。

 手太鼓を打ち鳴らし、深夜、雪の降る中、街をひとりで行進した。

「南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!」

 賢治は何を思ったか、大声で仏教の法典を唱えながら行進した。

「うるさい!」

「眠れん!」

 近所から苦情がきた。

「馬鹿者!」父はそれをきいて、賢治を叱りつけた。

「なにが南無妙法蓮華経だ?! 気でもふれたか?! 賢治!」

 父ははげしいけんまくである。

 賢治は下を向いて何もいわない。

「おめが変なことするたびに、わしがどれだけ恥をかくと思っているだ?! 賢治!」

 父は、賢治を殴るかのように激しく激昴していった。

 すると、賢治は顔をあげ、父にすがり、

「アメリカにいかせてください!」

 と嘆願した。

「南無妙法蓮華経の次はアメリカだ?!」

「そうです! アメリカにいかせてください!」

 父は「話にならん!」と吐き捨てた。

「アメリカにいかせてください!」

「賢治!」父は堪忍袋の緒が切れた。「アメリカにいけばおめは成功でもするっでのが?!」 賢治は黙り込んだ。

 父が激怒のまま去ると、かれは考えた。

 ……このままではおらは駄目になる!

 ………そうだ家出しよう!

 ………おら東京さいぐだ!



  大正十年一月二十三日、賢治は鞄をもってそっと家出をした。

 それをみつけたのは妹のトシだった。

「兄(えな)さん? どごさいぐの?」

「おら東京さいぐだ!」

 駆け出す賢治、汽車はもう出発しそうだ。SL列車は煙りをもくもくとあげている。

 賢治二十五歳のときだった。

「兄(えな)さ~ん! 東京さいっで何すんだ?」

「とにかく、トシとめるな! おら東京さいぐだ! 東京いって認められるんだ!」

 賢治は夢を追ってばかりの理由で東京に向かう訳でもなかった。

 家のものを浄土真宗をやめて、正しい法華教に帰依してほしいと父親に頼んだが聞き入れてもらえなかったからだ。

 賢治は列車に飛び乗った。

「兄(えな)さ~ん! 兄(えな)さ~ん!」

 袴姿のトシは涙を流して見送った。


  東京に着いたが、はてさて仕事がない。

 頼りにしていた金持ちも、「うちにはメイドやボーイがいて空席がない」という。

「なら、私がそのメイドやボーイさんの世話を……」

 賢治は必死に食い付いた。

「悪いが急いでいるんだ。やってくれ!」

 金持ちは人力車の者にいくように命じた。その男は去ってしまった。

 ……どうするべ。とにかく食べるために働かねば……

 賢治は東京本郷の東京大学の前で、謄写版印刷の仕事をしたり、鶯 谷の国柱会で奉仕したり、上野図書館で勉強したりしたという。

 謄写版印刷の仕事では惨々だった。

「おい! 東北のひと!」

 部長の男がいう。

「はい?」

「何文章かえてんだ?」

 賢治はちいさな声で、「わがりやすぐしようと思って…」

 といがぐり頭をかく。

「余計なことしなくていいんだよ!」

 部長はカンカンだ。

  暇な日はもっぱら奉仕活動をした。

 大学生に農業のチラシを配る。

「あなたにはこのチラシを読む義務があります!」

 しかし、大学生たちは『農業』など興味がない。誰も相手にしない。

 なかにはからんでくるものまでいる。

 賢治は孤独だった。

 家賃の少ない部屋にもどると、賢治は爆発するように原稿用紙に向かう。

 ……おい、リス! ヤマ猫がここを通らなかったか?

 爆発するような勢いで童話を書き始めた。

 賢治の目には、幻想のしゃべるカエルやリス、動く電信柱が見えた。

 ……『月夜の電信柱』…

 賢治はしだいににこにこと笑顔になる。

 そのときのことを小学校のとき童話を読んでもらった八木英三という先生に次のようなことをいったという。

「人間の力には、かぎりがあります。

 仕事をするのは時間がかいります。早く書きたいものを書きたいと、わたしは思いました。

  一ケ月のあいだに、三千枚書きました。

 そしたら、おしまいのところになると、原稿のなかから字が一字一字とびだして、わたしにおじぎするのです。

 そのときわたしは思いました。

 こんな調子で書きつづけたものは、ほんとうのわたしというものを伝えてくれるかどうか、わからない。

 もういっぺん正気をとりもどしてから読んでみよう。

 そう思ったので、わたしはいっさい筆をとらず静養しました」

 こんなふうにして書かれた童話が今も子供たちをとりこにする。

 賢治の父親は心配して、ときどき金を送ったが、賢治は受け取らなかった。すぐ返してよこします。

 四月父は上京して旅行をすすめたので、一緒に仲良く比叡山や伊勢、奈良などを旅行したのでした。そのときの歌が四十首くらいのこってる。

  ……ねがわくは 妙法如来正褊知 大師のみ旨成らしめたまえ……

 という首が、昭和三十二年に比叡山の根本中堂の前に碑を建てられた。

 妹が病気になったというので、賢治はトランクにいっぱいの原稿をつめて花巻に帰っていった。そして、そのまま東京には戻らず、岩手で教職につくのだった。        

         3 親友との別れ






  故郷のもどる前、賢治は保坂へ手紙を書いた。


                    

    保坂嘉内あて (一九一八年、大正七年五月十九日)


