第10話! 出撃のない日の事

 俺、レンヤ・アビントンこと三方ヶ原 結城がこの惑星、いや、この世界に転生して、しばらくが立つ。


 いきなりとんでもない加速の中で目が覚めて驚いたが、どうにか機体を安定させる事ができて現在に至ってる訳だが、まさかあんな化け物が出てくるなんて思ってなかった。あんな化け物は前世のあらゆる惑星でも早々お目にかかれない。少なくとも似たような見た目をした奴は何体かいるが、あの大きさは流石にいない。


それにしてもこの惑星、いや世界は中々奇妙である。

 単位がmとかcm使われているが、mの正式名称は『メント』である。cmは『セー・メント』である。

1メートル=1メントぐらいだろうか? いや、微妙に違うような気がする。少なくとも前世と今世の規格は合わなさそうである。

 何故前世の単位とこの世界の単位が似たようなものになってるのかは分からないが、便利ではある。


 他にも、この世界には魔法がある。いや、

 魔法は270年前ぐらい前までは使えていたが、魔王の仕業により使えなくなり、その魔王を倒した王様が現在の暦である新世界歴を制定したという伝説がある。

 そんな訳で前世の昔の創作物に出てくる魔物と呼ばれる生命体が動物園にいる。


 ついでにこの世界の人類は多種多様である。

 人間、エルフ、ドワエルフ、ホビエルフ、メランエルフの5種類の人類がいる。皆エルフじゃねぇか。

 なんでも? ドワエルフはドワボルフという都市に居たエルフだからドワエルフと言われてるし、ホビエルフはホビ山に住んでいたからホビエルフと言われてるらしい。

 じゃあメランエルフはメラルニアとかいう都市か地域に住んでてから? と思いきや黒いエルフという意味らしい。おい命名者出てこい。


 しかしこの種族も、この世界ではほぼ意味を持たない。

 もはやエルフは耳が少し長い程度であんまり老けない人間の意味だし

 ドワエルフは筋肉の付き方が良かったり、髭が濃くなるタイプの人間だし

 ホビエルフは背が小さい人間だし

 メランエルフに至っては、え? これで黒いエルフとか言うんか? ってレベルであり、正直前世の訓練生時代の教官殿の方が黒かったな……と思うレベルである。


 普通エルフって人間を見下しているとかそういう設定なんじゃ? と思うかも知れないが、この世界もとい惑星ではこうなっている。


うん、それにしてもこの惑星の文明レベルは前宇宙時代あたりではあるが、色々と驚愕する文化が多い。

 なんと言っても料理の幅が大きい。正直最初食堂の料理を見て驚いた。本物の鶏や豚や牛、魚を使用しているとは!と叫びそうだった。

 前世はペースト食が基本で、人造肉を大規模攻勢前夜に食した程度だったから、正直困惑すらしている。


 ……隊の皆と食べたかった。


そういえば、皆はどうしているだろうか?

 テクシートの皇帝を倒した以上、テクシート帝国は終わりの筈である。

 テクシートの支配下にある各惑星が立ちあがってくれただろうか?


……考えても始まらない。


 「……100回ッ」

 「おう、結城。頑張るじゃねぇか」

 「ああ、健斗さん。この器具使います?」

 「さんはいらねぇと……。いや、器具はまだ使わん」


筋トレの時に考える事じゃないな。


 そんな訳で俺はトレーニング器具を拭いてトレーニングルームを後にする。自室に戻ってシャワーでも浴びるか……。

 この研究所にはこういうトレーニングルームが作られているから助かる。何もしてないと心が腐りそうであるからだ。


 前世はあれからどうなったか。あまり考えないようにしている。考えてもどうにもならないのにあれこれ考えを拗らせてしまうのは良くない。


 そう思い、自室のシャワールームの鏡を見る。


 「やっぱり教官殿の方が黒いよな……これ」


 俺はそんな独り言を言う。


 つづく。



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