第368話 一寸先は闇
これは私の知り得る事から、人間の思想や動向、甘さ、時代錯誤などを熟慮した結果の話である。
昔、昭和の日本に起きたバブル時代、ひと昔前の中国の様に、世界から後ろ指を指された。
その理由は、世界中でのオークション等で日本人ばかりが落札していったからだ。
タクシーはワンメーターお断りが当たり前で、他にも飲みに行けば、カウンターに入り切れないほどバーの女性がいた。
以前も書いたが、トップを永遠に走る事は出来ないのだ。
それは何でもそうであり、例外は存在しない。
私の曾祖父の当時の資産を、現代に換算すれば、曾祖父の最期の言葉や祖父の言葉などから考えて、父親の話なども入れていくと、数兆円はあったようだ。
財閥解体後、家にある現金だけでも、一兆円あったと話していた。
私は幸運にも、四代目であるが故、衰退する世界を見て来た。それは会社を経営する叔父も、私の一族の歴史を知っているから、多額の現金を所有しているのだと思う。
相続税は現金一括が基本だ。全ての資産に対して、相続税を払うわけで、
当然、並みの金持ちなら、何かを売って現金を作るのが当たり前の世界なのだ。
家を売る人も少なくない。しかも期限内に支払わなければならない為、
土地などを売る場合、どうしても値は安く売る事になる。
会社を一代で、日本一に築き上げた叔父が、ケチだったのは、私の一族の歴史を
実際に見て来たからだと言える。しかし、社長になった子供もその他の子供たちも
その事実を知る者はいない。我々の世界で情報というものは、非常に危険なもので
更に年齢を重ねる事に、猜疑心も強くなり、友人と呼べる人間はいなくなる。
これは世界中の財閥クラスの人間には、よく起こる事である。
徐々に心が蝕まれていき、最後には病気になっても誰にも言わず、そのまま死ぬ
事も多い。それは何故そうなるかも、
私は幸運にも、そう言った世界で生きてきた。だから分かる。
私のように数奇な運命を歩んだ者の多くは、生きる意味を忘れてしまう。
今、深々と考えても、非常に残酷な世界でしかない。
そして私もその闇に一度堕ちた。堕ちた者にしか理解できない世界に堕ちた。
そして今、徐々に立ち直ってきているが、そのストレスは私の体を蝕んだ。
今も蝕み続けている。
実際に、私のように第四の視点から、人生を見るようになるような
事は起きない。私が油断をしなくなったのは、色々な理由はあるが、
一番はバブルや一族の衰退を、本家の長男であるが故に知る機会があったからだ。
現実的に私のように、知る者は少ない。
それは自分で道を選んだからだ。私の世界で99%の人間は親に逆らう事を
諦める。皆、抵抗はするが、疲れ果てて諦めてしまう。
こうして親の敷いたレールを歩んでいく。その為、親は常に上にいる事になり
親が死ぬまで、その構図が変わる事は無い。
親が死んだ頃には、逆らった自分を忘れていて、同じように子供を教育する。
だから時代錯誤をしている人間も多い。
お金はありすぎても、あまり良く無い。この言葉を書くといつも思い出す。
海外ドラマのメンタリストの主人公のジェーンの行動を。
カジノで稼いで、数千万はする宝石のネックレスを同僚の二人の女性にあげて、
男の同僚には一番高価な腕時計をあげる。
しかし女性たちは、着けてみるが貰えないと返す。
男たちは俺たちは貰うという。
ジェーンはその二つのネックレスを、募金ボックスに、ちょっと勿体なさそうに
するが、その箱に入れる。彼は仲間と事件を解決するようになる前は、
詐欺師のお金持ちだった。だからこそお金の危険さを知っているから
募金箱に入れた。海外ドラマのメンタリストは面白いが、
勘違いをして見てしまっているであろう、場面が多くある。
このシーンもそのひとつだが、お金は人をダメにする。
それを真に理解している人は、非常に少ない。
知る為には、辛い経験を経てようやく理解するものだが、
辛い経験を経ても分からない人のほうが圧倒的に多い。
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