ウィスキー
ジュン
第1話
バーにて
「ウィスキーの水割り」
黒崎はそう言った。
「俺はオンザロックで」
白田はそう言った。
白田は続けて言った。
「なあ、黒崎、お前いつも水割りだけど、オンザロックは嫌なのか?」
「オンザロックってさ、氷の溶け具合で、ウィスキーの希釈が違うだろう?」
黒崎はそう答えた。
「最初は濃くて、最後の方は水っぽくなっちゃう」
白田はそう言った。
「そう。不均衡だろう。それで、『ウィスキーの歴史』なり『時の流れ』なり『悠久』というものを感じたいという人もいる。それはそれで否定しない。ただ……」
「ただ、なんだよ?」
「俺は、ウィスキーから『時の超越』というものに、身を委ねたいんだ」
黒崎はそう言った。
そして静かにグラスを傾けた。
ウィスキー ジュン @mizukubo
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