130 イベントが終わったら… その24 ~PvP その後…その7~

暗黒街清掃クエストの最中さなかに他プレイヤーの乱入があったが、伝説のPKの箔を更に磨いたリンに依って撃退(というか殲滅)される。残るは暗黒街のボスと裏ボス。その他にはせいぜい取り巻きだけだろう…

アンたちは再びゴーレム馬車に乗り込み、道中で確認したボスの屋敷へと向かうのだった…

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- いや、マップにはボスの屋敷って書かれてたんだけど? -


「…此処が?」


「あ、うん…」


だが、そこはマップで表示されている「ボスの屋敷」とは違った場所になっている。ここからでも見える程の大きな屋敷は…まるで迷宮のような広大な庭を備えていた。


「う~ん…まぁ確認すればいっか…探知スキャン!」


対象は目前の小屋に。どう見ても掘っ立て小屋にしか見えないけど、ひょっとすると脱出路の出口の1つかも知れない。そして脱出路というのは迅速に脱出できなければ役に立たない…イコール、罠や迷路なんかは無い筈だ。



【掘っ立て小屋の鑑定結果】

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◎暗黒街ボスの屋敷の脱出経路の1つ

◎名前:出口小屋その1

◎備考:内側から施錠済み。侵入には破壊か開錠アンロックを用いないと開けられない

※どちらにせよ、内側から鍵を使って開けないと屋敷に警報で侵入者ありと報される

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「…だそうよ?」


「そっか…まぁ余り関係なさそうだけどな」


「なんで?」


ザックが無言で指差した先には…大勢の薄汚れた盗賊然としたNPCが駆けて来る所だった…


「うへ…しょうがないなぁ…清浄化クリーン!!」


今日、何度目だろうか…眩い白の波動が放出されて薄汚れた掘っ立て小屋は勿論、盗賊たちとその後ろのごつい成りの用心棒だろうか?…そしてその背後に居を構える広大な庭と屋敷すらも巻き込んでクリーンの影響を受けて出来立てほやほやのピッカピカに綺麗になる。無論、NPCたちの黒い意識もその体から抜け出し…浄化されるのだった。



「さて…屋敷も巻き込んでるんだから…ボスも裏ボスも心を入れ替えてるんじゃねーか?」


「多分ね…」


「行ってみればわかる」


「そだね…取り敢えず正面玄関に行ってみよ?」


ザック、ミーシャ、リン、アンの順番に話し…取り敢えず攻撃は無いだろうと馬車は降りて収納済みだ…徒歩で屋敷へと向かっている。


だが…4人は気付いていない。未だ、クエストクリアのシステムメッセージが流れていないことに…


「屋敷の正面玄関の扉って…何でこんなにでっかいんだろうなぁ…」


「まぁ、馬車とか行き来する為じゃない?」


「…」


「どやって開けるのかな?」


と思っていたら、屈強そうな体のでかい用心棒NPCが数名集まって来て、


ぎぎぎぎぎ…


と人力で開けてくれたのだった。


「お、すまんな」


「いえ…お客人」


「ん?」


「…お気をつけて」


「あ、あぁ…?」


謎の気を遣われて、ザックを始め…何か変だなと思いつつ、中庭へと侵入する。流石に迷宮化は成されておらず、見た目は真っ直ぐな馬車道なのだが…


「…!?」


ひゅっ…カキン!


何処からか放たれた矢を盾で弾くザック。


「誰だっ!?」


「…人ではないな」


ザックが誰何するが人の気配は無く…リンが指を指すと、そこには無人の罠…弩弓が設置されていた。単発の罠であるようで、1回撃ち放たれれば人の手で再セットしなければ使えないようだが…


「駆け寄った所で四方八方から撃つように仕掛けられている」


よく見れば茂みの奥にも弩弓が設置されており、最初の罠に駆け寄ったらハチの巣に…といった具合のようだ。地面に乗ると矢が発射されるようになっているのだろう(地面の奥なので掘らないとわからないが探知魔法ですぐにわかった)


「帰りにもやられたら面倒よね」


ミーシャは黒歴史を産む恥ずかしい前口上を呟いた後…範囲魔法のコマンドワードを唱えて、罠を焼き尽くした。魔法を放った後、頬を赤くして恥じらっているけど…


(慣れた方が楽だよ?…っていいたいけど。普段、わたしの前では恥知らずな言動をするのに羞恥心は一人前なんだよねぇ~…面倒っていうか)


そんなことを考えながら、罠を見つける度に燃やし尽くすミーシャを見ては苦笑いでそんな様子を見るアンだった…乙女とはかくも複雑なのか…とw


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重度の厨二病患者だと嬉々として前口上を考えて叫びそうではあるw

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