01-08-02 斉二 管仲・鮑叔

 後の世に宰相のお手本として知られるのが、この管仲かんちゅうだ。

 鮑叔ほうしゅくとともに商売を興し、分け前は大体管仲が多く受け取った。と言うのも管仲が貧乏だったからである。のちにその商売が大きく失敗。しかし鮑叔は管仲を責めなかった。ものにはタイミングがあることを知っていたからだ。また管仲が三度戦って、全部で逃げ落ちたのを見ても鮑叔は卑怯者とそしらなかった。管仲が老いた母を養わねばならぬ身の上と知っていたからだ。

 これらのことから管仲は「産んでくれたのは父母だが、俺のことをわかってくれているのは鮑叔だけだ」と言った。


 桓公かんこうに取り立てられた管仲は「仲父」と呼ばれ、全幅の信頼を得た。そして桓公の覇業を大いに助けた。しかし先にも書いた通り、その遺言は守られなかった。危篤の床にあって、管仲は言っている。


 易牙えきがは子を殺して君に与えた。

 開方かいほうは親を見捨て君に従った。

 竪刁じゅちょうは自分から金玉を切り取った。

 いずれも人情に欠ける振る舞いであり、こういったものを側に取り立てるのは危うい。


 そして、その言葉は現実となった。



蒙求もうぎゅう

管仲隨馬かんちゅうすいば 蒼舒稱象そうじょしょうしょう

 桓公の外国征伐に従軍したところ、帰り道に迷子になった。すると管仲が「老いた馬の知恵を頼るべきだ」と老馬を放った。そして老馬の後についていったところ、うまく帰り道にたどり着いた。

 蒼舒は三國志さんごくしの英傑曹操そうそうの最初の嫡子、曹沖そうちゅうのあざな。象の重さどう測ればええねんと言う話題が出たとき、船に乗せーや、そんでどんだけ沈んだかを測れば重さ割り出せるやろ、と答えた。

 動物にまつわるふたりの知者。ついでに言えば「この人がもっと長生きしていれば……」にもかかっていますわね。

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