  おはがきありがとう存じます。この前のはがきにこれからは毎日泊まり先からお便りするようなことをいいながら今までなんともすみませんでした。

 旅先からあなたになんべんも手紙を書こうとして住所を覚えていないことに気が付いてやめました。

 今日とてもこの手紙は明後日夜花巻で宛名を書くのです。

 さてその後おたがい予期しないような立場が向いてきました。あなたはもちろん、私もこの間兵隊検査で第二乙種になりました。

 戦のときは二等卒の新兵で行くのでしょう。

 最初、軍医は第一乙種にしたそうですが、例のラッパを胸にあてて、

「君は心臓が悪いね」

 などといいまして「さぁ、どうでしょうか?」といっている間に軍医は向こうにいってしまいました。私は生き物を食べるのをやめました。

 けれども、先日、「社会」との「連絡」を「とる」おまじないに、まぐろの刺身を食べました。魚はどんな気持ちで食べられたのでしょうか?


  保坂嘉内は賢治と駅であった。

「いやぁ、保坂さん! ひさしぶりだべさ!」

 賢治は笑顔をみせた。

 そして、

「”農業革命”のほうはどうなってるべが?」と問うた。

 保坂は苦笑して、

「そんなもの出来る訳ないよ、賢さん」という。

「なして? 農業は国の基礎だべ?」

「そんなことはない。今やこの日本は工業が栄えてる。農業は衰退の一途さ」

「……んだども…」

「賢さん、あんたは農業の本当の姿を知らない!」

 保坂嘉内は強くいった。

「賢さんには農業の苦労を知らないから、農業が基盤だ、イーハトーヴだ、などといってるんだ! 農業はイーハトーヴなんかじゃない!」

「……保坂さん」

 保坂は席をたった。

「俺は忙しいので失礼する」

 賢治は涙を流し、「たったひとりの親友を捨てるのか?! 保坂さん!」と嘆願する。

 しかし、保坂は賢治の夢には付き合っていられなかった。

「保坂さ~ん!」

 賢治は崩れ落ちた。

 スキヤキ屋で、スキヤキを前にひとり賢治は見つめて茫然と正座している。憔悴が激しかった。………親友をなくした…

「お客さん、食べないの?」

 女中が不思議そうにきく。

 賢治は「……食べます」といって、食べた。

 味がわからないほど絶望していた。そして……牛はどう思っておらに食われてるだろうべが? と思った。

 そんな中、妹・トシの病気の知らせがきたのである。

 賢治は荷物をすべてまとめて岩手に帰った。

「トシ! トシは無事か?!」

 実家につくなり、賢治は声をはりあげた。

「賢さん!」母が喜んだ。

「………部屋で床にふしてるわ」

「トシは死ぬのですけ?」

 賢治は慌ててきいた。

「……お医者さんにみてもらってね。いまはだいじょうぶよ」

「トシ! トシ!」

 賢治はトシの部屋にいった。するとトシは布団に横になっていた。

「……兄(えな)…さ~ん!」

 病気の妹は笑顔をみせた。

 顔面が蒼白だ。

「トシ、いでどごねぇが?」

「大丈夫よ、兄(えな)さんおかえり」トシは白い歯をみせた。

 そして、「そのトランクには何がはいっでんの?」と問うた。

「これが、原稿……詩や童話だで」

 賢治はトランクを開けて、いっぱいの原稿をみせた。

 トシは微笑んだまま、

「まぁねこんなにいっぱい書いたの?」

「あぁ、全部書いた。いっぱい書いた」

「どういうの?」

 賢治は照れ臭そうにいがぐり頭を手でかいて、「風の又三郎とか…」という。

「風の又三郎?」

「ああ、ガラスのマントで、又三郎は飛んでいくんだ」

「へえ~っ」

 トシは興味を示した。「兄(えな)さんもまたどこかへ飛んでいぐの?」

 賢治はにこりとして、

「いやあ、おらはもう東京はこりごりだ。トシがいるかぎりこの花巻を離れね」

 といった。

「この岩手を花巻をいや東北をイーハトーヴにするんだ」

「”イーハトーヴ”って何?」

 賢治は笑って、

「”理想郷”……おらが考えた造語だ」

「イーハトーヴ? いい響きね」

 トシはえらくその言葉がきにいったようだった。


  賢治はその年、花巻農業高校の教師になった。

 たいへんユニークな先生で、生徒の評判もよかったという。

 カッパの真似をして、岩から顔を出し、口から水を出し、にやにやする。

「河童だ! 河童だ!」

 生徒たちは笑った。

「宮沢先生、この石は何だべか?」

「これはかせい岩だな」

 清流はどこまでもきれいだった。

  岩にすわり、詩をつくる男がいた。藤原嘉藤治という名の教師で、花巻女学校の先生をしていた。まだ若い。賢治と同じくらいの眼鏡をかけた青年だ。

「ここなら……いい詩っこば書けるっべしょ?」

 賢治は藤原嘉藤治に声をかけた。

「……いやぁ」

 藤原は困ったような顔をする。

 賢治は朴訥に、「おらもいっぱい詩書いてるんです。今度、みせましょう」という。

「は……はあ」

 藤原は困った。たいした詩でもないのに、読まれるのが怖かったのだ。

 藤原嘉藤治の勤める女子校は農業高校の隣だった。

 かれはオルガンを弾き、

 女学生たちは「♪わらべはみたり…野原の薔薇……」と歌い始める。

 しかし、となりは男子校である。

 この頃の男子は女性に興味深々だ。すぐにちゃかしに騒音を出す。

「やめれ! おめたち!」

 賢治がやってきて止める。そして、藤原に気付き、

「どうもすいません!」と頭を下げた。

