第59話 足りない物
結局この日も一服する暇もないままひたすら動き続けて客が捌けたのは16時前だった。当然客数もめでたく更新し、既に40を超えている。昼過ぎのピーク時には駐車場にバイクがズラリと並んで中々壮観な景色となってたし、今日は日曜という事もあってかドライブ途中の子連れで車での来店客もあった。
駐車場の端に停めていたウチのリアルチョロQがすっかり見世物になっていたのは気にしないでおこう。
一番人気がホットドッグという事もあって何とかオーダーを回せたのはラッキー以外の何物でもないだろう。オムライスはお休みしようかな。ご飯もパスタも残りは僅かだ。コーヒーメーカーも炊飯ジャーも大活躍だな。
ああ、取り敢えずご飯炊いとかなきゃ。パスタも水に浸けときましょ。
しかしこのままじゃ続かないのは目に見えてる。人手も物資も早急に対策が必要です。でもこの状況が続くのかは誰も分からない。管理人と言っても所詮一時預かりの雇われ人である。どこまで手を付けていいものなのだろうか?一番足りないのは俺の経験値というのはスルーしてください。
玉ねぎの皮を剥きながらそんな事をぼんやりと考える。
何をやるにしても雇用主である三音里ちゃん母に確認するしかないな。その為には必要な事を纏めておいた方がいいだろう。小出しに何度も電話するのはこちらとしても申し訳ないからね。
夜の仕込みを終えたところでカウンターのスツールに腰を下ろして煙草を咥えてペンを片手に考える。店内はいつものボサノバが流れる静かな雰囲気が帰ってきました。
まずはディスペンサーが足りない。ケチャップとマスタードの容器ね。二組しかないからなあ。せめてテーブルの数+予備で五組くらいは欲しい所だ。粉チーズとタバスコも同様。オーダーの度に持っていくのは結構面倒です。テーブルに常設するならトレーも必要かな。まあこの辺は金額も高が知れてるから問題なさそう。
それとホットドッグの下に敷いている紙ナプキン。これだとどうしても食べる時にケチャップが零れちゃったりするんです。なら野球場で見るような袋状にしてみたらどうかと思った次第です。そうすればテイクアウトにも対応できそうでしょ?ホットドック目当てのお客さんがテイクアウトで対応できれば回転率も上がりそうじゃないですか。テイクアウトするならケチャップとマスタードの個別パックも必要か。パキュッと二つ折りにして使う奴の方が良さげだけど確か単価が倍くらい違ったような。
でもそうなると外で座って食べられるスペースが欲しいな。入口前の階段横にあるウッドデッキにテーブルでも置いてみるか。家の物置に古の折り畳みピクニックテーブルがあった気がする。細長いケース開くと椅子まで付いてる奴。ああ、セットのコーヒー用の紙コップも要るな。うむ、ちょっと大掛かりになってしまうから難しいか。
やっぱりコーヒーメーカーは必須だな。家でコーヒーメーカーを使ってるのは主に俺だから当面は持ち出しで対応するとしてももっとちゃんとしたものが欲しい所だ。何十万もするコーヒーマシンは無理だろうから少し高級で高機能な家庭用でも頼んでみよう。
一番の問題はやっぱり人手だな。フロアに一人いてくれるだけで全然楽になるはずだ。でもこれが一番難しい。多分、混むのは土日だけだろうから週末だけ、しかも昼の数時間だけなんて都合のいい人いるものだろうか。無理ならいっその事週末はホットドッグだけにメニュー絞るか。
まあこんなのは続くものでもないだろうからマスターが帰ってくるまでもうちょっと俺が頑張ればいいだけか。だけどマスターに引き継ぐ時に解消していなかったらそれも困る話だ。
ああ、俺がバイト続ければいいだけだった。
継続雇用ゲットだぜ!ってそれは違う気もする。
そんなこんなを三音里ちゃん母に電話で相談した。
結果としては
〇 テーブル周りのディスペンサー関連はこっちで揃えて良し。
〇 ホットドッグの袋も店内でも使えそうなので変更可。
〇 機材は三音里ちゃん母の知り合いのレンタル業者に相談。
〇 メニューは現場一任、出来る範囲で。
〇 本格的なテイクアウト対応はもう少し様子を見てから考える。
〇 外の飲食スペースも同様だがコストを掛けずに準備できる物はOK。
てな感じとなりました。
因みに肝心の人手は週末だけの見込みなら来週末は
「三音里がそこでキャンプするって言ってたわよ。なら手伝わせちゃいなさい」
だそうだ。立ってる者は親でも使えならぬ子供であっても遊ばせておくなて所か。
お母様、中々スパルタでいらっしゃる。
その事をメッセージアプリで本人に伝えると喜んでいるようだったので問題はなさそうだ。どうせここまで来るんだからガラガラでも文句は言わないでしょ。
そんな事に手を取られているとあっという間に19時を回って昼の賑わいが嘘かの様に来店客の気配もないので早々に店をクローズにした。
脚ってホントに棒になるんだとシミジミと実感した週末でした。立ち仕事大変。
マジ疲れた。
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