第18話 何かおかしい……異常だ
「な、何で気づいたの? ゼル君」
「言ったろ。勘だっつの」
高度を下げて接近してくる、
あのままブリーフィングルームにいたら、戦艦だけで相手してたぜ。正規軍の招集もまだっぽいから、下手すりゃ作戦以前に大問題が起こってたとこだ。
あー、あいつらをぶちのめす前に……連絡しとくか。
「こちらヴェルリート・グレーセア、進路上に
返事は待たず、すぐにブツ切って
と、その前に。
「そいつが専用銃かよ」
『うん。300
やけに
可変バレルっつーからには、回転して切り替わるんだろう。
「射程ギリギリまででいい。俺が切り込むから、支援頼むぜ」
『もちろん! それにしても、学生時代を思い出すね』
「そういや、そうだったな」
シルフィアとはよくバディになってたが、一番上手くハマったのは、俺が前衛でシルフィアが後衛――火力支援担当だったときだ。
ただでさえ全戦全勝だった俺が、このバディだとかなり調子よく感じられたんだよな。
もっとも、それは騎士学校での話だ。俺ぁ一度
さて、思い出に浸るのもここまでだ。
俺はヴェルリート・グレーセアの推力を最大にして、
俺が斬り込むより先に、
「いい腕してっぜ、シルフィア!」
その援護を受けて、俺は迫る
「数は多いが、所詮低高度の個体じゃあな!」
ゼロにどんだけ数字を掛けてもゼロなように、今いる
双天一真流のほんの初歩の動きだけで、半分以上がチリと化した。
と、形勢不利と見たか、
逃げる……何かおかしい。
『ゼル君、追わないの?』
「ああ。妙だ」
本能のみで生きるとされていた、
そいつらが“撤退”という行動を取ったことなんて、俺の知識の範囲じゃ知らねーぞ?
下手に追ったら、嫌な予感がする。
「あいつらが射程外に出るまで狙撃を続けろ。少しでも数を減らせ」
『了解!』
1発ごとに
それも距離が離れるごとに、頻度が落ちていくが。
『ゼル君、もう射程外に逃げられちゃった』
「上出来だ。帰還するぞ」
俺はシルフィアに着艦を促してから、自身もドミニアに着艦する。
「しっかしよぉ……」
今までには有り得ない。だが、今見たのは間違いなく――アレだ。
俺はアドレーアに話すべく、ヴェルリート・グレーセアから降りた。
***
「邪魔するぜ」
アドレーアとライラ、あとアドライアもいるドミニアの艦長室。
入るや否や、アドライアから飛び蹴りが来る。
「どういう了見ですの……!? いくらお姉様から自由行動を許されているとはいえ、無断出撃なんて……!」
「相変わらず縞パンかよ。あとな、その報告のために来たんだよ。あ、言っとくが詫びるつもりはねーぞ。つーか、人の命守るのに詫びる必要なんてあっかよ」
軽くかわしてから、俺はアドライアの蹴り上げた左脚を掴む。
別にパンツはどうでもいいんだが、しばらく恥ずかしがらせて序列を分からせておこうと思ったんだ。
「話を聞かせてもらいますわね」
と、アドレーアが「報告のために来た」という言葉に食いついた。
俺はアドライアの脚を掴んだまま、話し始める。
「妙な気配を感じたんで、アドライアからシルフィア中尉を借り受けて出撃したぜ。レーダー見てみたら、
俺の疑問を受けて、アドレーアがコクリと頷く。
「まさにおっしゃる通りですわ。高度1,000m未満では、レーダーは1,000m以上の存在を察知しないようになっておりますから」
「何だそのバカげた仕組みは?」
軍隊のシロウトでもおかしいと思う謎システムだ。
「一般的に、高度1,000m未満には襲ってこない。ご存じですわね、ゼルシオス様?」
「そういうことかよ」
襲ってこない敵を探知しても意味がねぇ、ってことか。
「理屈は分かったぜ。だがよ、もうそんなもんは通じねぇだろ」
「なぜでしょうか?」
「まずな、俺が男爵なんてもんに据え付けられる
高度1,000m未満での戦闘。
滅多にあり得ねぇとはいっても、無いワケじゃねぇ。つーか、立て続けに二回もだぞ? この世界の常識を疑いたくなってきたぜ。
「高度1,000未満は安全圏――なんて考え方は、もう古くなってきたのかもしれねぇな」
二回の戦闘で導き出した結論は、これだった。
俺はダメ押しとばかりに、
「そして、もう一つある。さっき襲ってきた
その言葉を聞いたアドレーアは、しばし黙り込んで。
「……どのような、行動でしょうか」
信じられないといった様子を隠すように、普段よりも低い声で言ってきた。
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