カッコいいとは

シヨゥ

第1話

「先輩、俺、カッコよくなりたいんだ」

 講義の合間の昼下がり。後輩が先輩に急にそんなことを言い出した。

「急にどうした?」

「田舎から出てきて、環境が変わったから何か変わるだろうと思っていたんだ。だけど何にも変わりやしない」

「そりゃあ環境が変わっただけじゃ何も変わらないだろうな」

「だから、今更だけど動いてみようと思って。まずは見た目からと思って。とりあえずカッコよくなろうと思うんだ」

「なるほどなるほど。っで、俺にアドバイスをしろと?」

「もし暇であればでいいんですけど」

「俺そんなにカッコよくはないと思うんだけども」

「いやカッコいいですって。だって周りの女子もかっこいいって言っていますし」

「マジで?」

「マジっす」

「そうか。俺そう言われているのか」

「たぶん」

「なんか言ったか?」

「いえ、なにも。そんなカッコいい先輩にアドバイスしてほしいんです」

「アドバイスと言われてもな……とりあえずカッコいいっていうのは主観だな」

「主観」

「俺がカッコいいと思っても、お前がカッコいいとは思わないファッションだってある」

「たしかに」

「だからまずは誰にカッコいいと思ってもらいたいか。それを基準にしたらいいんじゃないか?」

「なるほど」

「男に尊敬されたいのか、女に好かれたいのか。それによって選ぶ髪型やファッションも変わってくるだろう」

「たしかに。先輩はどちらです?」

「そりゃあ女に好かれる方だ」

「真似させていただきます」

「するなするな。俺とお前とじゃ立っ端も違えば骨格も違う。同じようなタイプの格好しても多分に合わないぞ」

「じゃあどうしたら」

「女がカッコいいと思う男なんて星の数ほどいるもんだ。だからその中で自分に近しい奴を探せ。そしてパクれ。それでいい」

「なるほど。先輩はそうやって来たんですね」

「そうだ。丸パクリできるようになったらそこから崩せ。それが個性だ」

「崩したらカッコよくなくなるんじゃ」

「丸パクリの奴なんてそれこそ星の数だ。だから少し変化を見せないと埋もれちまうぞ」

「なるほど。勉強になります大学の講義の合間の昼下がり、後輩が急にそんなことを言い出した。

「急にどうした?」

「田舎から出てきて、環境が変わったから何か変わるだろうと思っていたんだ。だけど何にも変わりやしない」

「そりゃあ環境が変わっただけじゃ何も変わらないだろうな」

「だから、今更だけど動いてみようと思って。まずは見た目からと思って。とりあえずカッコよくなろうと思うんだ」

「なるほどなるほど。っで、俺にアドバイスをしろと?」

「もし暇であればでいいんですけど」

「俺そんなにカッコよくはないと思うんだけども」

「いやカッコいいですって。だって周りの女子もかっこいいって言っていますし」

「マジで?」

「マジっす」

「そうか。俺そう言われているのか」

「たぶん」

「なんか言ったか?」

「いえ、なにも。そんなカッコいい先輩にアドバイスしてほしいんです」

「アドバイスと言われてもな……とりあえずカッコいいっていうのは主観だな」

「主観」

「俺がカッコいいと思っても、お前がカッコいいとは思わないファッションだってある」

「たしかに」

「だからまずは誰にカッコいいと思ってもらいたいか。それを基準にしたらいいんじゃないか?」

「なるほど」

「男に尊敬されたいのか、女に好かれたいのか。それによって選ぶ髪型やファッションも変わってくるだろう」

「たしかに。先輩はどちらです?」

「そりゃあ女に好かれる方だ」

「真似させていただきます」

「するなするな。俺とお前とじゃ立っ端も違えば骨格も違う。同じようなタイプの格好しても多分に合わないぞ」

「じゃあどうしたら」

「女がカッコいいと思う男なんて星の数ほどいるもんだ。だからその中で自分に近しい奴を探せ。そしてパクれ。それでいい」

「なるほど。先輩はそうやって来たんですね」

「そうだ。丸パクリできるようになったらそこから崩せ。それが個性だ」

「崩したらカッコよくなくなるんじゃ」

「丸パクリの奴なんてそれこそ星の数だ。だから少し変化を見せないと埋もれちまうぞ」

「なるほど。勉強になりました。ちょっと色々調べてみますね」

「頑張れよ」

「その最後に質問なんですけど」

「なんだ?」

「先輩って彼女いるんですか?」

 場の空気が凍り付く。そして、

「居たらお前と飯なんか食ってねぇよバーカ!」

 そう捨て台詞を残し先輩は走り去っていった。これまでの先輩面が台無しである。

「よし。ぼくはあれを反面教師にしよう」

 その背中を見送る後輩の言葉は鋭かった。なよっとした男のわりに意外と図太い性格をしているようだ。この後輩ならカッコよくなるのに時間はかからないだろう。そして先輩を追い越すことも時間の問題だろう。

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カッコいいとは シヨゥ @Shiyoxu

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