01-16-09 蒙求 下1

虞卿擔簦ぐきょうたんとう 蘇章負笈そしょうふきゅう

虞卿(史記)&蘇章(前漢)

 戦国趙の孝成王にまみえた虞卿はわらじに簦(長柄の傘のようなもの)のみをもった程度の格好だったが、ひとたび自説を説けば、たちまち孝成王に重んじられるのだった。

 蘇章は勉強のためであれば本の入った篭を背負い、どこまでも赴いたのだという。

 簦と笈は部首的にも、ともに竹によって作られた道具なのでしょうね。そういった道具に絡む知恵者ふたり、という感じだろう。


孫晨槀席そんしんこうせき 原憲桑樞げんけんそうしゅ

孫晨(三輔決録)&原憲(荘子)

 孫晨はムシロ編みで糊口を凌ぎながら学問に打ち込み、最終的には長安の役人として取り立てられたのだそうだ。

 原憲は孔子の高弟のひとり。粗末なあばら屋に住み、入り口の戸は桑の葉っぱを垂らすことで代用していた。この様子を貨殖に長けた子貢が嘆いたところ「先生の清貧の教えも守れないお前が何言ってんだ」とへこませた。

 貧乏暮らしを受け入れる賢人ふたり。

 

丁蘭刻木ていらんこくぼく 伯瑜泣杖はくゆきゅうじょう

丁蘭(孝子伝)&伯瑜(説苑)

 丁蘭は孝行者だった。母が亡くなると木に母の姿を彫り、それ母のごとく扱い、孝行をなす。あるとき妻が間違えてその像を焼いてしまったところ、彼女の髪の毛がごっそり抜け落ちてしまったのだという。

 伯瑜は悪いことをした。そして年老いた母に杖で打たれた。すると伯瑜は泣く。今までいくら杖で打たれても泣いたことがなかったというのに。母がその涙の理由を問う。するとこう答えた。「あなたにぶたれてもまるで痛くなかった。これまでは痛かったのに。ああ、お母様は老いてしまわれたのだ、と思った」。

 母子の突き抜けた想い。なんだこの変態スメルは。


龐儉鑿井ほうけんさくせい 陰方祀竈いんほうしそう

龐儉(風俗通)&陰子方(後漢)

 龐儉の父が消息不明になった! 住むところを追われた龐儉、母とともに田舎に引っ越すも、そこで井戸を掘ったら財宝にぶち当たり、大金持ちに。やがてひとりの老奴隷を買い入れたら、それは行方不明になっていたはずのおとんでした! ……えっ?

 陰子方は管仲の子孫であったという。よくかまどの神を祀っていたところ、かまどの神がその厚い祭祀に感じ入り、彼を立身させた。やがて三代後の子孫が、光武帝の皇后となる隠麗華だ。

 思いがけぬ行動が富貴に繋がる、という感じではあるけれど、龐儉のエピソードが理解不能すぎて……。


孔愉放龜こうゆほうき 張顥墮鵲ちょうこうたじゃく

孔愉(世説)&張顥(博物誌)

 孔愉と言えば東晋時代の、やや隠者っぽい暮らしをしていたひとである。彼が道ばたで捕らわれていた亀を購入、沢に解放してやると、亀は三度左向きに公愉を振り返ってから消えたのだそうだ。その後孔愉が役人に叙任されるにあたり、印璽に示される亀がなぜか左に向いていたという。

 梁で、雨のあとカササギのような鳥が飛んでいた。村人、石を投げて鳥を撃墜。すると落ちてきた鳥は何故か丸い石になった。このとき梁の長官であった張顥の元に石が持ち込まれると、張顥、ハンマーで石を割る。すると中から何故か金印が! なお張顥は後漢霊帝の時代に太尉にまで上りつめたという。

 動物と、印璽。しかし片方は救われており、片方は打ち落とされて、割りさえされている。この扱いの差……。

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