第441話 羽生 善治

“長い時間考えた手がうまくいくケースは非常に少ない”



この言葉は流し見しただけでは、いけない言葉だ。


何故ならこの言葉には、将棋以外の事も含んでいる言葉だからだ。


私はそれに気づくのに5秒ほどかかった。


これは人生の面でも言える事だ。あまりに長い時間をかけても良い答えが


出るとは限らない。人生の中に生まれる安易な程度のものに時間をかけても


無駄に終わる。


あっさりと己の考えに対して認めることも時として、大事である。


彼は将棋の世界から人生もそうである事に、気づいたのだろうと思う。


何故なら、哲学的な言葉の意味だけで捉えては、それほど大切に思う言葉では無い。


しかし、哲学的見地から見ると、小さな悩み等に囚われず、問題が起きない程度の


悩みは持たないほうが、幸せであるとも言える。


将棋の世界では、彼の言葉を長考ちょうこうと言い更に長い時間をかける事を「大長考」と言う。


長く考えても、結局は最初に指そうとした答えと変わらない事があるものだと、


彼は人生も同じようなものだと言っている。


短い文章ではあるが、その中身は非常に大切なものが含まれている。

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