 賢治は校長に呼ばれた。

「すいません。生徒だぢが迷惑かけまして…」

 賢治は素直に罪を認めた。

「いやあ、あのくらいの年の男の子は女の子に興味をもつものですよ、ハハハ」

 校長は笑って許してくれた。


「藤原先生! 藤原先生!」

 賢治は夕方、藤原嘉藤治に声をかけた。

「……なんですが? 宮沢先生」

「これ、おらが書いた詩です。読んでみてくれませんが?」

 賢治は分厚い原稿用紙を藤原に手渡した。

「……詩ですか?」

「はい!」賢治はにやりと笑う。

 藤原は表紙に目を通してみた。

「……どうですか?」

「いやあ、まだ…」

「あ! そうですよね? すぐに読めませんよね。失礼しました。感想をあとできかせてください」

 賢治は恐縮した。

「……はぁ」

 藤原嘉藤治のほうがもっと恐縮した。他人の詩など、本以外で原稿として読んだことがないからだ。しかし、夜になってから自宅で(当時・独身)読んでみた。


        無声慟哭


  こんなにみんなにみまもられながら

  おまえはまだここでくるしまなければならないのか

               

  ああ巨(おお)きな信のちからことさらになれ

  また純粋やちいさな徳性のかずをうしない

  わたくしが青ぐらい修羅をあるいているとき

  おまえはじぶんにさだめられたみちを

  ひとりさびしく往こうとするのか

  信仰をひとつにするたったひとりのみちづれのわたしが

  あかるくつめたい精進のみちからかなしくつかれていて

  毒草や蛍光菌のくらい野原をただようとき

  おまえはひとりどこへいこうとするのだ

   (おらおかなぃふうしてらべ)

  何というあきらめたような悲痛なわらいようをしながら

  また私のどんなちいさな表情も

  けして見のがさないようにしながら

  おまえはけなげに母にきくのだ

   (うんにゃ ずいぶんりっぱだじゃぃ きょうはほんとにりっぱだじゃぃ)

  ほんとうにそうだ

  髪だっていっそうくろいし

  まるで子供のりんごの頬だ

  どうかきれいな頬をして

  あたらしく天にうまれてくれ

   (それでもからだくさぇがべ?)

   (うんにゃいっこう)

  ほんとうにそんなことはない

  かえってここはなつののはらの

  ちいさな白い花の匂いでいっぱいだから

  ただわたしはそれをいま言えないのだ

   (わたしは修羅をあるいているのだから)

  わたくしのかなしそうな目をしているのは

  わたくしのふたつのこころをみつめているためだ

  ああそんなに

  かなしく目をそらしてはいけない……



  藤原嘉藤治は圧倒された。すごい詩である。自分が今までにつくってきた詩がクズのように思えてきた。宮沢賢治というひとはすごい!

 とにかく、なにやら興奮が、おさまらなかった。

 宮沢賢治というひとはすごい!                         



         4 トシの死







  次の朝、藤原嘉藤治は背広姿で学校にいき、校長に素直な気持ちを打ち明けた。

「いやぁ~、あの宮沢先生の詩はすごかったですよ」

 校長は「そうでしょう、そうでしょう」と笑顔だ。

「私も読ませてもらったことがあるんですが、いゃあすごい」

「まったく、自分のうぬぼれが吹っ飛ばされたとうか……とにかく圧倒されました」

 藤原は頭をかいた。

「もう、わたしは詩は書きません。宮沢先生にはかないませんよ」

 校長は「世の中のひとは、宮沢賢治のすごさがわからない! 残念です」

 という。

 その頃、午後、男子校ではオルガンを外に出しているところだった。

 天気はいい。晴天である。

 校長がやってきた。

「宮沢先生! 何をはじめる気です?!」

 賢治は笑って、

「いやあ、歌っこでもうだわせようがど思って…」

「ここは農業学校ですよ?」

 賢治は「農業にも芸術は必要なのっす」という。

「……はぁ」

 校長は呆気にとられた。

 藤原先生がやってきて、「私がオルガンを弾きましょう」という。

「お願いします」

 やがて、男子たちが歌いだした。

 ……♪ストマック・ウォッチはもう三時なのに……バナナん大将はまだやって来ない

 ……♪ストマック・ウォッチはもう三時なのに……バナナん大将はまだやって来ない

 宮沢賢治は素朴に笑ってわたう。

 男子たちも歌う。

 それは平和な一日だった。


  大正十二年の正月のことだった。

 賢治が童話原稿がぎっしり詰まった皮トランクをもってきて、弟の清六さんに、

「この原稿を東京社にもっていってよかったら婦人画報にでも載せてもらってくれ」

 と上京して帰っていったという。

 清六さんが東京社においていってしばらくすると、

「これは私のほうの雑誌にはあいませんので…」と返されたという。

 なんの伝手もなく、中学をでたばかりの清六さんにいっぱいの原稿を渡されてもまじめに読んでくれる訳はない。

 生前の清六さんは「そんな変わっためんもある兄でした」といっている。

 賢治が農民の困窮を知ったのは教え子が学校の校舎で気分が悪くなって吐いた時。学生は「かて飯」という白いコメではなく、大根をすり下ろしてご飯のかわりに食べたものを吐いたのだった。農村部の窮乏は知識として新聞などや実体験でもわかっていた。

