05:本音
「じゃ、改めて帰ろっか」
先ほどまでの冷たい態度が嘘のように、
だが、やられっぱなしのままでは気が済まなかったのだろう。
「っ、
瀬尾は、私たちの背中に向かって声を上げる。
立ち止まった彼の、握る手の力が少しだけ強まったような気がした。
「だって、罰ゲームで告白しただけなんだから!」
すっかり
いくら罰ゲームだったとはいえ、彼を騙していたことに違いはないのだ。
(……
けれど、どうしてだかそれを想像すると、胸が締め付けられるような思いがした。
「……だから?」
だが、瀬尾を振り返った
瀬尾は
そのまま自然と人波が避ける廊下を通り過ぎていくと、私たちは昇降口まで辿り着く。
(ああ、いつもの
見慣れた姿に、何となくホッとする。
それと同時に、再び手を取ろうとする彼の腕を、私は咄嗟に振り払ってしまった。
「……!?」
「あ、あの……
「どうして
「だって、私、
彼は、私の告白が罰ゲームだということを知っていると言った。それはつまり、あの時も眠ってなどいなかったということなのだ。
アイドル生命も危うかったというのに、リスクを負ってまで助けてくれた。
そんな優しい人を、これ以上私なんかに付き合わせるわけにはいかない。
「だけど、もう大丈夫だから。これ以上、
「もしかして、
「え……? だって……」
口先を突き出す仕草は、年齢よりも彼を幼く見せる。
私の手を取った彼は、指同士を絡ませるように繋いでくる。いわゆる、恋人繋ぎというやつだ。
「
「し、証拠集めって……どうしてそこまでしてくれたの?」
見て見ぬふりをしたって、誰も責めたりなんかしないのに。
だって、私を知る誰もがみんなそうしてきたことなんだから。
「そんなの、
手元に意識が集中していて、話が半分ほどしか入ってこなかった。
けれど、私は今とんでもないことを言われなかっただろうか?
「デビューしてから売れるまでは、異性関係はご
「え!?」
「辞めるっていっても、芸能界は続けるんだけど。アイドルじゃなくて、ずっと俳優をやりたかったんだ。それが認められて、高校卒業したら演技の方に集中すんの」
「そ、そうなんだ……」
人気絶頂のアイドルだというのに、それを捨ててまで俳優に転向するというのは驚きだった。
だけど、それと私のこととはどう関係があるのだろうか?
「俺が俳優目指そうって思ったの、
「え、私……!?」
「一年生の頃、学園祭でさ。俺のクラスはお化け屋敷やったんだよ。俺は
「落ち
「……! そう、それ!」
彼の言葉に、当時の学園祭の時の記憶が
友人もおらず一人で校内をフラついていた私は、客引きの生徒に
その中で遭遇した落ち武者がとても怖くて、そう伝えた覚えがある。
「あれ、
「俺、あの頃ずっと自分の演技に対して自信持てなくてさ。アイドル続けるのが
そんなつもりではなかった私の言葉が、知らず彼の背中を押していたのか。
「おかげで今の俺がある。あの頃からずっと、俺にとって
私のことを、好いてくれている人なんていないと思っていた。
少なくとも、私の味方なんてこの学校には存在していないのだと思っていたのに。
「だからさ、俺にチャンスが欲しい」
そう言う
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