24日目 月虹
虹の橋を渡る、という言葉をペットの死に際し使うらしい。とても優しい人が考えたのだろうな、と思う。虹より上のどこか、いつか子守歌で聞いたところ、オズの魔法使いの影響もあるのかしら。
「おじいちゃん、紙飛行機はどこまで飛んだかなあ」
あの山登りから数日経って、初めて私は鍵を相手に紙飛行機について話した。おじいちゃんは少しおどろいたように首(?)を傾げ、それからいつものように目を細めた。
「さあのう。随分と遠くまで飛んだように見えたが」
「お父さんが作った紙飛行機だから。お父さん、得意だったんだ」
私がそう答えると、鍵はさらにおどろいたように今度は目をぱっちり開いた。その様子がおかしくてかわいらしくて、私は笑う。
「几帳面な人だったから、折り目がぴったり合ってるの。私が小さい頃一緒によく飛ばして遊んでくれた。私が大きくなっても作ってたのはあれ、たぶんお父さん自身が好きだったんだね、紙飛行機」
私は母の不器用さを受け継いで、折り目はずれるし端も合わない。山折りと谷折りもあやふやだ。
「おぬしによく似たご両親だったのじゃろうな」
「ところどころが、ね」
電気を消してカーテンを開けると、月明かりが真鍮色の鍵を照らしおじいちゃんは威厳が増して見える。器用に窓枠に登ったおじいちゃんは、私の方は向かずに短く続けた。
「きっと、あの月明かりの向こうまで飛んだだろうなあ」
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