お百姓さんの息子が大根飯を食べている。そして東北を襲う飢饉に冷害……宮沢賢治は農家の息子に教えて、それで食っている。金持ちの息子だから食べるに困らない……だが、こんなんじゃ駄目だべした!賢治は農学校の教師を辞めることを考え始める……

 賢治は農業学校では喜んで学生たちに講義していた。

 今日は実習だった。

 学校の庭に家庭菜園のような畑がある。

 学生たちは賢治の話をきいていた。

「大事なのは年にどれだけ収穫があったかです。それにより肥料の量を…」

 賢治が熱弁をふるっているとき、安太郎が鍬をかかえてやってきて、

「こげなちっぽけな野菜畑よりおらのところで作業したほうがよかべさ」と横ぎった。

「とうちゃん! やめれ!」

 安太郎の息子は恥ずかしそうにいった。

 しかし、賢治は「それもそうだ。よし、みんなで安太郎さんの畑に手伝いにいこう!」などという。学生服に長靴の学生たちはついていった。

 この年、賢治の処女作本が出版された。


     息吸えば   白きここちし

     くもりぞら  よぼよぼ這えるなまこ雲あり


     縮まる肺にいっぱいに いきすれば

     空にさびしき雲うかべたり



  賢治はさっそく実家より離れた妹・トシが病宿にしている家に向かった。

 例の”下の畑におります 賢治”の看板の家である。

「兄(えな)さ~ん!」

 トシはふとんに寝込んだまま、笑顔をつくった。

「トシ、これ!」

「なに? 兄(えな)さん」

「おらの書いた本だ!」賢治は本を妹に渡した。

「……原稿料五円」

「よかったね! 兄(えな)さん!」妹はよろこんだ。「これで兄(えな)さんも詩人・童話作家ね?」「んだ! んだ!」

 賢治は照れくさそうだ。

「かた雪かんこ……キツネの子は嫁ほしいと…」

 トシは読んでみた。

 賢治は真面目な顔で、

「おらは嫁はいらねえよ」という。

「なして?」

「おらにはトシがいる」

 ふたりは笑った。しかし、蒼白な顔色をしたトシは咳き込んだ。

「……だいじょうぶか? トシ」

「…ゴホンゴホン…だいじょうぶ…」

 賢治は安堵した。

「兄(えな)さんの仕事は書くことよ。兄(えな)さんには才能がある。わたしは一生兄(えな)さんの味方だからね」

 トシは笑顔でいった。

 賢治は感動して「書く! 指がちぎれるまで書く!」といって笑った。

「そう。それでよし!」

 ふたりは笑った。


  秋になった。

 宮沢賢治は藤原嘉藤治をよび、

「あの紅葉のところで蓄音機でレコードきがねぇですが?」といった。

「……レコード?」

 大正十年頃はレコードがやっと日本に入りはじめたころだった。

 いいものはなかなか手にはいらない。しかし、賢治は新譜が入ると真っ先に手にいれ、何回も何回も同じ曲をきくのだった。

 ふたりは草原でベートーベンのレコードを聴いた。

 そんなとき、賢治は手帳に詩を書き始めた。

 藤原は不思議に思って、

「賢治さんはいつも手帳もってますね? そんなに詩などが頭に浮かぶものなんですか?」 と尋ねた。

 賢治は頭をかいて、照れくさそうにしながら、

「心象スケッチなのっす」という。

「……心象スケッチ?」

「はい。心の動きをいろいろと文章にしていくのっす。そんためおらはいつも手帳とペンをもってるのです。野山でも汽車の中でも思いついたら書くのっす」

「そうですか。へぇ~っ」

 藤原は感心した。


     海だべかと おら おもうたれば

     やっぱり光る山だたじゃぃ

     髪毛(ほう) 風吹けば

     鹿踊り(ししおどり)だじゃぃ


 賢治は草原を「ほうほう」といいながら駆け回った。

 にこにこと笑顔である。

「さあ、藤原先生も一緒に!」

 ……ほうほう! ほうほう! ……

 ふたりは無邪気に草原を駆け回った。

  しかし、突然不幸がやってくる。

 冬がきた。

 賢治の大事な妹がタンカで実家にかえされた。寒さで病気が悪化したのだ。

 トシは実家の部屋でふとんに横になっている。息があらい。

「……はあはあ…兄(えな)さ~ん…」

「トシ! しっかりしろ!」

 賢治も母いちもふとんをかこんで見守っている。医者がきた。

「…兄(えな)さん…わ……わたし……死ぬ…のすけ?」

 蒼白な顔のまま、トシは涙声で賢治にきいた。

 賢治は「いいや! おめは死なね! 死なねど!」という。

「………兄(えな)さ…ん…」

「トシ……何か欲しいものあるか?」

