異世界から集団で召喚されたけど、能力が解除しかなく捨てられる

@dairidai

第1話 召喚は、突然に

 何でこうなった?


 俺は今。

 デカイ建物の前で、立ち尽くしていた。

 右手には、お金の入った布袋。

 左手には、食料の入った布袋。

 腰には、剣をぶら下げて。

 服装は、半袖長ズボンに。

 軽いマントを、付けて。


 傍目、魔法使いなの?

 剣士なの?

 中途半端に、見える事だろう。

 この世界に来て、2週間。

 ハズレ能力の為に、捨てられてしまった。




 2週間前。


 「チャーハンお待たしました」


 飲食店で働く、俺は。

 いつものように、料理を運ぶ。

 頭が切れる訳でもなく、技術がある訳でもなく、細かい作業が得意でも無い。

 特に、パッとしない俺は。

 接客業を、中心に。

 色んな仕事して来た。

 就職した事もあったが、長続きせず。

 今の所も、まだ1年立っていないが。

 すでに、辞めたいと。

 考えている。

 給料が安い。

 労働時間、休日、休憩時間、どれもブラックだ。

 飲食店は、意外とブラック企業は多い。

 人手不足の為だ。

 他の職種も多いのだろうが。

 色々経験しているから、あそこの店はこうだった。

 なのに、この店はこうなのだろうか?

 何処へ行っても、同じなのに。

 似たような理由で、辞めてしまう。

 俺も、ついに40を超えた。

 辞めたら、次の仕事を決めるのが難しくなる。


 そんな事を、考えながら。

 家に、向かう途中。

 近道しようと、細い路地へ。

 怖くて、少し小走りになる。

 ポツンと、電柱の明かりを目指していると。


 突然、落とし穴に落ちたように。

 浮遊感に、襲われ目を瞑ってしまう。

 暫くすると、瞼の上から。

 明かりを、照らせれたように感じて目を開けると。


 広いスペースに、男女何十人か集まっていた。

 キョロキョロしている所を見ると、俺と同じ考えなのだろうか?


 俺は、高い位置にローブを纏っている数人を見つける。

 王冠を、頭に載せた。

 太った人は、笑い。

 ローブの人達は、顔色悪く。

 倒れてる人もいる。

 俺って、目が悪いのに。

 何で見えるんだろうと、不思議に思い。

 顔に触れると。

 眼鏡もしていない。


 これらの事から、あの王冠をしている人物の命令で。

 俺達は、呼び出され。

 日本では無い、異世界に転移させられたと。

 考えられる。

 俺って、眼鏡がないとほぼ見えなかったし。

 髪の毛も、乏しく。

 前側は、無かったのに。

 触ると、フサフサだ!!!

 小説で、描かれる異世界転移物?

 それと、良く似ている。

 掌を見ると、シワも無い。

 肉体が、若返っている。

 呼び出されたであろう人達は、見た覚えの無い人達。

 何か、共通点を探すと。

 どうやら、二十歳前後に見える。

 俺もそうなら、若返りなのだろう。

 偉そうな人が、話し出す前に。

 近くに居た女性に、話しかける。


 「あのう、あなたはさっきまで何処に居て。何歳でしたか?私は、東京に居たはずで42でした」


 「え?42?あっはい。私は、群馬で仕事帰りに。息子に、受験勉強に使う本を買った後。落とし穴?に落ちて、気が付いたらここに。年は、35です」


 やはり、見た目二十歳位に見える。

 それを伝えると、バックから鏡を取り出し。

 「嘘!この肌に、戻れるなんて!」


 喜んでいるが、取り敢えず。

 情報を、得たので。

 次へ。

 次の人も、若返っている。

 56歳男性。

 子供達は、成人していて。

 のんびりとした、生活をしていたそうだ。

 統一されているのは、若返った事位だろう。


 そんな時!


 「皆の者!静まれ!」


 どうやら、演説が始まるようだ。

 その前に、ステータスオープン!

 と、言って見る。

 スッと、青色の画面に黒文字で。


 ユウイチ

 レベル 1

 人族

 HP 10

 MP 10


 特殊能力

 解除


 スキル

 解除


 これって、ハズレって良く言われる。

 無能扱い、スキルなんじゃ。

 普通で、良かったのに。

 格闘術とか、魔法使い的な。

 勇者なんて、絶対やだけど。

 ハズレは、苦労しそうだな。


 何て、考えていると。

 「ワシの名は、ソラーノ・カリグラである。ソナタ達は、1000年に1度の。勇者召喚で呼び出された、選ばれし者達だ」


 周りは、騒ぎ出す。

 「ふざけるな!」


 「責任者を出せ!」


 「元の場所に、返して下さい!」


 「これが、異世界!?」


 多種多様な、反応をするが。


 甲胄を纏った、兵達?に囲まれていて。

 反抗しようとしても、長い槍かな?

 それを、向けられると。

 皆、黙った。


 「今回も、召喚したのは。魔王誕生が、神から伝えられ。勇者召喚を、するようにお告げがあったからだ」


 「キター!ステータスオープン!ヨシ!俺が勇者だー!」


 1人の男性が、はしゃいでいる。

 その周りでも、ステータスオープンの声が聞こえて来た。


 耳を、傾けていると。

 勇者は、一人ではなく。

 それに、賢者や聖騎士等の定番な人も何人かいるようだ。


 「静まれ!これから、オーブを使い。ソナタらの、適正を確認する。暴れる者は、牢屋に入って貰う」


 そう言うと、喚く者がいるが。

 兵達が近付くと、中央に段々集まってくる。


 そんな中、兵達が吹き飛ぶ場所がある。

 俺から少し、離れている為。

 姿は見えないが、大きな爆発からして。

 魔法を使った?

 もしくは、スキル?


 あっちこっちで、戦闘が始まる中。

 先程話した2人は、俺の所に来て。


 「どうすれば、良いのでしょうか?」


 「貴方は、何か知っている様ですが。私は、全然理解できません」


 2人とも、パニック一歩手前で。

 どうしたらいいのか、わからずに慌てている。


 「私個人の、考えですが。暴れている人達と一緒に、逃げる選択も。ここに、踏み留まる選択も。正しいのか、わかりませんが。逃げ切れるかは、賭けに等しく。留まる事を勧めます」


 「ここから出れば、助けを呼べるのでは?」


 「私達に、起きた事を考えると。ここが、異世界である可能性が高く。出た所で、味方がいるのか?助けてくれる人がいるのか?わかりません。まずは、情報を得る事だと思います」


 「異世界?でも、槍のような武器で。私達を、囲んでいるのですよ!本当に大丈夫でしょうか?」


 「今回、我々を呼んだと言う。あそこの男性ですが、私は信用出来そうもありません。多分、他にもそのように感じて。逃げようとしているんだと思います!全員では無いと、思いますが」


 「では、逃げましょう!近くのあの団体に、混ざって!」


 「自己判断に、なりますので逃げるなら、急いで下さい。どうやら、強そうな人達が来ましたよ」


 大きな出入り口に、他の兵達より強そうに見える。

 甲胄を身に纏った人達が、バラけながら。

 召喚された人達を、拘束する為に動き出した。


 「私は、留まります。お二人は、どうしますか?」


 「私は、残ります」


 「もう、逃げられそうに無い。私も、残る事にします」


 3人で、手を上げて。

 無抵抗を、強調し。

 静まるのを、待つ事にした。


 今後、どうなってしまうのか?


 不安しか無かった。

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