第3話
初めての絶望
❁.
数時間前
希の父、
その日は休日であったが、午前中だけでも出勤できないか?と上司の金田から言われて午前だけ出勤していた。
午前の業務が終わってロッカールームで帰る支度をしながら携帯を見ていたら、Lights《ライツ》というSNSから美智子から連絡が来ていた。
「希と一緒に最近出来たショッピングセンターに行って来来ます!」
「お昼は自分でお願いします!」
隆則は心の中でガッツポーズをした、その理由は最近買ったまま放置してある小説が何冊かあったので、ゆっくり読書をする時間が欲しかったからである。
「俺のことは気にしなくていいから楽しんでおいで!」
そう返信すると、隆則はポケットに携帯をしまった。
「お昼は簡単に牛丼屋に行って、速く家帰ろ」
ウキウキさせながら心の中で決めた。
隆則は家に帰って来てからは、ダイニングテーブでコーヒーの匂いを堪能してからゆっくり啜り、読書の時間を満喫していた。
読書をしていると隆則は仕事の疲れが溜まっているのか時々首をガクッとさせたり、目をつぶったり、開いたりを繰り返し、次第には机に突っ伏して眠った。
玄関の方から音がして一瞬起きたが、美智子たちが帰って来たのかと思って、再び眠りに落ちた…
「ガチャ」
❁.
普段は
1人の住民が隣りの住民にひそひそと聞いた。
「これって、何の騒ぎなの?」
「高橋さんのお宅にね、強盗が入ったらしいのよ。
それで、強盗と高橋さんが鉢合わせしちゃったらしくて殺されたらしいわよ…」
「あら…世の中も物騒になったわね…」
そんな話をしている二人の後ろに、大声で叫んで前に行こうとしている二人がいた。
「すみません!通してください!」
「家族です!通してください!」
美智子と希は大声で叫び人をかけ分けて前と進み、家に入ろうとしたが、警官に抑えられて入ることが出来なかった。
周りはの観衆は同情の目を向けて二人を見ていた。
希は警官に抑えられながら、悲痛な声で、父を呼び、美智子は糸が切れたマリオネットのようになり、その場に座り込んだ。
警官はそんな二人を見ながら尋ねた。
「家族の方ですか?」
二人には声を出す気力もなかった。
それからは警察の事情説明など、葬式の準備などで淡々と時間が過ぎていった。
二人が休めたのは事件から2日後の夜だった。
その夜は希は父が殺された家で母と肩を寄せ合いながら、静かに泣いていた。
不思議だった。父との想い出が燃やされ、灰になっていく…その無くなった想い出を埋めるように強盗犯に対する憎しみや怒りが支配していた。
犯人はまだ捕まっていない……
父の葬式の日は雨だった。
希は葬式が終わった後に自宅の近くにある、公園のブランコに傘も差さないで腰をかけていた。
希は人生で始めて絶望をした。今までとても幸せだった、今では、いっそ幸せに感じる。
もう死んでしまいたいと思う激しい衝動に襲われたが、母のことを考えると自殺するという選択肢はなかった。
希は迫り来る絶望、怒り、憎しみの感情で心が犯されてぐちゃぐちゃになった。
「大丈夫ですか?」
1人の男性が声をかけてくれた…
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