相撲という競技は何も悪くない
「ただ今の決まり手は、
ハイテク国技館にアナウンスが響き渡る。勝利を収めた女性型のメカ
敗れた側の男性型メカ力士もまた、
「さすが、ロボットの力士達はみんな礼節をわきまえてるなぁ。
「ああ。この十年、ロボット相撲のおかげで、相撲そのものが見直されてきたよな」
現在の相撲界に対する人々の反応は、人間・機械を問わず
人間が土俵に上がり、人間が相撲界を仕切っていた時代の悪評は、目に余るものがあった。相撲とは本来、土俵に神を降ろし、神に捧げる神聖なる
そして、相撲界を根本から立て直す変革が求められる中、人間に代わって神の
「本当に良かったよ。一部の
「ああ、そうさ。相撲という競技に罪はない。だから、応援しようじゃないか、このロボット相撲を」
「そうだな。相撲が背負わされた汚名を洗い流そう」
「ビバ、ロボット相撲!」
=====【中入】=====
「出たぁっ!
赤々とした明かりが揺れる中、地下闘技場に観衆の熱狂が
聖地・国技館を追われて十年。相撲を捨てることを選ばなかった僅かな力士達は、こうして日の当たらない舞台で今も相撲を取り続けているのであった。
「お疲れさんでございます、
「謝ることなんかねぇよ。お前は上が決めた筋書き通りに戦っただけだろ。お互い様だよ」
「ごっつぁんです。……しかし、悔しいっすね。俺達だって本当は、神聖な土俵で
「なぁに、今だけさ。いつまでもこんな時代が続くワケがねえ。俺達が相撲取りの誇りを忘れなければ、いつか必ず、国技館に返り咲く日も来るさ」
=====【中入】=====
「
呼び出しの声に応じ、二人のメカ力士が土俵に上がってバーチャル
そんな時、事件は起こった。
「制限時間いっぱいです。両者、見合って……む?
土俵上で見合ったまま動かなくなってしまった二人の力士の様子に、観客達が一斉にざわめき始めたとき、突如としてハイテク国技館に巨大な揺れが襲いかかった。
そして、土俵上空に闇が立ち込めたかと思うと、邪悪な何者かが、闇に覆われた土俵に姿を現したのだ。
「我こそは
観客達が我先にと逃げ出す中、土俵下に控えていたメカ力士達は次々と悪魔に立ち向かっていったが、その張り手やぶちかましが敵に届く前に、AIの制御を奪われて力なく土俵に倒れ伏してしまった。
「ぐわっはっはっ、機械
「馬鹿な……。奴に立ち向かう手段はないのか……!」
ロボット理事達が
「待てっ!」
雄々しい声とともに、ハイテク国技館に飛び込んでくる者達がいた。
「お、お前達は……!?」
それは、かつて相撲の表舞台から追われた者達。日の当たらない世界で今日まで生き延びてきた、人間の力士達だったのだ。
「現世を汚す悪魔力士め、清めの塩を受けてみろ!」
人間力士・
「ぐぬっ……! 馬鹿な、人間の力士がまだ生き残っていたとは! おのれ……!」
苦しむ
「まさか、人間である貴方達が、私達メカ力士を助けてくれるとは」
「相撲を大事にする心に人間も機械もねえ。一緒に戦わせてくれ!」
ロボット達と人間達は互いに頷き合い、悪魔の軍勢に立ち向かっていく。
そうとも、相撲という競技は何も悪くない。この戦いの先に、新たな共存の道があるのかもしれない。今こそ共に守るのだ、相撲の未来を!
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