第20話 鑑定
総勢9人が俺の部屋にいるのだが……
これは狭い。
奥の部屋には俺とモモ、コレット、エレノア、マナが。
手前のダイニングキッチンではミルヴァンとメグ、端っこにモリーがおり、ムトーはコレットに負けたことに落ち込んでいる様子。
「あのー、なんでこいつらここにいやがるんですか?」
「さあな。俺が聞きたいぐらいだ」
別にいるのは構わない。
ただ狭い。
モモは隅の方でタブレットを操作しており気にしていないようだが……コレットが相当苛立っているようだ。
「一人だったら寂しいんだよね」
「余は一人じゃないが。しかし、蒼馬との距離を縮めるチャンスじゃ」
「頑張ってくださいませ、マナ様! 魔族のために頑張る姿……感動であります!」
「うおー! 特訓だ! 特訓するぞ!」
ダイニングキッチンの方ではミルヴァンが突然泣き出し、ムトーが何故が腹筋を始める。
なんだか一気に室温が上がったような気がするな……
「あのさ、蒼馬様はあんたたちについて行かないって言ってるのに、なんでそんなしつこいわけ? あんまりしつこいと……首と胴体が離れることなるぞ?」
「うっ……よ、余には使命があるのじゃ! 蒼馬を連れて帰らねば魔族が敗北してしまう」
「そう。だからボクも蒼馬を連れて帰らないといけないんだ」
コレットの脅しにも屈せず、マナとエレノアはハッキリとそう言う。
「確かに蒼馬様は世界の命運を左右させるほどの実力者だけどさ……でも蒼馬様よりマールバランドで適当な人間に頼んだ方が話早いと思うけど」
「んん? どういうこと?」
「分からないかな……」
肩を竦めこちらを見るコレット。
彼女が言わんとしていることは分る。
要するに、エレノアたちの世界のレベルが低いと言いたいのだろう。
二人の実力は……言っちゃ悪いが高くない。
あまり強さを感じられないのだ。
もしまだ力を隠し持っているなら話は別だが、それもなさそうだ。
「一応、調べておきますか?」
「ん? どっちでもいいぞ」
「では……」
コレットが大きく息を吸い込み――自身の目元に魔力を集中し出す。
「彼の者の力を我が前にさらけ出せ」
コレットが使用しようとしているのは魔術。
魔術を発動させるにはいくつかの手順が必要になってくる。
まずは体内にある魔力を操作し大気中に流れる魔力を操作し、
俺がいた世界では誰もがこの術式の手順を踏まなければ魔術を使用することはできなかった。
勿論、俺も例外ではない。
そしてもう一つ大事なこと、使用する能力は、最初に契約して手に入れた力と関連付けされるということ。
コレットは『目』の力を手に入れた。
ゆえに彼女が使用する能力は、全て目に関連付けされた物しか発動できない。
今コレットが使用している能力は――【
自身よりも能力の低い者。
あるいは自身より能力が高いが本人が認めた場合のみ、相手の能力値を鑑定できるというものだ。
コレットの目がうっすらと輝きを見せる。
どうやら能力の発動に成功したようだ。
「で、どんなものだ?」
「えー、マナの魔力は……990のようです」
「き、990?」
俺はコレットの鑑定結果に唖然としていた。
「限界は千なんだよね……だとしたらちょっと高すぎるよ、魔力が」
エレノアも数字を聞き驚いており、驚愕した目でマナを見ていた。
「さすがマナ様! 圧倒的な魔力の持ち主というのは分かっておりましたが、そこまでの力を有していたとは! 私、感動で涙が止まりません!」
「当然じゃ! だって余は魔王なんだもん! ははははは!」
部屋中大騒ぎして近所迷惑になるのではないだろうかと少々気になるが……
しかし周囲の反応とは逆に、俺とコレットはポカンとしていた。
「蒼馬様にも直接……って無理でしたね」
「ああ。そうだな」
コレットは『目』を合わせた対象に鑑定した結果を送ることが可能だ。
それと同じ要領でテレパシーも使用できるのだが……俺にだけはそれが出来ない。
俺の持つ能力が、それら全てを遮断してしまうのだ。
マナの能力全てを俺に知らせようとしたようだが、それができずに肩を落とすコレット。
「蒼馬様限定も無理だったんですよね……そういう
「仕方ないさ」
ワーワー騒いでいるマナたちを見て、コレットは苦笑いを浮かべる。
「でもこの人たち……おめでたい人たちですね」
「ははは。まぁいいじゃないか。そんな風に言ってやるなよ」
マナの実力に祭りごとのように騒ぎ続ける皆。
だがコレットは逆に、マナの能力は低いと考えている。
それは俺もなのだけれど……しかしそれを口にするのは無粋というものであろう。
「蒼馬様の魔力は、57000ですのにね」
「……皆には内緒にしておいてやってくれ」
「えー。今すぐにでも蒼馬様の素晴らしさを語りたいぐらいですのにー」
コレットの世界とマナたちの世界では、力の差が圧倒的にあるのだろう。
マナの世界においてはマナの魔力量は最強クラス。
だがコレットの世界ではある程度訓練をすれば到達する程度の力だ。
要するに、マールバランドで適当な戦士を連れて行っても、マナの世界では圧倒的な力の持ち主として君臨するわけだ。
その事実を伝えるのは酷すぎるだろう。
だって端的に彼女らが弱いと伝えるのと同意義なのだから。
「なはは。マナ様はポンコツだけど魔力だけは高いんだよね」
「うるさい! 魔力が高ければそれでよいのじゃ!」
俺はそんなに高くないんだけどな、なんて心に思いつつも、皆のやり取りを微笑ましく見つめるのであった。
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