俺達の戦いはこれからだ

 2月28日23時59分。一ヶ月にわたった匿名短編コンテストも遂に終わる。書きも書いたり20作品、我ながらよく一人でそんなに送ったものだ。嫌な顔一つせず淡々と作品を受け付けてくれた主催者には感謝しきりである。


 数撃ちゃ当たるを地で行く俺の戦略も少しは功を奏し、いくつかの作品は満足行く数のハートやコメントをもらうことができた。トップ層のハートの数には及ばないが、俺なんかの作品を読んでくれた読者の人達にも感謝、感謝だ。同じやつの作品ばかり沢山並んでいて引かれなかっただろうか……ああ、いやいや、俺一人でこんなに出してることは俺と主催者しか知らないのか。まったく面白いな。


 今日で作品受付は終わって、明日からの一週間は投票だけの期間。結果発表までにどれだけハートの数が伸びるか楽しみだ。

 明日からは俺も他の人の応募作を読んで回ることにしよう。それに、ここ最近読んでいなかった友達の連載の更新もまた追わなきゃな。忘れてるわけじゃないが自分の長編の続きも書かないと。この一ヶ月、このコンテストの短編を書くのに夢中になりすぎて、他のことがおろそかになりすぎてたからな。


 それにしても、2500字の短編を20作。一ヶ月で5万字も書いたことになる。自分がそんなに書けるなんて知らなかったので正直ビックリした。これでちょっとは自信もついて、今後は長編も今までより早く書けるかもしれない。自信をつけさせてくれたこのコンテストには本当に感謝しないとな。


 3月1日0時0分。日付が変わった。主催者さんお疲れ、他の参加者の皆もお疲れ、俺もお疲れ……。さて、今夜はもう寝るか。



 ――そんなことを思いながらパソコンの画面を閉じようとした俺の目に、主催者の新しいツイートが飛び込んできた。


「第二回匿名短編コンテスト開催……だと?」


 3月1日から、つまり今この瞬間からもう第二回コンテストの応募受付が始まったらしい。今度のテーマは「食」だと。しかも、第二回のみならず、第三回のテーマまで既に告知されている。


「なんてこった……」


 主催者の真意にようやく考えが至り、俺は思わず膝を打った。


 匿名短編コンテスト「始まり編」とは、文字通り、いつ終わるとも知れないコンテスト地獄の始まりだったんだな……。


「……やるしかないか」


 呟きながら、俺は気付けば主催者とのDMの画面を開いていた。第二回も希望を参加する旨を書いて送る。

 やれやれ、少しは休める暇もあるかと思ったんだが。

 ここまできたら、どこまででも付き合うしかないよな。なあ、これを読んでるあんたもそう思うだろ。

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