月のカルマ

食連星

第1話

あぁ…

あのまま,声をかけずに…


いたら良かったのだろうか…


ベンチに座る,

華奢なあの子は,

ボロボロだった.


「大丈夫?」

つい声をかけてしまった.


公園の街灯で分かるほど,

切り傷,腫れ,

所々衣服は泥んこ.


消え入りそうな声で,

「何処にも行くところがないんです…」

そう聞こえた.

中世的な見た目だけれど,

女の子だったようだ.


寒くなるのと同時に,

日暮れも早くなる.


何だか,

そのままに出来なかった.


「一緒に来る?」

声をかけると,

ヨロッと立ち上がり付いてきた.

「手を貸そうか?」

という言葉には首を振った.


時折,後ろを振り返りながら,

何があって,こんな事になったんだろう.

そう思った.

あちらさんはあちらさんで,

目が合うとニコッとした.

顔つき自体は綺麗な顔立ち…

だと思う.

腫れてるから冷やさないと.


名前…

とも思ったけれど,

この状況は,

他から見られたら,

あんまり良くない感じ.

女性同士だけれど,

職質とかされちゃうかも.


家路急いだほうが,

これ幸い.

ただ,あんまり速度上げると,

付いて来られなさそう…


猫ちゃんは,

よく拾っちゃうけど…

人は初めて.

後悔しなきゃいいけど.

今日は,保護猫を持って帰って無くて

良かったねなんて,

ぼんやり考えた.


「階段上れそう?」

築40年越えのアパート.

もう,ペット可でもいいよって

大家さんも言ってくれてる.

階段が抜けないか気になるけれど,

その辺はメンテ入っているでしょう.

抜けないっ大丈夫って気合で,

何とか毎日やりくりできてる.


結構,しっかりした足取りで,

手すりは掴みながら上ってくる.

大丈夫ね.


大家さんがいいよって言ってても,

やっぱり猫が鳴くのが心配で

端部屋にして貰った.


「ただいま~.」

防犯上,帰って来た時に声出すようにしてる.

声出さない方が良いのかは…

よく分からない.


靴脱いで,カバン置きながら,

電気をつける.

「とりあえず…

どうぞ.上がって.」

鍵をかける.


「ここが洗面所.

手を洗って.

タオルここ.

これ使って.」


キッチンで立ち尽くしていたので,

ソファーに座るように声をかけた.

戸惑う様子に,

そうか,この子…

全身痛々しいわねと思う.


「シャワーどうぞ?

確かに,その状態で座るには…

お互いに勇気が必要だわ.」

自分で言っときながら,

少し笑った.


もう乗り掛かった舟から,

途中下船は出来ない所まで来てた.

拾った猫と同じコースだわね…

病院まで連れて行く必要があるのかが…

気になった.


さすがに…

こう見えて未成年とか…

名前も聞かないのに,

年齢聞くのも,あれかなと思いながら.

「あなた,何歳?」


「24…くらい.」


…くらい?

大人ならいいか.



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