本音の暴露

仕事が上手く運び出し、エネルギーが増したわたしは忙しく動きまわっていました。


その時、主人のことは全く目に入っておらず、心の外にいました。


そんな時、主人から電話がかかってきて、心に抱えてた想いを伝えられました。


「僕はいったい、何なんだ?

僕は元々俳優になりたいと思っていた。

でも家族が出来たから、どうなるかもわからない夢を追うよりも家族のために働き、それが幸せだと思って頑張ってきたけど、君は僕を一切見ていないし、ただの同居人だ。

こんなのは続けていけないし、僕の気持ちにもなってほしい。

僕も好きにさせてもらう。」

と言われました。


そこから、家に帰って来るのが今までより少なくなりました。

週に3日は外泊でした。



わたしは、主人の心の叫びを聞いて、本当に悪いことをした、と反省しました。

わたしが彼の立場に立ったのを想像すれば、やるせない気持ちにもなります。

それなら自分も自分のために生きようと思うでしょう。


でも、わたしは、経済的に大半を支えてきたし、家族旅行などはわたしがお金を出して行っていたので、家族が、成り立つのはわたしのおかげやん!という恩着せがましい思いも正直ありました。


だから、そんな態度も出ていたでしょう。

男性にとっては、特に耐えられなかったと思います。


元々、彼を好きになった時の気持ちを思い出してみました。


夢を持ってキラキラしていたし、正直で優しい人でした。


正直すぎて不器用だから、騙されやすく、そんなところを愛しいとさえ思っていました。


わたしは彼の良さをわかっていました。


だからこそ結婚することになったのに、その素晴らしい彼の本質をいつの間にか見ず、感謝を忘れていました。


長女という存在も彼なしにはなく、わたしに宝を授けてくれた人だし、長女の類い稀な色々なものを見る、見通す力は、彼からの血筋のものだと思っていたのに、そのことも忘れていました。


感謝するべきことがたくさんあることに気付きました。


でも正直、前のように彼を愛せない自分であることは否定出来なく、どうしていいかわからなくなっていました。


そんな時、異変が起きたのです。


長女の幼稚園の親子遠足に三人で行った帰り、

「夕食は今日は僕が腕によりをかけてご馳走するよ。大口の宴会が続くので、明日からまた会社に泊まって仕事をする。しばらく帰れないから」

と珍しく彼が提案しました。


何種類ものお料理を振舞ってくれて久しぶりにとても楽しい家族の晩餐でした。


娘も喜び、ニコニコとご機嫌さんでした。


その食事が、私たちが3人で過ごす最後の時間になったのです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る