 妹のトシは首を少しふり、「なにもねすけ………ただ…」

「ただ?」

「雪ゆず呑みてぇ」

「わかった! 待ってろ、トシ!」

 賢治は雨戸を開けて、きれいな雪を手で包んだ。そして、トシの元に戻ると、口につけ水を流した。

「冷やっこい。……え……兄(えな)さん…ありが…と…」

 そういうと、トシは意識を失った。絶命した。

「トシ……トシ? ……トシ?! トシ!」

 賢治は号泣した。

 母も泣いた。

 父は仕事場から車で帰ってきた。

 トシの遺体をみた。

 父・政次郎は涙を浮かべ、

「トシ、まんず病気ばかりして、ひどがっだな。今度生まれてくるときは人間なんかに生まれてくるな」

 といったという。

 賢治は部屋の押し入れに入り、いつまでも泣いていた。               

         5 銀河鉄道の夜







  賢治は『銀河鉄道の夜』の執筆に入った。

 かれは汽車にのっている。

「次はカテンキーニです。銀河鉄道は三十光年の銀河を旅します」

 奇妙な車掌が歩いてきて、いう。

「あなたはどこまでいくのです?」

 賢治は「わかりません」という。

「そうですか。失礼」

 隣の席の男が、

「あなたはいいキップをおもちだ。それなら天国まででもアンドロメダまででも行けますよ」といいにやりと笑う。

 窓をみると、星座が見えた。

 蒸気機関車が銀河を走っているのだ。



「ほう、汽車が銀河を走る?」

 校長は店で興味をもった。

 藤原も「それはいい作品になりそうですね」という。

 賢治はうれしくなって「銀河鉄道の夜……ってタイトルです」

「赤い鳥がおらの詩集本の広告を出してくれまして…」

 校長は「世間は宮沢賢治のすごさがわかってない。広告だけなんて! 世間はどんどんと宮沢先生の作品を本にするべきなんです」

 といって御飯を食べた。

 藤原も「そうですよ、宮沢先生。宮沢先生には才能がある! 絶対にあります」

 と興奮気味だ。

 しかし、当の賢治は恐縮している。

「いやぁ……才能なんておらにはとてもとても…」

「いやいや、宮沢先生には才能があります」

「そうですよ、天才ですよ、天才!」

 賢治は笑って「やめでください、ふたりとも!」という。

 しかし、ある日、賢治は本屋の前を通りかかって、愕然とした。

 賢治の詩集本が埃をかぶって山積みされているのだ。

 本屋は「本も売れなきゃ只の紙束だべな」という。

 もちろん、賢治が著者であることなど知らない。

 賢治は愕然とするしかなかった。

 ……本も売れなきゃただの紙束だ。


「三百円?!」

 父・政次郎は驚いていった。

 母・いちは、「なんでも売れない本を買い取るとかで…」と申し訳なさそうにいった。「出版社のひとたちに悪いって………賢さん悩んでるんです」

「あげな本、売れないのは最初からわがっでだごどでねが…」

 父は訝しげだ。

「賢治は現実の厳しさを知らね! いつも夢みてぇなこといって…」

 すると、当の賢治は茫然と新芽の植木をもったまま、幽霊のように庭を歩いているのがみえた。明らかに、悩んでいた。

 ……本が売れね。出版社のひとたちに悪いごどしだ。

「賢治!」

 父は厳しい顔のまま、賢治を呼び止めた。

 賢治は茫然自失のままだ。

「その木を根付かせることが出来たら……三百円だしてやってもいいぞ。そして、これまでの借金もただにしてやる!」

 賢治の顔に血の気がもどってきた。

「わかりました! 父さん!」

 賢治は駆けだした。

「おとうさん、賢さんはあの木を根付かせ花を咲かせることできますけ。農業高校の教師だすけ」

「……そげなことわがっでる!」

「じゃあ……おとうさん…」

「あいつは夢ばかりみている。夢から覚めるまで待つしかねぇ……」

 父はいい、そしてハッとしてから、

「やめた! 店は清六に継がせる! あいつの夢につきあってられない!」と強くいった。  賢治は木を植えた。

 校長が人事移動でかわった。

「私は前の校長のようにはいきませんぞ、宮沢先生」

 校長は厳しいひとだった。

 賢治は友達とうなぎを食べて話した。

「保坂が農園やるらしい」

「……そうが、保坂さんが」

 賢治はさっそく保坂の農園へといった。

 ひさしぶりの再会だった。保坂嘉内は農業服に麦わら帽子で、にこにこと笑いながら、「賢さん、学生の頃いった『農業革命』という訳にはいかんが、俺もとうとう農家になった。天職だと思っている」といった。

