01-07-02 晋七 三晋分立

 文公ぶんこうが死ぬと徐々に権勢は衰えた。「襄公じょうこう」「靈公れいこう」「成公せいこう」「景公けいこう」「厲公れいこう」を経て「悼公とうこう」の時代にやや盛り返すも、「平公へいこう」「昭公しょうこう」「頃公けいこう」と代を重ねるごとに晋の威光はどんどん下がっていく。


 代わりに勢力を増してきたのが「はん氏」「氏」「中行ちゅうぎょう氏」「ちょう氏」「氏」「かん氏」の六家である。

定公じょうこう」を経て「出公しゅつこう」に至ったとき、知・趙・魏・韓の四氏が范・中行の二氏を滅ぼしてその旧領を分け合った。出公は四氏に怒り、攻めようとしたが逆襲を受け逆に追放され、出先で死んだ。


哀公あいこう」が立つと、韓・趙・魏氏が、今度は知氏を滅ぼす。

幽公ゆうこう」が立ったとき、晋の領土と言えるのはもはや「こう」「曲沃きょくよう」の二都市のみであった。

烈公れつこう」の代となる前 403 年、しゅう威烈王いれつおうが韓・趙・魏氏を侯として認定。いわゆる三晋分立さんしんぶんりつである。前述の通り、多くの場合ここを戦国時代せんごくじだいの始まりとする。


 更に「孝公こうこう」を経て「静公せいこう」と代が移ると、「魏の武侯ぶこう」「韓の哀侯あいこう」「趙の敬侯けいこう」が結託し、静公を庶人に落とした。ここに晋は滅んだ。



蒙求もうぎゅう


靈輒扶輪れいちょうふりん 魏顆結草ぎかけつそう

 靈輒は晋の霊公の家臣である趙盾ちょうじゅんに命を救われたことがあった。やがて靈輒は霊公の衛兵となったのだが、その霊公が趙盾の命を狙う。馬車に乗って逃げようとする趙盾、しかし御者が殺されてしまう。すると靈輒は任務を擲ち、趙盾脱出のサポートをした。

 一方の魏顆ぎかもやはり春秋晋のひと。文公の配下である魏犨ぎしゅうに仕えていた。魏犨には側妾がいたが、二人の間に子がいない。魏犨は病を得ると側妾を魏顆にめあわせようとするのだが、病がひどくなると、今度は殉死させろ、と言い出す。結局魏犨の死後娶ることにした。「危篤の人間はろくでもないことを言うものだ」と言うことで。後日杜回とかいという男の反乱を食い止めようとしたとき、魏顆は草を結んでおき、杜回を転ばせようとした。策は的中、杜回は捕まり、処刑される。その後、魏顆の夢に杜回があらわれ、言う。「わしはそなたの妻の父だ。娘を救ってくれたので、このような形で報わせて貰った」と。

 過去の恩義を、思いもかけない形で返した二人のお話。


濟叔不癡せいしゅくふち 周兄無慧しゅうけいむけい

 西晋せいしんの名士、王済おうさいの伯父王湛おうたんは墓場の側に引きこもりっぱなしで愚か者と見なされていた。が、王済が気まぐれに話してみると凄まじい才人であったという。

 晋の悼公には兄がひとりいた。長幼の序から言えば兄が公位を継ぐべきであったのだが、麦と大豆の区別もつかないレベルの愚か者であったため、公位を継ぐことができなかった。

 愚かと思われていたものが賢く、賢くあるべきものが愚かであった、と言う組み合わせ。

 

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