1
灰の街がなくなった時、レテューが感じたのは、ああ、またか、という諦めの気持ちだった。
また、奪われた。
あっけなく。
何度も何度も容赦なく、奪われ。けずられ、壊されてきた。
何もかもが、この手のひらからこぼれていく。
どれほど力をつけても、味方が増えても、また。
だから。
街が緑で覆われた時。
奇跡が起きたと思った。
やっと。今までやってきたことに意味が──あったのだと。
街のみんなで街を復興できた日。
やっと、肩の力が抜けた気がした。
新しい森の中に、周りの木々を利用して真新しい家を建て。
新しい街の入り口に、ギルドの建物も作った。
鉱山で仕事が出来ると耳にして、新しい住人がやって来て、対応に追われたり。
毎日忙しくこなすうちに、気が付いたら半年経ってしまい。
何か忘れているような気がして首をひねる。
「──?」
「どうした、レテュー。昨日から変な顔をしてるぞ」
新しい緑の街の、ギルドマスターとなったケイレルに指摘され。
「いや、なんか……忘れてる気がして」
「?」
急ぎの仕事もなく、街の運営も回りはじめて、ようやく一息ついた日。
花曇りの空からは、弱々しい日の光。
暖かく、落ち着いた、静まり返ったギルドの1階に座り──レテューは反射した光に目を止めた。
光、光……優しいあたたかな。
唐突に思い出す。
『オレのコト、王子って呼ぶなよ』
思い詰めたように〝頼み事〟をされたのを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます