第10話・ニュータイプ

 地球連邦に、正確には社会を構成するインフラに隠された何か。

 特定の条件を満たした人間なら突如理解できてしまう、一種の暗号。

 その暗号を使って宇宙世紀の暗部たる秘密結社は、水面下でメンバーを増やしていました。

 ですがある時、気づいてしまったのです。

 特定の条件を満たしていないのに、いろいろスッ飛ばして暗号を解読し、結社のメンバーになってしまった人々が存在する事に。

 そういった人間は、大抵スペースノイドでした。

 まあ宇宙の閉鎖空間を土台としたシステムに隠した暗号なので、解読できたのがスペースノイドばかりなのは当然といえば当然ですが、それを考慮しても不自然と思える人数でした。

 どこぞのスパイかもと疑ってはみるものの、そのような痕跡はなく……嫌疑から始まった素行調査をきっかけに「こいつは何かがおかしいぞ?」と研究へと移行し、そのデータを元に提唱されたのがニュータイプだったのです……。


 ……な~んて事を、富野監督は、これっぽっちも考えていません!


 なぜなら富野監督は、裏ストーリーをスタッフの誰にも教えずに制作を続けていたからです。

 最終回のシナリオを自ら書いて、ザンボット3の前例もあるように、ズムシティでシャアかキシリア様が宇宙世紀の暗部と真相を明かしてくれる予定だったのでしょう。

 それを読んで驚いたスタッフ一同の顔を「してやったり」と眺めるのを、楽しみに楽しみに、それはもう楽しみにしていたら……

 ……途中で打ち切りになりました。

 安彦先生が過労で倒れ、スタッフの疲労も限界に達していたので、半分くらいは監督の自業自得なのですが、彼は世を恨んで真相を墓場まで持って行く事にしたようです。

 おそらくスタッフには、ガルマがシャアの正体を知っている事くらいは教えているでしょうが、それも口止めしていると思います。


 要するに、視聴者だけでなくスタッフにも裏ストーリーを隠して話を進めるためのデタラメ設定、それがニュータイプなのです。

 セリフに入れなくても、演出に一切入れなくても、実は裏で会話し、わかり合っている。それがニュータイプ。

 小説などの文字媒体なら「行間を読め」といった感じですが、その行間すら省略してしまうのがニュータイプだったのです無茶言うな!


 当然ながらアムロは大した伏線もなく様々な事実を察します。

 いつから天パがああなったのかは私にはわかりませんが、少なくともサイド6でテム・レイと再会した時に、自分の父親が何者かに壊され、ガンダムの全情報がジオンに流れていると知ったのでしょう。そして数話ほど経てから、連邦がジオンを裏から操り全人類を地球から追い出し、さらには宇宙移民たちが地球に戻れないようブッ壊しておこうなんてトンデモ計画まで察してしまったのです。なぜならニュータイプですから。監督がスタッフにも隠していた大仕掛けに、天パは何もかも気づいてしまったのです。


 それを悟ったシャアとララァは、アムロを同胞として迎え入れようと画策、途中でララァはアムロを危険人物と判断しました。

 でもシャアはアムロにれちゃったので、何としても仲間にしたかったようです。ララァではなくシャアがアムロに固執していたのです。

 無理に無理を重ねてララァに負担をかけ続け、ララァは空気を読んでセイラさんの接近を察して警告したり、アムロに邪魔をするなと説得しようとしたらシャアに怒られたりと大忙し。そしてとうとうシャアをかばって死んでしまいました。

 さすがのシャアも一時的にあきらめ撤退しています。

 機会があれば、その時は今度こそ絶対アムロを手に入れようとか思いながら……。


 一方、木星帰りのシャリア・ブルは、デギンの密命を受け、ギレンが後継者にふさわしいか否か、怪しげなニュータイプ能力をフル回転させて鑑定しました。

 デギンも最初から期待していなかったとは思いますが、案の定落第……だったのかは不明です。天パがブッ殺しちゃいましたから。

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