第21話

嫌な予感


十思は布団に横になりながら、今日の出来事を思い返していた。

舞の家に着いたときは、手紙を渡したこともあって不安、焦燥感、などで心臓がバクバクだったけど、舞と対面すると案外、舞もソワソワしてて少し安心したけど、もしかしたらどうやって断るのか考えていてソワソワしているのかと思ったりして、落ち着かなくなって外に連れ出して返事を聞いてみたら、ごめん…とか言われて、ショックだったけど、なんだかんだ、舞も俺のことが好きで、付き合うことになって……


照れて顔が赤く紅葉していく感覚が分かった。身体よりも顔の体温が上昇していく、十思は布団から出て洗面所で顔を冷ますために水を顔にかけた。残暑で暖められた水道水は生温いが、そんな水が秋の近づきを感じさせる気がした。


「舞と一緒に紅葉も見に行きたいな…」


鏡に映る自分を見て呟いたが、今の自分にはそんな暇は今の自分にはないということを自覚した。


それは、明日から学校が始まる、つまり休学していた宇土が戻ってくるということだ…浮かれてばかりいると、今度こそ舞を失うかもしれない……


胸がざわつく、嫌な思い出が楽しい思い出を塗りつぶしていき、口の中が苦くなる。一気に紅葉していた顔が真冬のように青ざめていく…


ふと身体を起こすと、自入学当初と比べると雲泥の差があるほど見違えた体格が映る、十思の青ざめた顔がほんのり暖かくなった。


「そうだ、宇土たちが戻って来ても今まで鍛えてきたんだ、今度こそは絶対に負けない」


少し安心したからだろうか、眠くなってきて布団にこもると深い眠りに落ちていった。


インターホンが鳴り目が覚めた。

「じゅっくん、まだ寝てるの?遅刻するよ!」


俺は、飛び起きた。そして、慌てて顔を洗い歯磨きをして、制服に着替えて玄関を開けた。まだ、寝癖が付いた頭を掻きながら、舞に謝ったが、舞は呆れた表情を浮かべながら、スカートを揺らしながら学校へと歩き出した。


いつからこうなったのかというと俺が一人暮らしを始めてからだと思う、はっきりとは覚えてない。気づいたら一緒に登校していた。


俺の家から学校までは五分ぐらいなので、少し歩いたら学校が見える。


入学式のころにピンク色だった桜の木は、枯れ始めていて、葉が赤や黄色などに変色して枯葉となり、冷たくなったアスファルトの上に落ちていく、何だかそんな桜の木を見ると、ツンとした寂しさが心にしみる。


そんなことを考えながら、舞と一緒に教室に向かった。


教室に入ると予鈴が鳴った。舞に起こされていなければ完全に遅刻だった。遅刻したから何があるとかはないのだが、ホームルーム中に入るとみんなの注目を集めそうなので、なるべくなら遅刻しないように舞に起こしてもらいたい、あと、好きな人に起こしてもらうというのは、凄く幸せだと感じるからやめてほしくないっていうのが本音であるのは、舞には黙っておこう。


本鈴がなり、担任の郷田先生が出席簿を抱えて教室に入ってきた。

宇土の姿はまだ見えない。


「これから、朝のホームルームを始める。あ、その前に宇土の件だが、本来なら今学期から復帰する話だったが、もう少し伸びるということらしい、」


俺は何故か喜ばしことなのに、嫌な予感がしていた。


















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