今までに書いた漢詩寄せ集め

津田薪太郎

第1話 府内城を偲んで題す

白壁長不果 巡堀深不見

楼其如天守 大門険虎牢


昔日見古城 今日行再眺

天下第一城 唯夢残露台


朝堂狭莫人 門低手触頂

壁皸人不顧 堀水濁不流


燕来南営眼 飛乗国府風

昏陽没瓦中 共眠夜中和


白壁は長くして果てず 巡らす堀は深くして見えず

楼は其れ天守の如くして 大門は虎牢よりも険し


昔日に古城を見て 今日行きて再び眺む

天下第一の城は 唯夢が露台に残るのみ


朝堂狭くして人莫く 門低くして手は頂きに触れる壁皸へきはくんにして人顧みず 堀の水は濁りて流れず


燕南より来たりて眼に営し 国府の風に乗りて飛ぶ

昏陽瓦中に没し 共に夜中の和に眠る


白い城壁はどこまでも伸びて果て無く、巡る水堀の底は深くて見えない


櫓は天守の如く聳えて、大手門は虎牢関の城門よりも堅固だ


昔この古城を見て、今日また行って眺めたが

(昔見た)天下第一の城には、唯だ夢が空っぽの天守台に残っているだけだった


本丸は狭く中に人はおらず、門は低くなってその頂点に手が触れてしまう

壁はひび割れて、それでも顧みられる事はない


南から来た燕が(城壁の)銃眼に巣を作り、彼らは県庁や市役所の間を吹き抜ける風に乗って飛ぶ


黄昏の陽は瓦の内に沈んで、(城は)燕共々夜の中の平和に眠る

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