第一章

ゲームセット…1

━ピー。

鳴り響く笛の音が微かに聞こえる。

あれ?試合は?救急車の音で何も聞こえない。五月蠅いな。

身体を動かそうにも力が入らない。

口も思ったように動かせない。


何がどうなって…?


今日は大事な新人戦だったのに。

身体を頑張って動かそうと力を入れた瞬間、俺は完全に意識を失った。


※※※※※※


「…ぃ。はい。ご連絡ありがとうございます。いえ、先生の方もお気を付けください」

「はい。失礼します…」


母さんと監督の声…?

って試合は!?新人戦は!?


「…ッ!!」

天太あまた…!よかった!目が覚めたのね…!」

「母さん、試合は?」

「アンタ試合中に相手の選手と激突して頭と脚を打ち付けたの。覚えてる?」


試合中に激突?相手の選手と?何を言って…。


「先生呼ぶわね」


母さんはナースコールを押した。

するとパタパタと廊下から音が聞こえてくる。この消毒液の匂い、真っ白な部屋、点滴に繋がれてベッドで寝ている俺。

何で今まで気づかなかったんだろう?ここ、病院だ。

数分もしないうちにガラガラと音をたててナースさんやドクターが入ってくる。


「目が覚めたようですね。自分のお名前分かりますか?」

渡会天太わたらいあまたです」


そこから続く定型文のような質問。

「年齢は?」「生年月日を言って下さい」「血液型は?」それに一つずつ答えていく。


「では、最後の質問です。今日は何月何日ですか?」

「えっと、今日は…!し、新人戦!結果、結果はどうなったんですか!?」


ナースさんとドクターが困った顔をする中、母が静かに告げた。


「負けたよ。最後に相手にゴールを決められて逆転負け」

「え…」

「…負けたんだよ。無敵と言われた公立小越おごえ高等学校は負けたんだよ」


その言葉に俺の顔から血の気が引いた。

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