ようこそ、正義の戦隊・ライトレンジャーへ。俺達は君を心から歓迎する

 やあ、君が新しいピンクか。俺はレッド。こっちはグリーン、彼がブルー、彼女がイエローだ。君のようなか弱い女の子がエレメントパワーの継承者だなんて信じがたいが……運命が君を選んでしまった以上は仕方がない。死んだ先代ピンクの分まで、俺達と一緒に正義のために頑張ろう。……ああ、いや、元の名前なんてここでは名乗らなくていい。俺はレッドで君はピンク、それだけでいい。奴らを倒し、平和を取り戻すその時まではな。


 君も知っての通り、今、世界は悪の組織に狙われている。怪人、戦闘員、そして君も目にしたあの巨大戦艦……。いずれも警察や自衛隊の装備では太刀打ちできない恐るべき戦力だ。奴らを倒し、世界を守れるのは、俺達ライトレンジャーだけだ。俺達は皆、命をも捨てる覚悟で敵と斬り結んでいる。君も一刻も早く覚悟を決めるんだ。既に君はエレメントパワーに選ばれた戦士、ライトレンジャーの一員なんだぞ。

 ……なに、学校? そうか、君は高校生なのか。二代前のブルーやピンクもそうだった。戦いのたびに授業は抜けてもらうしかないな。この基地のエレメント・ストーンが敵の出現を感知すると、その変身ケータイが鳴るようになっている。そうだ、いついかなる時でも気を抜くことなど許されない。それが俺達ライトレンジャーの使命なんだからな。

 ……遊び? 戦士に遊んでいるヒマなどあるはずないだろう。俺達は皆、戦いのためにそれまでの日常を捨てた。君もいずれそうなる。それができなければ、先代ピンクのように非戦闘時に敵に襲われて死ぬだけだ。……大丈夫だ、この基地にいる限りは襲われないから安心しろ。ここはエレメントパワーの結界に守られているからな。だが、一歩外に出れば俺達はいつでも敵に狙われていると思え。君が学校にいる時もだ。……なに、彼氏? 巻き込みたくないなら別れた方がいいだろうな。戦士に恋愛など足手まといだ。前のブルーも、恋人を敵から守ろうとして……。

 おい、泣いても何も始まらないぞ。イエロー、この子を宥めてやれ。……やれやれ、困ったものだな、自覚のない新入りは。


 いいか、ピンク。俺達が戦士であることを辞められるのは、戦いの中で死んだときか、悪の組織を倒して世界に平和を取り戻したその時だけだ。元の生活に戻りたいなら、俺達と力を合わせて奴らを倒すしかない。今日からさっそく戦闘訓練だ。少しでも早く君もまともな戦力になってもらわないと困るからな。巨大ロボの操縦訓練もしなければならんぞ。まともに戦えるようになるまで寝る暇もないと思え。

 君も今日、敵の襲撃で街の人達が大勢殺されていくのを見ただろう。俺達が少し遅れただけであれだけの被害が出るんだ。君の双肩には数え切れない人達の命が懸かっていると自覚しろ。……望んだわけじゃない? そうだろうな、俺達も最初は皆そうだった。だが、どうあれ戦ってもらうしか道はない。いいか。君はもう普通の女子高生じゃない、ライトレンジャーのライトピンクなんだ。……そうか、頑張ってくれるか。少しでも早く戦いを終わらせるために。そうだ、俺達が考えることはそれだけでいい。


 俺から伝えられることは以上だ。さあ、訓練を始めるぞ。君が一人前の戦士になるまで厳しくしごいてやる。

 俺達は君を心から歓迎する。ようこそ、世界の平和を守る正義の戦隊、ライトレンジャーへ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る