07:悪意
今日はどうしても外せない収録があるということで、
もちろん、連絡先を交換していた私にも、個別に彼は連絡をくれていた。
『貴重な一日なのに、
可愛い子犬が泣いているスタンプが一緒に送られてきて、思わず
一週間という期限を
(別に、一日くらい延長したって構わないのに……って、何考えてんの私……!)
今日の仕事は、彼にとっても予定外のものだったのだ。
だからこそ恋人の期限を延長しても……と考えたところで、私はハッとする。
私は別に
だからこそ、私側には恋人期間を延長する理由なんてないはずなのだ。
そのはずなのだが……。
(私、
真っ直ぐに好意をぶつけてくれる彼に対して、私は自分自身の感情がわからなくなっていた。
アイドルの
けれど、
アイドルへの憧れを、彼に対する好意と勘違いしているのではないだろうか?
(わかんないよ……恋愛なんて、したことないんだもん)
私は頭を悩ませながらも、ひとまず既読をつけてしまった連絡に返信することにする。
『しょうがないよ。明日はまた会えるんだし、お仕事頑張って』
そうして『ファイト!』と書かれた犬のスタンプを送る。
これは、なんとなく
少し待っても既読はつかないので、仕事が始まったのだろう。
私もスマホをしまうと授業を受けるために、準備をすることにした。
放課後になって、私は帰り支度を済ませると教室を出ようとする。
ここ数日は、いつも
(一人で帰るのなんか、当たり前だったのにな)
『
そう言って手を握ってくれる
信じることができなかったけれど、彼は本当に私のことを好きでいてくれるのだと思えた。
「ちょっと、待ちなさいよ」
そんな私の思考を現実に引き戻したのは、瀬尾さんの声だった。
振り返ると、彼女とその取り巻きの女子、そして数名の男子が立っている。
この何日かは、彼らに何かをされることもなくなっていたので、私はすっかり平和な日常に慣れきってしまっていた。
「な、なんですか……?」
「あのさ、アンタまだ
「えっと……」
「ここんトコは
向けられる悪意は、容赦がない。
こんなのには慣れっこだったはずなのに、
逃げ出したいのに、足が
「大体さ、アンタみたいなのが
「わ、私は……」
「アンタが傍にいるだけで、
「そうそう。大人しく
そう言った男子生徒の一人が、私に向かってゴミ箱の中身をぶちまけてきた。
紙クズと
ああ、どうしてこのクラスはこんなにも悪意の塊なんだろうか?
「ほら、ゴミにはゴミがお似合いだよね。わかったら今すぐ
「……れ……せん」
「ハ? 聞こえないんだけど。もう一回言ってくれない?」
「わ、別れません!!」
私の言葉が想定外だったのだろう。
瀬尾さんたちは目を丸くして顔を見合わせたあと、ようやくその意味を理解して私の胸倉を掴む。
「シラける子ちゃんがなに生意気なこと言ってんだよ!? 別れろっつってんだから別れりゃいいだろうが!」
「嫌です! 確かに、私と
私と付き合ってくれているのは、確かに優しさなのかもしれない。
それでも私は、一緒に過ごして笑ってくれる彼の笑顔を信じたいと思った。
(ああ……私、ちゃんと
たった五日間だけど。
アイドルの
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