第17話 運転心得
そこから先は打合せ通り俺が
二人は少し左に寄りながら増えてきた車の流れに乗って順調に走る。
緊張している背中に思わず笑みがこぼれる。
しばらく走って信号で止まった時に横に並んで一言アドバイス。
「原チャリと違って車と同じスピードで走れるんだから堂々と車道の真ん中を走った方がいいよ。変に左に寄ってると勘違いして無茶な追い越しかけてくるアホなドライバーもいるからね。前後の車の動きにも注意した方がいいよ」
二人とも無言で頷いたから伝わっただろう。
困った事に世の中には何がしたいのか分からんが車がバイクより偉いと思ってるバカが結構いる。
偉いって何だよ。
タイヤの数が多けりゃそっちの方が優れてるとでも言うのか?
ならトレーラー追い越すんじゃねぇ。
そんな奴はヘラヘラとニヤケながら平気で幅寄せしてきたり目の前に切り込んできたりする。
後ろにバイクがいる事を分かっていながら煙草のポイ捨てする奴に言いたい。
『灰皿も買えないの?可哀相に』
バイクは車と比べれば明らかに安全性には劣っている。
全身は剥き出しだし、簡単に転ぶ。
こんな不安定な物は乗り物としては明らかに不完全なんだろうけど、そこを承知で楽しむ乗り物だと思う。
車では味わえない楽しさもあるんだからそこは比べる物じゃないだろう。
車には車の、バイクにはバイクの良さがある事を認め合って同じ道を走るべきなのに馬鹿者は全てにおいて車が優先だと変な選民意識に凝り固まってる。
まぁ、バイク乗りにも一定数の馬鹿はいるからあんまり言えないけどね。
排気量こそ正義だと言わんばかりにマウント取りにくる道の駅にいた奴らとかさ。
てかそいつらが車に乗るとバイクに嫌がらせしてる気さえする。
脳筋の体育会系部活みたいな物で自分たちが散々嫌な思いしたんだから後輩も同じ苦しみを味わうべきだと思っているし自分達にはそれを強いる権利があるとでも思っているんだろう。
嫌な事はそこで変えればいいだけなのに。
詰まるところバイクとか車とかじゃなくて人だって事なんだけどね。
たとえ悪意がなくとも危険な事は山ほどある。
ウィンカーも点けずに曲がったり車線変えたりは当たり前だし、意味不明の急ブレーキとか強引な右折とか一時停止無視の飛び出しとか。
プ〇ウスは見かけたら近づかないようにしてます。
いつ発射されるかわからんミサイルのそばなんか走りたい訳はないでしょ。
「事故起こしたいと思って運転してる奴はいないから安心して運転しろ」
昔、教習所の教官が路上教習の時にそんなこと言ってたけどそれは嘘だ。
確かに『起こしたい』とは思っていないかもしれないが『起こすはずがない』とは思ってる奴らが殆どだ。
だから注意が散漫になって事故が起きる。
もし俺が教官なら
「周りは全て敵と思え。常に殺しに来てると思って運転中は決して油断するな」
と教えたい。
だから俺は運転中は周りを一切信用しない。
『止まってくれるだろう』とか『避けてくれるだろう』とか一切期待しない。
それどころか『飛び出してくるかもしれない』だし『突っ込んでくるかもしれない』だ。
右折待ちで対向車がパッシングしたら譲ってくれたなんて思ったら事故一直線。
そのパッシングが自分に対してだと無条件に思う意味が分からない。
他の車に対してかもしれないし『出るなよ』の警告かもしれないし。
当然、横をすり抜けてくる自転車には見えてないし。
エスカレーターだって関東と関西で右に寄ったり左に寄ったり違うんだから『常識』なんてものはあって無いようなものでしょ。
自分は運転が巧いなんて決して思わないが、そんな俺から見ても『おいおい大丈夫かよ』と思ってしまう運転手は幾らでもいる。
バイクからは思ったより前の車の中が良く見える。
携帯弄ってるのも、よそ見して同乗者と話してるのも、ペットや子供に視線落としてるのも丸見え。
酷い奴はハンドルに雑誌置いて漫画読んでるからね。
ペット抱えて運転してるような奴は論外だろう。
『うちの
は?できれば事故は単独の自損事故でお願いします。
走ってるのに携帯弄ってる奴なんか掃いて捨てるほどいる。
あいつらは携帯弄ってないと死んじゃう病気なのか?
当然信号なんて見てないから赤信号も無視するし青信号になっても発進しない。
後続車のクラクションに慌てて周囲の安全確認もせずにアクセルを踏むかから安全なはずの交差点で事故を起こす。
そんな考えなら乗らなきゃいいかとも思うのだが、残念なことに乗らなきゃ生活が成り立たないし、車もバイクも好きなんだよ。
そのためにできるだけ自衛するしかないのは寂しい限りだ。
う〜ん、世知辛い世の中だ。
やっぱり交通量の少ない田舎道が一番だよね。
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