ばけものといっしょ

1日目

　化けモノを拾った。

　広義で言われるような「化け物」ではなく、「化け続ける」生きものを拾った、化けモノを例えやすく言うならばスライム状でまるい姿をしていて、そこから忙しなく姿を変え続けては戻っている、猫耳らしきものを生やしたり一つ目になったり、足を生やして見せたり。こちらが反応する度に、なにやら窺うような視線を向けている……気がする。

　黒猫だと思ったのだ。昨夜、当たり前のように追加で積まれた仕事を処理し終えて、真っ暗闇の帰路を不機嫌に歩いていたらこれみよがしに置かれてあった段ボールを見つけて、その中から何かが蠢く気配があって。

　その後のことはよく覚えていない、朝目が覚めたら隣にまっくろの化けモノすやすや寝ていて、今に至る。

　今その化けモノは部屋の隅に縮こまるようにして震えている、ぽこぽこと、頭が変形していく。なんだかまるでこちらがこの先何をするのか理解していて、それを止めるように懇願しているみたいだ。

　繋げようとした電話先が留守番サービスに案内するのを聞いて、通話の電源を切った。すると途端にするすると近寄ってくる化けモノ。

　実態の知れない生き物だけど、今の震える姿を見ると然るべき場所に引き渡すのは躊躇われた。害をなすかもしれない、後悔するかもしれない。でも実験と称されて好き勝手される未来を想像するとそっちの方が後悔するような気がした。

「うちに、居る？」

　言葉がわかるのか、謎の生き物は喜びを表すようにぴょんぴょんと跳ねた。