 賢治も微笑んで、

「いがったな、保坂さん」と頷いた。

「賢さんはどうだい? 詩や童話のほうは? あいかわらず書いてるのかい?」

「ああ、書いてる。妹のトシと約束したんだ。指がちぎれるまで書くって…」

「……そうか」

 ふたりは青空を見上げた。

「あなた!」

 保坂嘉内の妻が、遠くで呼んでいる。

「ここが保坂さんのユートピアだじゃぃ」

「そうともここが俺のユートピアだ!」

 保坂は笑い、「なんだ? すぐいく」といって妻のところへいった。

「よがっだ、よがっだ」

 賢治は自分のことのように喜んだ。

「よがった。保坂さん、ユートピアだじゃぃ」



「町会議員? 私がですか?」

 賢治の父は立候補しないか? と男に勧められていた。

 ……金を少しだして、あとは御輿にのってれば当選する…

 という。

「……しかし…」

 政次郎は渋った。

「なんも心配ねぇべさ。店は東京から戻ってくる清六くんが継ぐんだべ?」

「んだども…」

「長男の賢治くんだって別の家で自活してるっていうでねが。問題ないっべ?」

「……はぁ」

 政次郎は心配だった。

 賢治のやつを見てやれるのはおれしかいね。議員だなんで…とんでもね。

「心配いらね。金を少しだして、あとは御輿にのってれば当選すっぺさ」

「……わかりました!」

 賢治の父はやっと承諾した。

 そんなとき、清六が東京から帰ってきた。

「おお! 清六元気だったが?」

「はい!」

 清六は笑顔で答えた。

「ラジオもってきました」

「…そうか」

「兄(えな)さんは?」

「またあの家にいる。ラジオなら賢治にもっていってやれ」

 父は答えた。

 ……あの家とは、トシが生前病床に伏していた例の家だ。

 清六はすぐにラジオをもって出向いた。

 看板には、

 ……”下の畑におります   賢治”……

 と、書いてある。

         6 イーハトーヴ







 ……”下の畑におります。賢治”…

 掲示版に白チョークでそう書いてある。

「兄(えな)さん!」

 宮沢清六青年は、兄の賢治の家にいった。

 賢治は満面の笑顔を見せて、

「おお! 清六!」といった。

「兄(えな)さん、畑仕事ですけ?」

「そうとも、おらは百姓になる!」

 賢治は笑った。

「東京はどうだった? 清六」

「なんも。それより、兄(えな)さん。畑仕事なんかして大丈夫ですけ?」

「なんが?」

 賢治は畑に桶で水をかけていた。

「兄(えな)さん、体弱いですけ……」

 清六がいうと、賢治は微笑んで、

「おらは大丈夫だ。畑仕事ぐらいはできるですけ」

 という。

「それよりお茶でもどうだ? あ! 茶っ葉きれてんだ。水でいいが?」

 清六は賢治の家に入ると、ヴィオラをみつけた。

「兄(えな)さん、ヴィオラ弾くのですけ?」

 賢治は照れくさそうに笑って、

「ああ! 今習ってるところだ。東京にちょくちょくいって習ってる」

「……本当ですがか? 学校やめたって…」

「ああ、おらは百姓がいいんだ。芸術と農業で、岩手を東北を、イーハトーヴにするんだ」 清六は不思議そうな顔をして、

「イーハトーヴ? なんですけ? それ?」

「いやぁ」

 賢治は照れくさそうに「”桃源郷”……ユートピアですけ」

「ユートピア? 兄(えな)さんがつくるですけ?」

「いやあ。……みんなでつくるんだ。ひとりじゃでぎね」

「……みんなで?」

「おらはやらねばならねごどがいっぱいある。いっぱいあるんだ……」

 賢治は、そのあまりにも早い死を予感していたかのように言った。


  賢治は自宅で農業指導を何度も行った。

 家には近所の農家のひとたちがあつまって椅子に座っている。

「植物というのは土の状態で、死んだり生きたりするのっす……ですから…」

 賢治は朴訥に授業をする。

 金はとらない。

 ボランティアみたいなものである。

 さらに賢治は音楽にも興味をもち、藤原たちとともに『花巻カルテット』をつくった。夜、外でカルテットは演奏する。

「はい。そこまで」

 音楽教師がいう。

 演奏はおわった。

「だいぶうまくなってきましたね。ただ……ひとりだけセロにふりまわされているひとがいましたが…」

 それは賢治のことだった。

 賢治は苦笑し、「いやぁ」と照れくさそうにいがぐり頭をかいた。

 ひとりになってから、賢治は原稿に向かった。

 ……”セロを弾くのはあまり上手ではありませんでした”…『セロ弾きゴーシュ』

 また賢治は、寺の前でも机をもってきて、ボランティアで農業指導をするのだった。

 農家が列をつくる。

「田んぼの数は?」

「一反くらいでねが」

「赤地の土は石灰はだめです。こっぷんをやったほうがいいです…」

 賢治は故郷をユートピア…イーハトーヴにする夢でいっぱいだった。


  ある日、母・いちと末妹のくにがやってきた。

「なんですか? 母さん?」

「これ…」

 母は弁当を机のうえにおいた。

「賢さんに食べてもらおうと思って……ロクなもの食べてないんでしょ?」

「おら、いらね。自活するだ」

 賢治はそっけなく畑に向かった。

 袴姿のくには「お母さんが朝から一生懸命つくったのに……兄(えな)さんの馬鹿!」といった。もうずいぶんと大きな少女になっていた。

 怒った顔も可愛い。

 賢治には夢が多すぎた。夢みる課題が多すぎた。弁当どころではなかったのである。


  賢治の父・政次郎が町会議員に当選した。

 賢治の実家では祝いの宴がひらかれた。

「おめでとうございます! 政次郎さん!」

「ありがとうごぜいます!」

 政次郎は次々と酌をつぐ。

 するとひとりの酔っぱらいが、

「店は息子の清六くんがつぐっていうし、安泰だべさ。あとは、あの賢治くんだべ。賢治くんは頭はいいがも知れんげど……南無妙法蓮…と作家きどりだ」

「……賢治がおめえに何をした?!」

 政次郎は激昴した。

「おとうさん!」妻・いちがとめようとした。

「………賢治がおめえに何をした?! たしかに賢治は夢みてぇなことばっかり考えてる。だげんど、おれが首ねっこおさえているうちは大丈夫だ! 心配してもらわなくてけっこうだ!」

