04-08-05 梁八 武帝蕭衍 下

 侯景こうけいに包囲された武帝ぶていは使者をやって侯景と盟を結ぶとし、更には侯景に大丞相だいじょうしょうの地位を与える、と言い出した。侯景はそれを受け入れないまま五ヶ月間包囲、ついに台城だいじょうを陥落させた。


 侯景が武帝の元に赴けば、三公の地位につける、と武帝が言う。その姿は堂々としたものであった。またこうも言う。

「そなたも長らくの陣中働きを経ておろう、ここで肩の荷を下ろされるが良い」


 侯景は武帝をまともに見ることもできず、ただ冷や汗を垂れ流すがままとした。武帝の前より退いてのち、侯景は部下に対して言う。

「おれは常々馬上で敵と向かい合い、矢や石の飛び交う中にあっても恐れなぞ抱いたことがなかった。だがどうだ、蕭どのに見えれば、たちまち震え上がってしまった。まこと天威というものを、どうして犯せようと言うのか。あのお方とは二度と向かい合いたくないものだ」


 こうして武帝は侯景によって軟禁を受けた。その飲食についても大きく制限され、憂憤を抱えるうちに病を得た。しばしば蜜を求めたが認められず、二度ほど「ああ!」と叫び、ついには死亡した。在位四十八年、八十六歳であった。


 侯景の乱が起こるよりも以前、武帝には聡明な太子がいた。蕭統しょうとうといい、心優しく明察、父親によく仕え、倹約を貫く人物であったが、皇太子となった三十年後に死亡した。武帝は次の後継を嫡孫とせず、別の子を立てることにした。こうして武帝の死を受けて即位したのが蕭綱しょうこう、いわゆる簡文帝かんぶていである。

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