第24話「メイド服1」
「そ、それでなんだが……次はどこに行きたい?」
ジェットコースターの呪縛から解かれた我らが生徒会長兼俺の彼女は歩く足を止めて振り返り、上目遣いでそう言った。
相変わらずのギャップ萌えに頬が落ちそうになるも、頭の中で息を整える。
「やっぱり、一組ずつ見ていくのは限界がある気がするからどうすればいいかなって」
「……まぁ、それもごもっともだな」
「うん。どこか、行きたいことはある?」
そう言う六花を横目に、俺は懐のポケットから豊栄祭のしおりを取り出し、裏側の地図を広げた。
六花にも見やすいように下に向けると、向かい側から覗き込むように地図に視線を落とした。
「——まず、一年生?」
「そうだね、俺は1の3のメイド喫茶とか行ってみたいかな」
「め、メイド……」
「いや、別に恥ずかしくていやだとかならいいんだけどさ……」
「恥ずかしいって、私は着ないぞ」
「え、着ないの?」
「……え、何? 何の話?」
「——いやぁ、彼氏である俺がメイド喫茶に行きたいとか言ったら嫉妬してメイドになりたいとか言ってくるのかと……」
「私を何だと思っているんだ?」
「教室でやっちゃうくらいのへんt——!?」
「っ——!!!!」
無言の一発ストレート。
俺のあばらの間にめり込み、逆流した空気が口からぽろっと零れ出る。
「……んっ、そ、そんな……」
「そ、そう言うことをなんでこんなところで言うのかしらね……」
真っ赤な頬。
まんざらでもない顔だ。
お腹の痛みに堪えながら、ふと頭をよぎったが最近のこういうツッコミを見ていると案外、六花も六花で露出されるの好きなのではないかと錯覚する。こういうことを言う度に赤くなってツンデレ一発スマッシュと定石を踏むところなんか本当にそうだ。
お腹を右手で抑え、半目で勘ぐる様に視線を向ける。
すると、当の本人はチラッと横目で一睨み。
「——何考えてるのか知らないけど、私に変な趣味はないからね」
おっと、どうやら顔に漏れていたらしい。
「あ……あぁ、はい」
「うん。わかったならいいけど」
縮み込み、委縮したように返事をすると彼女はそっけない返しで最後に一瞥した。
「——それで、メイド服は着ないけど、行きたいの?」
「え、いいの?」
「なんで急に目を輝かせてるのよ。真面目に着ないからね、この期に及んで期待しないでよ?」
「……ちぇ」
「もう一発殴られたい?」
「——嘘です。行きたいです」
強烈な睨みに俺はすぐさま背筋を伸ばし、ぶるぶると首を横に振った。そんな姿を見ると上機嫌になったのか、ニヤッと不気味な笑みを浮かべる。
「そ。じゃあ、行こうかしらね」
「はい――」
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