10話. 2 weeks ago

 時は遡る。



 西暦2040年7月18日。神谷風間かみたにかずまが異世界へ転移する6日前。その日の夜、神谷家ではある出来事について議論していた。それは、風間の親友、山本智和やまもとともかずのことについてだった。風間は智和と中学1年生の時に初めて出会った。





 ある日、風間は中学3年生の男子3人組に虐められていた。その時、智和は風間の目の前にヒーローみたいに現れ、その男子3人組を返り討ちにした。


 「大丈夫?神谷くん?」

 「う、うん。ありがとう、山本くん」

 「ねえ、神谷くん、俺と友達にならない?」 

 「え?」

 「だから、俺と友達にならない?」

 「う、うん。ありがとう。山本くん」

 「下の名前で良いよ、風間」

 「分かった、智和」


 そして、風間は智和から「俺と友達にならないか?」って誘われて、それを嬉しく受け入れた。この時の風間はあまり成績も良くなく、陰キャラだった。だから、友達が全く居なかった。しかし、この日、風間には一人目となる友達ができた。その一人というのが、山本智和だった。



 山本智和は、全国トップの天才魔法師だった。つまり、超級魔法を使える7人の中のトップだった。また智和はスポーツもできて、サッカー部に所属している。そして、校内の女子からも人気があり、色々な人に告白されていた。しかし、智和は何故か誰の告白も受け入れず、今まで女子と付き合ったことが無かった。



 あの日から智和と一緒に居ることで、風間は少しずつ変わっていった。風間は智和に魔法を教えて貰ったりして、成績も段々と上がっていった。また、陰キャラから陽キャラになっていった。そして、高校1年生の冬には智和の成績を上回り、全国トップの魔法師になった。これによって、智和は全国2位へと下がってしまった。


 「智和、ごめん」

 「ううん。大丈夫だよ、風間。おめでとう。これは全て風間の努力の成果だよ」

 「ありがとう。でも、智和が俺に色々なことを教えてくれたからだよ。今の俺が居るのは、智和のおかげだ。ありがとう」


 智和が全国2位に下がった時、智和はそれに対して怒らず、風間を褒めてあげていた。



 今まで、風間は智和と色々な思い出を作ってきた。

 時には共に笑い。時には共に泣き。時には共にケンカもした。

 これは風間にとって、欠けがえの無い思い出であり、智和は親友だった。

 しかし...




 西暦2040年7月11日。智和は急に学校へ来なくなってしまった。風間は智和のことが心配で智和の家をその日訪ねた。智和の家のインターフォンを押すと、中からは智和のお母さんが出てきた。

 

 「すみません。智和くん、居ますか?」

 「それが...昨日から家に帰ってないの」

 「そうですか。昨日、何処か行くとか言ってませんでしたか?」

 「いいえ、何も言われてないの」

 「そうですか。警察には捜索願いを出しましたか?」

 「はい。出しました」

 「そうですか。なら、僕も智和くんのこと探します!」

 「ありがとうね」

 「はい。では、また明日来ます」


 風間は智和のことを必死に毎日探した。しかし、智和は何処にも居なかった。警察でさえ見つけることが出来なかった。





 そして、神谷かみたに家では7月18日の夜、智和の行方について議論していた。

 

 「風間、智和くんが行きそうな場所は全て調べたのか?」

 「うん。調べたよ。何処にも居なかった。お父さんの方はどう?」

 「実は...まだ手掛かりが一つも出てこないんだ。警察本部全体で捜索してるんだが」

 「そうなんだ....お母さんの方は?」

 「私も、町の人と一緒に探してるんだけど、見つからないんだよね。心配だなあ」

 「そっかー。もう今日で1週間も経つのに、何処に居るんだろう?、智和は」





 一方、ここは魔王軍の所領地、バクロン。バクロンに建つ一城、魔王城の玉座に座っていたのは山本智和だった。


 「こ、ここはどこだ?そうだ、俺は学校の帰り道に転移魔法で何処かに飛ばされたんだ。戻らないと」



 「次元ゲート



 智和は元の場所に戻るために玉座から立ち、次元ゲートを起動させた。すると、智和の目の前に一つの次空間が現れた。智和がその次空間を潜ろうとした瞬間、智和は一つ疑問に思った。


 「帰る?何処へ?俺は、魔王ヴァイスであるではないか」


 そして、智和は次元ゲートを閉じ、玉座に座り直した。すると、玉座から前方にある大きな扉からノック音が聞こえた。そして、外から一人の少年の声がしてきた。


 「魔王ヴァイス様、報告したいことがあります」


 智和はその少年を通した。



 「入れ」



 「失礼します」


 大きな扉は自動で開き、外から一人の少年の魔人が入ってきた。彼の頭には一本の角があった。


 「どうした!?ヴァルディフォード」

 「実は、予言によると、14日後にローランド村という村に強力な魔法師が現れるそうです。なので、我を含む総勢3000人でその村を襲撃し、その強力な魔法師を断とうと思うのです。どうか、許可をお願いします」

 「分かった。許可する。但し、その敵を断つまではここに戻っては来るな。良いな!?」

 「はい。必ずや、敵の首を持ち帰ってきます」




 そして、時は現在へ。



 カズマ、ソフィア、エリナはカイメルさんの家でぐっすりと深い眠りについていた。

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