オタクの大海を行かんとす。

第二話


 彼女を作る決心をしてみたはいいもの、彼女をどうやって作っていいのかがわからない。


「うーん。まずはネット検索でもしてみるかな」


 仕事用のハイエンドパワーマシンで、ネットブラウジング。最新IncellハイエンドCPUに128GBのRAM、5TのSuperSSDにMANA OS。ちなみに、Incellの筆頭株主はわたしだし、MANA OSを開発したAnple社の筆頭株主もわたしだ。


「うーん」


 どうやら、世の中には成人男性が恋人を作る場合、それが可能な場所は3つに限られるらしい。


 一つ、職場で知り合う。


 一つ、ナンパ。


 一つ、知人の紹介。


 一つ、出会いの場に行く。


 一つ、出会い系。


 本当にこれがすべてかわからないけど、一応ネット上の情報を複数個所参照してみたけれど、めぼしい情報はほかになかった。


 あとはほとんどがよくわからない、自己啓発系のこれで彼女が出来ましたサイトだったので調べ疲れてしまった。


 まず、一つ一つ検証していく。


 職場で知り合う、はそもそも働いてないから却下。ナンパ、は迷惑行為だから却下。知人の紹介、はそもそも友達がいないから却下。


 あとは、出会いの場に行くか出会い系か。


 出会いの場に行く、はコンパがメジャーなんだろうけど、コンパに誘ってくれる知人友人は居ないし、そもそもコンパには学生時代のトラウマがあるから却下。


 コンパの他には、習い事をするや趣味の場での出会いが考えられるけど、10年以上家に籠ってひたすらお金を稼いできた所為か碌な趣味もない、いい機会かもしれない。


 出会い系、はさっそく出会い系マッチングアプリをスマホにダウンロードして登録してみたが、今どきの出会い系は、身分証明や顔写真や年収証明が必須で審査があるのか。


 審査にはじかれた。


「うがぁ~!」


 ぐぅ。


 お腹がすいた。


「そろそろお昼ご飯の時間かな」


 気づけば正午過ぎ。


「おいしいラーメンが食べたいな」


 思い立ったが吉日。


 スマホでおいしいラーメン屋さんを検索。


「5駅か」


 部屋着から外着に着替える。


 寝室の姿見でチェック。


「・・・・」


「はぁ」


「やっぱり、どう見ても女の子にしか見えないよね」


 姿見に映ったわたしの容姿は、腰まで届く白銀の長髪、瞳は金色、大きく育った胸、35歳にして未だ大学生に間違えられる若々しさ、有体に言って絶世の美少女。


 わたしは子供のころから男なのに女の子にしか見えない可愛らしく綺麗な容姿だった。第二次性徴期に入ると、他の男の子が髭が生え筋肉質な身体に変わっていく傍ら、わたしの胸は大きくそだち胸以外も非常に女性らしく発達していった。


 高校生の頃には、わたしの事を男と解ったうえでの告白を男性から何人もされた。


 今では、わたしの様な人間はこう呼ぶらしい、「男の娘」と。


 男の娘っていっても、もうおっさんだけどね。


「ま、いいか。ラーメン食べに行こうっと」


 タワマンから出て駅に向かい電車に乗る。


 やっぱり、わたしの容姿は目立つらしく。電車内で多くの男女がわたしの事をチラ見ないしガン見してくる。

 わたしは、基本的に下着と服は女性ものを着る。今日は、ニットのセーターにスキニーフィットのジーンズ。

 最近まで実家に引きこもっていたから碌な服がなく、このようなカッコ(全部ユニシロ)になっている。


 「うわ、ぱいすらだ」


 目の前に座っていた若い男性がつぶやいた。


 「!」


 わたしが、ビクッとしたら男性は「すいみせん。そんなつもりじゃ!」と言い訳してきたが、わたしはきっ男性を睨みつけて車両を移動した。


 たまにあるんだよね。


 そのまま、名店と評判のラーメン屋で食事をした。


「う~ん。このお店は星3ってところかな」


 口コミサイトへの投稿も忘れずにしておく。


「そーだ。ちょうどいいから、服を買うかな」


 駅前の高級百貨店の婦人服売り場に向かう。


「い、いらっしゃいませ~」


 わたしの容姿を見て声を震わせる店員。


「すみません。このお店コンシェルジュっていますか?」


「あ、日本語……、、あ!はい、おります!」


 どうやら私の事を外国人だと思っていたようで、わたしが日本語で話しかけたことで安心したようだ。


 高級百貨店には、コンシェルジュサービスというものがあり平たく言えば、商品のおすすめなどをしてくれる。


 わたしのような、元引きこもりは自分に似合った服なんて買えるはずもないのだから、このようなサービスを利用するのが適している。


 そのまま、とんとん拍子にあれやこれやを勧められた。


「あ、ありがとうございましたー!」


 その場で、100万円分ぐらいのブランド服を購入して、商品は自宅に後日届けてもらうことにした。


 夕方。


 簡単に作れる料理をレシピ検索サイトで探して、ちゃちゃっと作って食べた。


「う~ん。彼女を作るために趣味を作ろうかと思ったけれど、趣味ってどうやったら作ったらいいんだ」


 よく考えたら、なにか興味があるものがあるかもしれない。


「うう~ん。そうだなぁ。アニメやマンガは好きかな。うう~ん。それくらいだなぁ」


 アニメやマンガが趣味って、ただのオタクだよなぁ。


「そうだ!ドのつくオタクになれば、オタ彼女ができるかも!」


 そのためには―――


「同人をしよう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る