第38話「後日談というか、今回のオチ」
後日談というか、今回のオチ。なんて日本で有名な書籍化アニメ化ドラマ化漫画化作家様がよく使っていた言葉を借りてしまったのだが、俺も俺で小説は好きでよく読んでいるのだからたまに使うことくらいは許してほしい。
というわけで、俺と六花は2時間以上に及ぶ片付けの後。帰路についていた。この前、挨拶に言った橘家の両親にも会って、せっかくなら二人とも家まで送っていくかい? なんて言われてしまったが六花の方が即答で「今日は一緒に帰るから、二人は先に帰ってていいよ」といったせいでせこせことすぐに帰ってしまった。
「ってもう……あの二人は気が早いんだからっ……わたしはそんなつもりないっつーの」
「ははは……」
まぁ、去り際に車に乗っているご両親二人に「ちゃんとゴム着けろよ~~」と一方的に言われたので薄暗い道を一緒に帰る六花はというとややご機嫌斜めである。
「はははって何よ……いっつも恥をかくのは私なのよ? 大体、この前一緒に合わせた時だって早とちりであんなことになったんだし、そろそろ理解してほしいわ」
鼻息荒げながらぷんすかと言う彼女。
あんなにも綺麗な花火に彩られて、祭りの静けさを感じながら帰ろうなんて言った本人がこうなっているのは少々計算していなかった。
「そこまで怒るなって……お父さん、悪い人じゃないじゃん」
「そう言う話じゃないじゃん! なんか、よしくんと二人でするのかって言われて余計こんがらがるからやめてほしいっていうか……当の本人に生々しい話をしてほしくなかっただけよ……」
「別に俺は気にしてないから、それなら気にしなくていい」
「私が気にするのっ! だいたい、普通に彼女の親があんな感じだったら嫌なんじゃないの?」
「……今更何も」
「っ‼‼ それ、手遅れってことじゃん!!」
呆れながら呟くと六花は大きな声で言う。まったく、夜中なんだからあまり叫ばないでほしいが俺も俺で中々責められなかった。
それに、彼女が言うように手遅れって言う意味ではなく俺的には楽しそうでよさそうだなって思ったから今更何言っているのか――って思っただけだ。
「……別にそこまで考えなくても」
「私は考えるの! お、女の子って普通そんな感じだよ?」
「それは面倒だな」
「何それ、やめてよ。お兄ちゃんみたいなこと言うの」
実際そうだと思うし——ってあれ、六花今なんて言った? お兄ちゃんみたい? 橘家って一人っ子だったような……。
「お兄ちゃん?」
「え、あぁ、うん。お兄ちゃんだけど」
「六花って兄妹いたの?」
「別にいないとは言ってないけど……何?」
「知らんかった」
「あれ、私言ってなかったっけ?」
「いや、知らない知らない。普通に一人っ子だと思ってた」
「そんなわけ……って、何で勝手に一人っ子って決めつけてるのかしら?」
俺がへぇ……と不思議そうに言うと、隣を歩いていた六花が首をこちらに向けて怪しげな視線を向ける。再びのあの視線でギョッとした。
「——決めつけてるっていうか、なんとなく?」
「その判断基準を聞いてるのよ。どうしてそこで一人っ子だと思ったかを聞きたいの!!」
おっと、返答を間違えたみたいだ。
むぅ――と頬を膨らまし、睨みを利かせる六花。
まぁ、ここまで来たら誤魔化すのも悪い気がして俺は白状することにした。
「ちょっと、我がままだから?」
「——は」
「……あ、でもそれなら妹でも納得かな。我がままなら妹って言う線もあり得る」
「————っ今、なんて?」
気づいたときには口走っていて、その後家に着くまで口をきいてくれなかったのは後の話。
翌日、文化祭が休日を挟んで行われたこともあり、我が豊平栄高校は振替休日だった。
しかし、高校生というものもそう楽ではない。文化祭の後はすぐに前期期末テストがある。来月からは夏休みということもあり、ウハウハ気分で予定を立てれるわけでもない。
ということで、昨夜は口もきいてくれなかった六花にラインをして高校の自習室で勉強することになった。
約束の時間まで残り10分ときたところで俺は到着した。
時間もまだまだあり、高校も文化祭の片付けのために来ている先生方がちらほら。「勉強しに来てるのか、さすがだなぁ」と言われ、少しだけむず痒かったがまあ、俺はというと定期テストの学年順位を決して高くない。
勿論、学年一位の六花に教えを請いに来たのである。
「あはは……」
と適当に挨拶し、小走りで自習室へ。
自習室の前まで来ると、六花が腕を組みながら中にも入らず壁に背を向けて立っていた。
俺が来たことに気づくと、ポッと一言。
「遅かったわね」
「すまん、ちょっと先生に捕まって……っていうか集合は8分後だろ」
「私は5分待ったし」
「いや5分て――」
どうやら我らが生徒会長、橘六花さんはご機嫌斜めのままだったらしい。
「まぁ、いいけど。それと自習室にもう先客いるから、話しながらするなら他の場所じゃないと無理よ」
「え、あぁ……そっか。教室とかはどうなの?」
「教室はさっき言ったけどどこも文化祭の片付け最中であまり期待できないかも」
「そうか……他は?」
「全部だめかな。先生たちも巡回してるし、話ながらできる場所はないわね」
おい、まじか。それじゃあわざわざ家から遠いここの高校まで着た意味がないぞ。
「来た意味がないわね、これじゃ」
しかし、そう思っていたのは俺だけではなかったらしい。
「……同感だ」
「まぁ、仕方ないから切り替えてどこか違うところに行ってもいいけど……どうする?」
「そうするわ。うーん、あぁ、ほら、札駅の方のチカホに照らすみたいな場所あったから、あそこはどう?」
「てらす……あぁ、あそこか。まぁ、いいんじゃない?」
「それじゃ、行くか」
「えぇ」
そうして俺たち二人は月曜日の札幌の中心部。所謂、都会側へ歩みを進めたのだった。
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