第14話
みんなでおいしいチーズフォンデュを食べたあと、そのまま村で一泊させてもらうことになった。一棟貸しのコテージのようなところで、みんなが集まれるリビングルームがあって、そこから寝室が何部屋か。ザイラードさんは私に一番大きな寝室を譲ってくれ、違う部屋で寝ることになった。
そして――
「星がきれいですねぇ……」
「そうだな。騎士団で見る夜空とはすこし違うな」
――満点の星空!
コテージのテラスにはカウチソファが二脚置かれていて、そこにザイラードさんと並んで寝転んで座る。
私の膝にはシルフェとコウコちゃんが二人で座り、頭の横にはレジェド。クドウはテラスの床にぐたっと寝転がっていた。みんなお腹いっぱいで、満足そうだ。
もう部屋で眠ってもいいんだけど、こうやってなんでもない時間を一緒に過ごせるのがとても幸せだなぁと思う。
「……人々はいつもこうやって暮らしていたのだな」
テラスの柵に登っている猫王子が突然ボソリと呟いた。
いつもの居丈高な空気はそこにはなく、琥珀色の目がぼんやりと空を見上げている。なんとなく尻尾がしょんぼりと垂れているようだ。
「生活を送るために労働をし、そこで得たもので自分や家族を養う。だが、その暮らしも災害などがあると続けられなくなる」
「……そうだ。必死で今日を生きていても、どしようもない理由で暮らしは厳しくなる。その人々の暮らしをどうしたら守れるのか。それが俺たちが考えるべきことだ」
猫王子の言葉にザイラードさんの落ち着いた声で返す。
陽が落ちて、爽やかな風が通る中に響く声はスッと胸に入ってきた。私はそういう視野を持つ立場にいたことはないが、王族であるザイラードさんは考えてきたことなのだろう。そして、本来ならば猫王子も考えねばならないこと。
「……森を整地したとき、人々は喜んでいたな」
「そうだな。森があの規模で破壊されると、片付けだけで大変な労力がかかる。それをしていると、普段の生活に負荷がかかり、疲弊する。それをトールが解決してくれたのだ」
「……そうか」
ザイラードさんのエメラルドグリーンの目と、猫王子の琥珀色の目が私を見つめる。ザイラードさんの目は星を反射してきらきらとして、猫王子の目もきらめいて見えて――
「ぐっ、う……っ」
――ん?
「うぐっぅ……」
「どうしたの? 大丈夫!?」
突然、猫王子が苦しみ始めました!
シルフェとコウコちゃんが私の膝からぴょんと降りてくれたので、急いで猫王子の元へ駆け寄る。……駆け寄ろうと思った。が、それよりも先に私をザイラードさんが制した。
「待ってくれ、なにか変だ」
「たしかに」
うん。そう。変。だって……。
「光ってますね」
「光ってるな」
「「「キラキラー!」」」
発光している。かわいいオレンジ色の猫が。そして――
「……これは」
――人間。懐かしきあの。
「そうか。ハハハッ! 私はついに人間に戻ったのか!」
高笑いをする、第一王子。人間ver。
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