 場がしらけた。しかし、父は賢治を見捨ててはいなかった。

  賢治は、そうとも知らず近所の子供たちと遊ぶのだった。


  この年、日露戦争や第一次世界大戦、世界大恐慌がおこっていた。

 戦争特需は東京や大阪などの首都圏だけで、東北まではおこらない。農家は凶作できびしい生活を強いられた。

      

 賢治は四年四ケ月、教師をつづけ、やめてからは羅須地人(らすちじん)教会をつくった。

 農業団体である。

 農家は地主により、搾取による搾取を受けていた。

 賢治はその状況を打開したいと思ったのである。


  その春、賢治は花の収穫におわれていた。

 近所の子供たちに高価な花束をただでやってしまう。

 ちょうど日傘をもった森良子が、白いシャツとスカート姿でみていた。

「よろしいんですか? あの花は高い値段で売れるんですよ」

「いいんです。子供たちがよろこんでくれたら。おら…何も…」

 良子は賢治に興味をもった。

「あなたさまは宮沢賢治先生ですよね? 私、良子といいます。詩集も全部読みました。ファンなんです」

 賢治は照れくさそうに頭をかき「いやぁ」といった。

「……何か私に手伝わせてください! 先生!」

「なんも。先生はやめでげろ」

 賢治はタジタジになって逃げようと足を早めた。

「先生?! 宮沢先生!」

  ある日など、彼女は屋外で演奏練習する賢治たちのカルテットのためにカレーをつくった。しかし、賢治は、

「誰がこんなごどしてほしいって頼みましだ? おらは食べません!」

 と拒絶する。

 女は美人なほうだ。

「私は少しでも先生のお役にたちたいと……」

「よげいなごどはしねでけれ!」

 賢治は逃げ出そうと外にでた。

「人間はひとりでは生きていけませんよ……先生!」

 良子がおいかける。

 賢治は「私はひとりではありません」という。

「……どなたか好きな方が?」

「いえ、頭の中に……」

「頭の中……?」

「……すいません!」

 賢治は去った。

 それっきり、その美貌の女性はこなくなった。



「そりゃあ惜しいことしだですよ、宮沢先生!」

 田舎のレストランで、藤原嘉藤治はその話をきいていった。

「……そのひとと結婚もできたかも知れないのに…」

 賢治は「結婚?」と尋ねた。

「そうですよ。いつまでも独身じゃあ、だめですけ」

「じゃあ、藤原さんは結婚は?」

「私は……そのぉ…まだ」

「じゃあ」

賢治は悪戯っ子のように笑って、

「あのウェートレスの女性に結婚してくれといったら結婚しますか?」ときいた。

「……え?」

 ウェートレスの女性に目をやると、けっこう可愛かった。「そりゃあ…」

 藤原嘉藤治はタジタジになった。

 すると賢治はすぐに椅子から飛び起き、ウェートレスの女性に近付いて、

「すいません! あんたと結婚したいって男がいます! この男です!」

 と藤原を指差す。

「……み……宮沢先生!」

 藤原は顔を紅潮させた。

 ウェートレスの女性は「……いいですよ」と恥ずかしくいう。

 賢治のほうが唖然とした。

 こうして、藤原嘉藤治とウェートレスは結婚した。

  結婚式は賢治の家の前で行われた。

「それでは幹事の宮沢賢治さんです」

 紋付き袴姿の賢治は照れながら前にすすむ。

「よっ! 宮沢先生!」

 賢治は、

「え~つ、この度、藤原嘉藤治くんと紀子さんが……え~と…」

 といったあと、にこりとわらって、

「あんまりひやかすから……何いうが忘れでしまっだじゃぃ」といった。

 一同から笑いがおこった。

「まぁ、めでたいってことだのっす!」


  台風がきた。

 ものすごい強い風と雨が畑や田を襲う。

「おらの畑が…」

 賢治は暴風雨に濡れなから駆けた。ものすごい災害で、田も畑も全滅する。

 立っていられないくらいの暴風雨だ。

「どうしてくれるだ?!」

 農家の男たちが清六たちの質屋にやってくる。

「台風のせいで、兄(えな)さんのせいではなかべ!」

 清六は窓をしめきった。ガタガタと風で雨戸まで揺れる。

 賢治の畑もメチャクチャになった。

 かれは茫然と、壊れた窓のところにいた。

「兄(えな)さ~ん! 兄(えな)さん、しっがりしろ!」

 弟の清六がやってきたが、賢治はショックのためか茫然と座っていた。ぶるぶると震えていた。「兄(えな)さん! 兄(えな)さん! 死んじまう!」

 翌日、台風が過ぎ去ると、台風一家で、晴れた。

「病院にいこう……兄(えな)さん」

 弟の清六が賢治の家にきていった。

「清六……すこしひとりにしでげろ」

 賢治はメチャクチャになった畑で茫然とした。

 家の窓や屋根も壊れ、とても住めるところではない。

 賢治は茫然と、物思いに耽っていた。

 ………こりゃ大変なことになったべ……

 絶望的な気持ちに、賢治はなった。農業はおわりにするしがねえのっす。

         7 雨ニモマケズ







  冒頭の通り、その後、賢治はしばらく寝込んでいた。

 そして、よくなってから東北採石工業の技師として就職した。

「いやぁ、宮沢先生のおかげで肥料がよく売れます」

 社長は現場でいった。

 岩盤をダイナマイトで吹っ飛ばす……ドオォォオーン!

