第23話「ジェットコースター2」

 真っ赤な頬で照れるように怒られた俺は安定のポーカーフェイスで萌えを隠しながら乗車した。


 乗ってみてから思ったが、案外怖い。机や台などを重ねて作ったであろう土台に木の板が敷かれていて、トンネルの暗さで先が見えないようになっている。


「……こ、これは……ちょっと怖いかもね」


 俺がそう言うと、俺の股の間で包まる様に体育座りをした我らが生徒会長。俺の言葉にむすっとした顔で振り向いて言い返す。


「そうね……」


「ど、どうしたの? 六花?」


「ん……別に、なんでもない」


 口先では確かに何でもなさそうで冷たいことこの上なかったが、しかし表情は違っていた。明らかに恥ずかしがっている。


 それにあんなにも偉大なはずの生徒会長が彼氏の、しかも俺なんかの太ももと膝の間ですっぽり収まっているのがあまりにも惨めだった。心なしか、周りの安全のために見守っている下級生たちもクスクスと笑みを浮かべている。


 俺は特に気にしていなかったが、六花的にも少し嫌だったのかもしれない。


 そこで、俺は意地悪にも聞いてみる。


「——俺の股の間、嫌だったかな?」


「——え、はっ?」


 気づかれてしまった……のか、もしくは驚いたのか、恥ずかしかったのか。よく分からない混在した気持ちを表すかのように口を開け、こちらに視線を送る。


 しかし、その瞬間。


「よしっ。じゅんびOKです! では、行ってらっしゃいませ!」


「え、あぁ……ちょっ!! まっ‼‼」


「あ——どんまい、六花会長」


 係の女の子が後ろから二人用のジェットコースターを一押し。


 まるで声をその場に置いていくようにして、急降下が始まった。


「っまあてええええええええええええええええええええええええええええええ‼‼‼‼‼」



 慌てふためく六花を包み込むようにして、曲がりくねった数十秒ほどのジェットコースターが始まったのだった。










 そして、廊下の仮設ベンチにて。



「……り、六花?」


「う、う、う―――――うえぇぇぇ」


 案の定というか、後の祭りと言うか……あまりにも今更なことだったが橘六花はジェットコースターが苦手だったらしい。


 おかげで、今は1年1組前のベンチにて、せっかく与えられた見回りの時間をついやしているのであった。


 顔色悪し、口調も悪し、表情も歪んでいる。

 まさに、この世の地獄のような顔で俺を睨みつけていた。


「……貴様ぁ……よくもぉ……」


「なんか、口調が変わってる気がするんだけど……」


「う、うるさいわぃ……わ、私は……じぇっとこーすたーなんてぇ……こ、kこ、こわくないっ⁉ う、うえぇぇ……」


「あぁ、もうっ……ほら、吐くならこっちにね……」


「う、うぅ……そ、そんなのいらな——うぅ」


 この期に及んで弱い所は見せつけまいと頑張る姿は感服ではあったがさすがに俺も心配せざる負えなかった。


 まったく、本当に生徒会長だから弱音は吐きたくなかった……なんて理由で乗るなんて中学生の男子かって話だ。この手の物は苦手なら苦手だと言わないと裏目に出るのは俺でも知っている。


「次からはしっかり苦手なんだって言わないと駄目だよ、ほんと」


「だ、大丈夫……だしっ……」


「プライド捨てなって」


「す、すててたまるものk——うっ……」


「あぁもう……たっく」


 こういう頑張っている様で無駄な場所だったり、しっかりしている様で抜けている所とか凄く好きではあるが将来が心配になる。


「ほら、ゆっくりね」


 俺の一言に苦しそうに頷くと、そのまま「うぅ」と呻き続ける彼女は俯いたままだった。





 数分ほどベンチで背中を擦ってあげながら待っていると、徐々に回復していき、ようやく立てるようになり――


「——よし、いけるっ」


 生まれたての小鹿のように震えている足に目がいったが彼女は「全然大丈夫だ」と言い張るとベンチから立ち上がった。


「ほ、ほんとに?」


「——」


「なんで無言」


「私がこうなったのは誰のせいだよ」


「え、もしかして俺なの?」


「他に誰が?」


「いや、もともと苦手って言ってくれれば……」


「うるさい、いいから黙ってついてこいや」


「え、えぇ……」


 どうやら、橘六花という生徒会長は統べて俺に押し付けて、カッコつけたいようだった。






<あとがき>


遅れてしまって申し訳ないです!! 

大学のレポートや宿題などなどで全く手を付けられていませんでした!! もう一つの作品の方も伸び悩んではいますが投稿していくので引き続き、応援してくださるとうれしいです!! よろしくお願いします!!

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