試せメロス

 メロスは試しに激怒してみた。とりあえず、かの邪智暴虐の王を試しに除いてみようと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村のぼくんである。試しに笛を吹き、試しに羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、まあお試し程度に敏感であった。

 何やかんやあって、メロスは試しに王城に入っていき、警吏に捕縛され王の前に引き出された。

「試しに処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹が試しに結婚式を挙げるのです。」

 何やかんやあって、試しにセリヌンティウスを人質に預け、試しに村に帰って試しに式を挙げさせ、メロスは試しに矢の如く走り出た。試しに激流を渡り、試しに山賊を殴り倒し、試しに倒れ試しに起きて試しに走り続けた。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。はれ! メロス。

「私だ、刑吏! 試しに殺されるのは、私だ。彼を試しに人質にした私は、ここにいる!」

 何やかんやあって、メロスは試しに親友と殴り合い、試しに王と和解した。少女が緋のマントを捧げた。

 メロスは今度こそお試しでなく激怒した。私の全裸は信念ポリシーなのだ。服を試すなどもってのほか。そう言って、ゆうゃは怒りでひどく赤面した。

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