第13話「修羅場!?」
「それで……ボロボロだが、どうしたんだ二等兵?」
「部長がそれを言いますか……呆れます」
「なんのことだ?」
何を「なんのことだ」だ。散々振り回しておいて、結局生徒会室までいかせていろいろと調整してもらったのは俺だっていうのに。部長がどうしても生徒会長の橘さんには会いたくないから行ってきたんだ。まぁ、会いたかったって言うのもあるんだけど。
「……それで何ですがね、部長」
はぁ、と呆れ切った溜息をつき、俺は話題転換と資料をテーブルの上に乗っける。
「いろいろと見ないと決めれないって言うのと、俺たちの文芸部には一応ペナルティがついているので監視役が必要と言われましてね」
「監視役? そ、そんなの要らないぞ‼‼」
あんたが部室をまたもや汚くしたからだ。
殴りてぇくらいに腹が立つ、ほんとこの人は。
ただ、まぁ若干焦っている姿を見るのも悪くない。俺の作戦勝ちかもしれないな。
「え……おまっ、まさか!!」
「まさかって何かしたんですか、部長?」
「っ~~くそぉ……その笑み……貴様ぁ」
まるで戦闘アニメさながらの睨み合いだったが、駄々をこねる部長を制するのも部員である俺の仕事でもある。
ふぅと一呼吸挟み、俺は扉に手を掛けた。
「紹介ですよ、部長」
「いらんいらんいらん!! 部長命令だ!! こっからだせ‼‼‼‼」
「誰が……」
「————いらないですって?」
ズンッ。
と音がなったかのように開いた扉の向こう側から、彼女は長く細い足を踏み込んだ。
ふわりと気圧の差で溢れ出た突風でセーラー服のスカートが絶対領域を絶妙に隠すように上下に振幅を一回。
揺れる長髪、震える地面。
高鳴りどっぷりぷりんのような胸。
苛烈で可憐に登場したのは生徒会長、橘六花だった。
「んがっ——!?」
「ふぅ……お久しぶりね、貧乳部長」
「ぐぬぬ……うがぁ!!! このおっぱい!!」
おっと、どうやら俺も俺で二人が丸くなったし、ここは少し本気で話し合ってみるのもいいのかもなぁ……なんて呑気に考えていたのは浅はかだったかもしれない。
そんな風に思うほど、二人の前には強大なる火花が広がっていた。
「……はぁ。橘さん、頼むからいがみ合いはあとでやってくれ」
「ん……あ⁉ ごめんなさいっ、木田くん!!」
「いやいや、分かってくれるのなら大丈夫だから。一応、話し合いって形でよろしくお願いします」
「はいっ‼‼」
諭すとすぐに振り向いて嬉しそうに頷く彼女。
別に亭主関白とかではないが、従順でいてくれて安心だ。
「……私の前で何をいちゃいちゃしやがるんだ、二等兵…………」
——と、犬のように犬歯をむき出しに唸る部長を横目に俺は橘さんを丁寧にもてなした。
そこから話し合いが始まった。
こちらから、文芸部が文化祭案として出したのは部長の「
生徒会長こと橘さん曰く、この部活は教師の中でも一つ置かれている所があり少々融通が利かないとのこと。正直、さんざんばら文句を言ってくる部長のせいなのは確かだが、ここで俺が帳尻を合わせようとしない限り先には破滅しかない。
だからこそ、ここは一つ。無難に攻めようと思っていたのだが生憎とそう簡単にはいかない理由もある。そこで、一応だが部長の提案でもある
「……インパクトね」
二つの案を眺めながら橘さんはぼそりと呟いた。
「やっぱり、俺のじゃダメだったか」
「え、いやっ。別にね、木田くんのが悪いとか、そういうわけじゃないんだっ」
「ただ?」
「ただ……成果として残せる形には―—できないかなって」
「ほら、だから言ったろ! 私のやつの方がいいって!!」
隣であーだこーだと叫びうるさくする部長は置いておいて、確かに橘さんの言っていることも理解できる。
この部活には一目置かれていることに合わせて、ここ5年ほど大きな成果はない。特に、牧城舞花が部長になってから部員は俺と部長の二人。新入生である一年生も入ってこなかった。ここから先、絵った位に入ってこないとはいかないまでも少々きついものがある。
だからこそ、ここで一発インパクトを。
と言った考え方は間違いでもないし、そこで部長の案ってわけだ。
「……でもねぇ、だからといって牧城さん。あなたの案は少し無理がありますよ」
「む、無理? そんなわけ……大体、私の銃がそこらに飾られているし、その部分でのお金の心配はいらない! 加えて、弾は痛くないBB弾! そして私の実費だ。むしろ問題は一つもn——」
「あります。というか、そこが問題なんです」
勢いで一気に話そうとする部長を横から、まさにブローパンチの如く橘さんは割り込んだ。
「そこが?」
「そうです。一応、この学校は私立高校なので設備は全部生徒である皆さんが負担してくれています」
「まぁ、そうだな」
「ただ、文化祭は生徒たちが楽しむもので、いわば学校からのプレゼントの様なものなんです。そこで、毎年、各クラスの出し物には8万円。各部活には5万円。+予備費用で部活やクラスそれぞれに2万円が支給されています。なので文化祭の出し物自体はその範囲でやってもらうのが原則なんですよ」
「そんなの……毎年自腹でやっている場所だってあるんじゃ」
「あれは私たち生徒会が目をつぶっていますし、先生方もそれで楽しめるのならと黙認しています」
「なら、私たちだって」
当然だ。と言わんばかりに口を開く部長をまたしても橘さんは首を振って否定する。
「ただ、それはちゃんとやっているクラスと部活のみなんです」
「——っ。わ、私たちだってちゃんと……」
脇腹辺りにナイフを刺されたかのような声をあげて、苦し紛れに言い訳をする部長。
しかし、橘さんはきっぱり。
「やっていません」
「まぁ……そうだな」
「っ‼‼ そんなわけ……」
「だって、それは部長がしっかりやってくれればねぇ……それに当の本人に言い訳されるのは部員である俺が嫌ですよ?」
うぐぐ……と歯を鳴らし睨んでくるが生憎と俺は正しいことしか言っていない。
だいたい、この人がすべてやってくれていれば何もかもうまくいっているのだ。
「……」
「まぁ……別に私たちは一応黙認出来ますけど、先生方としてもサバゲ―はやってほしいとも思わないでしょうし。それに案としては画期的でスリルもあっていいですが、近所の中学校や小学校から子供たちが毎年たくさん来る学校側としては少し教育的にもしてほしくないって言うのが本音ですね」
さすがに、あまりにも正論な私的に部長は何も言えていなかった。
まぁ、俺も俺でサバゲ―は少し興味があったがそこを鑑みれば否定も出来ない。
「……でも、展示会じゃあ存続はできないですしね」
「当たり前だな」
「なんでそこで部長が出てくる」
散々自分の案を叩かれて静かになっていた部長は我が物顔のように手を組んでそう言った。
「……なかなか悩ましいところ」
「まぁ、残り一週間何で少なくとも明日までには決めてほしい所ではあるのでここは諦めるのも……」
と、若干下唇を加味ながら橘さんは提案する。
「まぁ……」
と言いかけた瞬間。俺の頭に一瞬、電撃の様な案が舞い降りた。
「——あ」
そう呟くと、二人は同時にこちらを見つめる。
「あぁ、いやっ。対象年齢7歳くらいのスポンジ弾のやつならいいのかなぁって」
思い出したのは昔、俺が買ってもらっていた2,3000円程度のおもちゃの銃。この部室に飾られているのよりは玩具感がある小学生でも遊べる銃ならできるかもしれないとそう思ったって言うわけだ。
「スポンジ弾?」
「ほら、当たっても痛くなくてあまり片付けもめんどくさくないやつですよ。部屋も小さくても飛距離が少ないので有りなのかなぁと」
そう言うと部長が「あ」と気づいた顔で頷いた。
「何か、あったんですか?」
おいてかれて「え?」と疑問を向ける橘さんに俺はゆっくりと説明を始めた。
続く。
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