「石工肥料は東北の土を変えます」

 賢治は咳こんだ。

 最近は咳がやまなかった。

 しかし、賢治は「これから東京、秋田、山形にいってきます」という。

 汽車に揺られながら、賢治はセールスに歩く。

「肥料?」

「そうです。石工肥料です! 問題なのは土なのっす。肥料をやれば枯れた固い土もやわらかくなって……農業はかわるのっす」

 賢治は命を縮めるようにセールスに励んだ。

 夜、汽車で原稿の入ったトランクを抱えて座っている賢治に、少女が、

「……おじさん。その中に何がはいっているの?」ときいた。

 賢治は咳込みながら、

「………夢だよ」と答えた。

 その深夜、宿泊先で、とうとう賢治は喀血(口から血を吐くこと)してしまった。

 賢治は遺言を書いた。


         父上様 母上様


  この一生の間どこのどんな子供も受けないような厚いご恩をいただきながら、いつも我慢でお心に背きとうとうこんなことになりました。今生で万分一もついにお返しできませんでしたご恩はきっと次の生またその次の生でご報じいたしたいとそれのみを念願いたします。

  どうか信仰というのではなくてもお題目で私をお呼びだしください。そのお題目で絶えずおわび申しあげお答えいたします。

 遺言は賢治が死んでから、『雨ニモマケズ』と一緒にトランクのふたのうらから出てきたという。

 賢治はほんとうは家に帰らず東京で死ぬつもりだったのだが、あまりにも故郷が懐かしく、電話をかけたのだった。

 出たのは父だった。

「私ももう駄目だと思います」

「……賢治すぐここに戻って来い! いいな? 賢治!」

 賢治は知人の伝手で寝台車で岩手の花巻についた。清六が迎えにいくと、蒼白な顔でそれでもネクタイをしめて、かなりの重体なのに平気なふりをして汽車から降りてきたという。「兄(えな)さん!」

 賢治はすぐ病床に伏した。

 そんな中で、賢治は『風の又三郎』や『銀河鉄道の夜』『セロ弾きゴーシュ』の推敲にあたっていたという。

 いよいよ臨終というとき、賢治は病床から起き上がって正座した。

 父は「何かいうことはないか?」ときく。

「いや、私の詩や童話は人生の迷いのあらわれでもありました。処分してもらってもかまいません」

「お前もなかなか偉い」

 父はいう。

 すると賢治はにこりとして、頭をかき、

「いやぁ…」といった。

「なんだ?」

「おれもとうとうおとさんにほめられた」賢治はうれしそうにいった。

 そして、それから寝込み、やがて息をひきとった。

 そのときはちょうど一時三十分だったという。

 昭和八年一月二十日……宮沢賢治、没。


「わたしのようなものはもっと現れます。自分はひとり島に残りました。その時イーハトーヴは…」

保坂嘉内は農村の晴れの日、外で賢治の本を愛娘にきかせていた。

「イーハトーヴはどうなったの?」

「夢のような美しい国になります」

 保坂嘉内は一生を農業改良運動にそそぎ、賢治の死後三年半で、胃癌で没した。

  宮沢清六と藤原嘉藤治は賢治の家から未発表の原稿を探し集め、全集の刊行に全力をそそいだ。その後、藤原嘉藤治は賢治のあとを継ぐように農村に飛び込み、晩年、岩手県農政功労者として表彰された。

 雨ニモマケズ

 風ニモマケズ

 雪ニモ夏ノ暑サニモマケズ

 丈夫ナカラダヲモチ

 欲ハナク

 決シテイカラズ

 イツモシズカニワラッテイル

 一日ニ玄米四合ト

 味噌ト少シノ野菜ヲタベ

 アラユルコトヲ

 ジブンノカンジョウヲ入レズ

 ヨクミキキシワカリ

 ソシテワスレズ

 野原ノ松ノ林ノ陰ノ

    かや        

 小サナ萱ブキノ小屋ニイテ

 東ニ病気ノコドモガアレバ

 行ッテ看病シテヤリ

 西ニツカレタ母アレバ

 行ッテソノ稲ノ束ヲ負イ

 南ニ死ニソウナヒトアレバ

 行ッテコワガラナクテモイイトイイ

 北ニケンカヤソショウガアレバ

 ツマラナイカラヤメロトイイ

 ヒトリノトキハナミダヲナガシ

 サムサノナツハオロオロアルキ

 ミンナニデクノボートヨバレ

 ホメラレモセズ

 クニモサレズ

 ソウイウモノニ

 ワタシハナリタイ


 ……『雨ニモマケズ』……                宮沢賢治 おわり   




「参考文献」

なお、この作品の参考文献は、「この人を見よ!歴史をつくった人とびと 宮澤賢治」(ポプラ社)、「宮澤賢治イーハトーブへの切符」松田司郎著作(TBSブリタニカ)、「雨ニモマケズ」宮澤賢治(朝日新聞)、田辺秀樹著作、司馬遼太郎著作、堺屋太一著作、童門冬二著作、、映像資料映画「アマデウス」、あまたのモーツアルト著作本、「そのとき歴史が動いた」「歴史ヒストリア」、小学館SAPIO誌などです。「文章が似ている」=「盗作」ではありません。盗作、無断転載ではなく「引用」です。


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小説雨ニモ負ケズ 宮沢賢治~わが心のイーハトーブ~ 長尾景虎 @garyou999

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