第12話「部室オナニー女子」


「部長、僕たち文芸部は当日は何しますか?」


「銃」


「え?」


「銃撃戦」


「……何?」


銃撃戦サバゲ―!!」


「……」


 文化祭まで残り1週間に迫った金曜日の今日。

 面倒な授業を終えて部室に行くと、すっかりいつもの調子を取り戻した変態な部長は元気よくそう言った。


「馬鹿なんですか?」


「馬鹿はどっちだ」


「あーーはいはい、そうやって期末テスト学年一位自慢とかいいですから~~」


「んっ……羨ましいのかぁ?」


「誰が……俺だってこれでも(下から数えて)10位ですっ‼‼」


「小声が聞こえたんだが……気のせいか?」


「あぁ、はい。気のせいです」


「ほぅ……まぁいい、その真意は今度聞くとして……とにかく文化祭の我が部の出し物はサバゲーだ!!」


 恥ずかしがったり、自慢をしたりと最近は少し情緒が不安定すぎる気がするがまぁ、こうやって楽しく言い合ってくれるだけいいのかもしれない。最近の部長は少し……どころかひどかったし、たまには。


 と言いたいところだったが、これはこれでウザい。


 またもやソファーの上で仁王立ちし、スカートの中が露わになりかけている。部長は全く気付いていないようだが、まぁ、あの角オナ事件Ⅱ含め俺には良いことしかないからいいとしよう。


「まぁ、百歩譲ってサバゲ―は良いとしましょう。ただ、どこでやるんですか?」


「ん、それはまぁ、この部屋だけど……」


「ここで、この大きさで出来るとでも?」


「……ケチ」


 何がケチだよ。


 こんな本棚ばかりの6畳間でどうやってサバゲ―なんてできるんだよ。だいたい、こんな部屋じゃライフルなんて打てやしないし、アサルトライフルでも抱えて眺めるくらいが限度だ。


 それを銃撃戦だなんて……できるわけがない。


「いや……ここが10畳で二階もあるとか、体育館とかなら分かりますよ? でも、部活棟の恥じゃあ……ねぇ」


 どっちもの意味でな。


「……んじゃぁ、私やらない」


「なんでそうなるんですか」


「面白くないし」


 俺が論理的に言うと、目の前に仁王立ちしていた部長はムスッと不貞腐れてぼそっと呟いた。


 おい、と——思うと同時にウザさを感じた。


 こいつ。


 やっぱり全く変わっていないじゃねえか。元の部長らしいと言えばそれまでだが——生憎と俺にも対策は持ち合わせている。何も知らずにムスッとしている彼女を見つめ、息をついた。


「……言いますよ?」


 真顔で言うと、部長は音速で顔をあげる。


「え?」


「俺の名前呼びながら、部室で一人で致していたこと……」


「んな⁉」


 目を見開いてこちらを凝視する彼女。流石に自分の危機に気づいたのか、慌てた表情でソファーを飛び降りた。


「ななな、なに、何言って——」


「へぇ……あれを、おもちゃを使いながらやっていたことバレたいのかぁ」


 さらに一発、追い打ちをかますと今度は頬を赤くした。

 

「お、おい……正気か?」


「正気も何も僕は本気ですよ?」


「げ、外道め!!」


「外道めって……学校の、しかも部室でオナニーしてる女子生徒の方がよっぽどじゃないですかね」


「う、うるさいわい!!」


「あ、誤魔化した」


「ごまかしてない!! そ、それにその変な言い方や、やめろ……」


「部室オナニー女子」


「そ、それは——っ言い方が余計な方向に言ってるんだけど!!」


「いやぁ……部長ももっと素直になってくれれば普通に言うんですけど……」


「っ……」


 下唇を噛み、頬を膨らませてそっぽを向くと——すぐに部長は首を頷かせた。


「ん……じゃ、じゃあ分かったよ‼‼ その代わり生徒会に行くぞ」


「え?」


「ちょっとホールを貸してもらえるか確認しに行くの」


「……まじですか」


「な、なによ。急に驚いて」


「いや……部長なのに真っ当なこと言っているなぁと」


「……私だって言うんだけど」


「そんなジト目をねぇ……部室オナニー女子が言っても」


「うつわよ」


「あぁ、はい。すみません」


 さすがに怒って壁のエアガンをリロードした部長の姿を見て、俺はしっかりと謝ることにした。


 

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